上 下
5 / 19
小学生編

5.私と推しの呼び名 後半【Side】颯真

しおりを挟む


 ん?ちょっと言ってることが分かんないなぁ。もう一度言ってくれないかな?

 「えっと?れいやくん?もういっかい言ってくれる?」

 私の催促にキョトンとしながらも、再び同じことを言ってくれるれいやくん。

 「だから、おれのことはれいってよんで?」

 やっぱり聞き間違いじゃなかったー!!!

 「えー…。なんで?」

 「?なんでって、りあちゃんにそうよんでほしかったから、じゃ、だめ?」

 首をこてんっと傾げながら、器用に私を上目遣いで見てくるれいやくん。うぅ、え、あ、あざとかわいい!!

 私は「いいよ」と言おうとした。言おうとしたが、遮られた。

 「だめぇぇー!!」

 そう、先にそーくんが否定した。え、嘘やん、そーくんなんで?私がれいやくんと仲良くなろうが、私はそーくんから離れていかないって分かったんだよね?あれ?

 「べつにいいだろ?なつめ」

 「うっ。だって…」

 呆れたようにため息をつきながら言うれいやくんに、言葉に詰まってビクッとしたそーくんは、チラチラと私を伺っている。何?どゆこと?

 「だからー、なつめもおれのこと、れいってよんでいいからさ、べつにいいだろ?」

 おぉっ!『君ラブ』通りだーっ!
 そう。『君ラブ』では、れいやくんとそーくんは、お互いに、玲、颯って呼びあっていたのだ。
 わーっ!!テンション上がるぅーっ!
 『君ラブ』での一面を垣間見て、思わず、テンションが上がって、興奮していた私は聴き逃していた。

 「それに、なつめはりあちゃんのこと、こまらせたくないないんだろ?」

 「チッ。わかった。おまえのことは、れいってよぶ。あと、ぼくのことは、そう、でいい…」

 「わかった!そう、だな!」

 こっそりこんなやり取りをしていて、『君ラブ』のように、呼びあうようになっている彼らのことを、私は見逃してしまっていたのだ。

 そして、私が知らない間に、あんなに険悪ムードだった(そーくんが一方的にだったけど)彼らが、何故か、意気投合して仲良くなっていたり。


 「ってなわけだから、おれのことはれいってよんでね。そうからきょかはとれたし」

 いやいや、何が、ってなわけだから、なの!?

 いや、呼ぶけどね!?


 「えっと、れーくん?」

 首をこてんっと傾げながら、そう呼ぶと、とても嬉しそうに、頬を染めて、『君ラブ』で見たキラキラな笑顔で、れーくんは「りあ」って呼んでくれたのだった。



 いや、結局二人の間に何があったの?


◇◆◇◆◇

side颯真


 ぼくには、大切な幼なじみがいる。

 名前は、七海璃空。

 りあはとても優しい。でも、その優しさはみんなに対するものだ。だから、りあはみんなに好かれている。でも、その中で、りあにとってぼくは特別だと思っていた。ぼくは、りあといつも一緒だった。ぼくは、りあがいればそれで良かった。だから、りあも同じだと思っていた。でも、りあはぼく以外と仲良くなろうとしていた。そんなのだめだ。だから、りあと仲良くなろうとしたヤツには、もうりあと関わらないようにしてもらった。その過程でけんかして、りあにおこられたけど、これくらいですむなら別にいい。

 これまで、ずっとそうしてきた。

 りあは、ぼくに、りあ以外と仲良くしろって言うけど、みんなぼくを変な目で見てきて、いじわるしてくるからだめだ。ぼくの髪と目の色が変だって言うんだ。そんなヤツとは仲良くなれるわけがない。ぼくに普通に接してくれるのはりあだけだ。

 それに、この前、へんなおじさんからさらわれそうになったじゃないか。その時、りあが守ってくれようとしたけど、どうしても力では大人にかてない。たまたまパトロールで通りかかったお巡りさんが助けてくれなかったら、ぼくもりあもどうなっていたか。あの時は、りあが守ってくれたけど、次はぼくがりあをまもる。


