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第3章 現れた聖女は
3-1 聖女は彼の幼馴染
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ふと、騒ぎが聞こえる。中庭できゃあきゃあと忙しない声。王女とその友達の少女達が花を見ているようだ。
それの中にはローブを被った年頃の女性もいる。そのローブの彼女が杖を振るとキラキラの光を放たれ、花を取り巻くふわふわとしたベールを作り出す。あの少女は魔法使いのようだ。この国の魔法使いは、才能と爵位がある『もっている人』だ。羨ましくも尊敬も、諦念もする存在。騎士とはまた違う世界の人。
砂糖菓子のようなサラサラな質感、宝石のような採光。ふっと消えてしまう儚さと聖水のような清らかさ。
……私もあの魔法みたいなドレス、着たいな。
いや、そんなこと考えている場合じゃないか。仕事よ、仕事。
見慣れない魔法に見とれていた私は漸く遅刻しないようアーヴリル姫の前へと足を動かしはじめた。
前日にパーティーが終えた後のアーヴリル様は目を輝かせやる気に満ち溢れていた。
「私、これから頑張りますの。あのハートフィールド様の隣にいても胸を張れるように」
「それでね、あの、この国にお友達を増やそうと思って。王妃ってそういう仕事も必要よね。だから、執事に頼んでとりあえず今いい人を探してもらっているの」
「そうだったのね。私、アーヴリルの元気な様子が見られて嬉しいわ。これからも仲良くね」
「ええ!」
先日の落ち込みようを考えると思ってたより元気になったようだ。苦しんでいる姿なんて辛そうで見ているだけで辛かったのだ。幸せそうで想い人同士になっていて素敵だし、彼女達が元気なのは国にしても良いことだろう。
そう、彼女たちが元気なのは良いことだ。
「初めまして。エミー・ワットと申します。以後お見知りおきを」
「まぁ。噂の聖女様ね」
彼女の前に現れた少女が私を苦しめることになっていても。
夕日で陰るアーヴリル様の部屋の前。エミー様に睨まれながら耳打ちをされる。かの聖女の姿は醜い女の姿を晒していた。
「私、アルディス様とは幼馴染なの。想いを伝えあったりもしたわ。……貴方が姫と級友でなければ、私と結婚してたかもしれない。」
「そうなのですか」
「そう。私が結婚していたはずなの。アルディス様と。一介の田舎令嬢が調子に乗っていないでね。アルディス様の想い人はこの私なのですから」
「そうですか」
「ええ。では、また姫の元で」
私が苦しくとも、国に求められたことは正しく遂行すべきである。
夜遅く、アルディスが私の部屋にまで来た。だが、私に用がないと彼は現れないと知っている。今までだってそうだった。
「アルディス、貴方、何があってここへ?」
少々不貞腐れて冷たく突き放す様に語り出す。貴方は私の都合なんて知らないのでしょうね。
「来週から同棲する。俺の家に来い」
「へ?」
「荷造りや片付けをしておけよ。……そもそも物を持ってないというのは俺も知っているがな」
「は?」
それの中にはローブを被った年頃の女性もいる。そのローブの彼女が杖を振るとキラキラの光を放たれ、花を取り巻くふわふわとしたベールを作り出す。あの少女は魔法使いのようだ。この国の魔法使いは、才能と爵位がある『もっている人』だ。羨ましくも尊敬も、諦念もする存在。騎士とはまた違う世界の人。
砂糖菓子のようなサラサラな質感、宝石のような採光。ふっと消えてしまう儚さと聖水のような清らかさ。
……私もあの魔法みたいなドレス、着たいな。
いや、そんなこと考えている場合じゃないか。仕事よ、仕事。
見慣れない魔法に見とれていた私は漸く遅刻しないようアーヴリル姫の前へと足を動かしはじめた。
前日にパーティーが終えた後のアーヴリル様は目を輝かせやる気に満ち溢れていた。
「私、これから頑張りますの。あのハートフィールド様の隣にいても胸を張れるように」
「それでね、あの、この国にお友達を増やそうと思って。王妃ってそういう仕事も必要よね。だから、執事に頼んでとりあえず今いい人を探してもらっているの」
「そうだったのね。私、アーヴリルの元気な様子が見られて嬉しいわ。これからも仲良くね」
「ええ!」
先日の落ち込みようを考えると思ってたより元気になったようだ。苦しんでいる姿なんて辛そうで見ているだけで辛かったのだ。幸せそうで想い人同士になっていて素敵だし、彼女達が元気なのは国にしても良いことだろう。
そう、彼女たちが元気なのは良いことだ。
「初めまして。エミー・ワットと申します。以後お見知りおきを」
「まぁ。噂の聖女様ね」
彼女の前に現れた少女が私を苦しめることになっていても。
夕日で陰るアーヴリル様の部屋の前。エミー様に睨まれながら耳打ちをされる。かの聖女の姿は醜い女の姿を晒していた。
「私、アルディス様とは幼馴染なの。想いを伝えあったりもしたわ。……貴方が姫と級友でなければ、私と結婚してたかもしれない。」
「そうなのですか」
「そう。私が結婚していたはずなの。アルディス様と。一介の田舎令嬢が調子に乗っていないでね。アルディス様の想い人はこの私なのですから」
「そうですか」
「ええ。では、また姫の元で」
私が苦しくとも、国に求められたことは正しく遂行すべきである。
夜遅く、アルディスが私の部屋にまで来た。だが、私に用がないと彼は現れないと知っている。今までだってそうだった。
「アルディス、貴方、何があってここへ?」
少々不貞腐れて冷たく突き放す様に語り出す。貴方は私の都合なんて知らないのでしょうね。
「来週から同棲する。俺の家に来い」
「へ?」
「荷造りや片付けをしておけよ。……そもそも物を持ってないというのは俺も知っているがな」
「は?」
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