黒色の石

冬城さな

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「第42回アカラミア国立剣技大会・本大会2位、か」
「はい」

俺の前にはちょっと高級そうなテーブルをはさんで
40~50代の男性が3人椅子に座っており、
そして、やや離れた所に茶髪の20代くらいの青年が1人立っている

「ケイル=マーシュ君だったね」
茶髪の20代くらいの青年が口を開いた
「20代の若さで国立剣技大会、しかも本大会を2位という成績は見事だ」
「あの、お言葉ながら、優勝者のカリュウさんは10代かと・・・」
「年齢なんて関係ない 今欲しいのは実力なのだから」
決定でいいですよね?と茶髪の青年が椅子に座る3人に話しかける
「まぁ、君が言うなら・・・」
若干の渋々感をのぞかせながら、3人は頷いた

どうやら、この青年の方が立場が上らしい
流石に王宮だけあって、色々な事情がありそうだ

「君を王子・セレニン=リヴェンナ様の護衛として採用しよう」
「あ、ありがとうございます」

思わず立ち上がり、頭を下げるケイル
しかし、直後、こんな単純でいいのか、とも思った

理由でも聞いてみようかと思った瞬間、
1人の椅子に座る男性が口を開いた

俺の動揺が伝わったのかもしれないし、
3人も本心では納得していないのかもしれない

「ロウラン様が決定されたのだ
 我々に反対する理由はない」

「そういえば、まだ"俺は"自己紹介していなかったな
 現在、セレニン様の護衛をしている、ライミン族のロウランだ」
ロウランと名乗った青年は、茶髪を背中の真ん中あたりまで伸ばしていて
黒い軍服の様な服を着ていた

ケイルはてっきり、
万が一、面接会場で役人に対して何かあった際の、警備員的なものかと思っていたが

「ロウラン様と言えば、ライミン族最強とも言われる方ですよね?」
「"言われているだけ"だけどな」


意外だった
1人王都にあるホテルのベッドに横になりながら、思い返す

確かに剣技には自信がある
先日の第42回アカラミア国立剣技大会・本大会だけでなく、
他の大会でもかなりの成績を収めてきた
そして、その賞金で生活していた

が、強いだけなら、他の人でもいいだろうし、
そもそも俺の想定していた質問
『何故、国家闘士や国軍を志望されなかったのですか?』がなかった

本当に数分といっても過言ではなかった面接

でもこれで、大会賞金や軽い護衛報酬での生活とはおさらばだ
王族の護衛となれば、不祥事を起こさない限り、
また、戦えなくなるなどのやむを得ない事情を除き、終身雇用は保証されている

しかも、四六時中職務に就くわけでもない、あくまで護衛の補助的な仕事だ
プレイベートの時間もある程度は貰えるだろう

俺はこれから来る新生活に期待をしながら眠りについた
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