 そんなぼくとりあのふたりの世界に、入ってくるヤツが現れた。

 日向玲弥だ。


 りあは、ぼくに玲弥と仲良くなって欲しいみたいだった。
 でも、無理だと思った。
 りあが笑顔でコイツに話しかけるのにがまんできない。それに、コイツは、たぶんぼくと同じだ。りあに、笑顔で話しかけられるときの顔が、ぼくと同じだ。たぶん、りあにはじめて話しかけられた時に、コイツは、りあに堕ちている。


 放課後になって、りあが玲弥にいっしょに帰ろうとさそっていた。コイツがりあといっしょにいるのを見るのはいやだけど、二人にはできないから、ぼくもいっしょに帰ることにした。それに、もともと、ぼくがりあといっしょに帰っていたしね。

 帰るとちゅう、こうえんによることになった。

 また、りあは逆上がりのれんしゅうをするみたいだった。逆上がりをするアイツを見て、りあがアイツをほめていた。

 なんで?

 なんでほめるの?ぼくも、逆上がりできるのに!

 思わず、感情をぼうそうさせて泣いてしまったぼくにりあは、ぼくのことを好きだって言ってくれた。
 
 そっか。りあはぼくのことが大好きなのか。

 喜びにひたりふにゃふにゃと顔をゆるませるぼくに、安心したようにニコニコとぼくを見ているりあ。
 でも、玲弥が話しかけたせいで、りあはそっちにいしきがいっちゃった。

 玲弥は、りあに愛称で呼んでほしいらしい。

 それはダメ。ぼくの特権なのに。そう思ってすぐに反対してしまった。

 でも、りあはぼくのことを大好きって言ってくれたからなあ…。ほかのやつとなかよくなると、りあはそっちにいっちゃうんじゃないかと思っていたけど、今日みたかんじだと、だいじょうぶそうだからなあ。それに、玲弥を引きこんでおけば、玲弥はぼくと協力できそうだし…。手は組めそうなんだよなあ。そしたら、なんとなくだけど、りあにぼくと玲弥以外の男は近づけさせないようにできそうだし。


 りあはたまにボーッとしていて、意識がべつのところにあるときがあるんだけど、今、その、ボーッとしているからちょうどいいかな?


 「それに、なつめはりあちゃんのこと、こまらせたくないないんだろ?」

 ニヤニヤ笑いながらそうあおってくる玲弥に、思わず眉間にしわが寄る。

 「チッ。しかたないか。わかった。おまえのことは、れいってよぶ。あと、ぼくのことは、そう、でいい…」

 そして、つい舌打ちをした後の、ぼくの返答はおそらくれいのよそうどおりだろう。

 「わかった!そう、だな!」

 「なあ、おまえさ、りあのこと、すきだよな?」

 「やっぱり、きづいていたか。にらんでくるから、そうだとおもっていた」

 「ていあんだ。ぼくと手をくめ」

 「おう」

 ニヤリと笑ったれいと固く握手を交わす。

 ぼくとれいのあいだに、こんなやり取りがあったとはりあは思わないだろう。



───────
作者です。


なにこのしょうがくせいこわい。


書いてて思ったけど、こんな小学生いないよなー。
とは、思うものの、そーくんと、れーくんは、ハイスペックだから、OKということで。

そーくんのりあへの執着が作者の予想以上すぎてやばい。

なにこのやんでれこわい。

行き当たりばったりな作品ですが、読んでくださる読者の皆様に感謝を。

 

しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

側妃のお仕事は終了です。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,597pt お気に入り:7,955

乙ゲー世界でもう一度愛を見つけます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:19

異世界転生令嬢、出奔する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:26,597pt お気に入り:13,936

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:64,613pt お気に入り:2,064

完結 穀潰しと言われたので家を出ます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,696pt お気に入り:324

処理中です...