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第2章 対する想い
2-3 ファーストダンス
しおりを挟む「……ふふっ、ちゃんとしないとね」
ぐしゃぐしゃの顔で笑顔を浮かべたアーヴリルはこれからに向け、進み出す。
「パーティーの夜は私たち2人で話したいわ。ダンスの時にでも。貴方方にも聞かれたくないの、遠くから護衛できない?」
「ええ。お望みとあらば。その時は複数人で対応させていただきます」
そう話すアーヴリルの手元にはドレスがあった。
殿下の金髪をイメージした金糸の刺繍が入ったドレスが。
長い間すれ違っていた2人の話し合いは上手くいったらしい。
2階のベランダから彼女たちを眺めていると2人で抱き合っているのがわかった。あぁ、すごく幸せそう。誤解もしっかり解けていそうで良かったな。
後ろに流れる音楽を聴きながらぼんやりと殿下たちを眺めていると、背にした扉から高位貴族のよう装いをした女性と離れたアルディスがこちらに向かってくる。
「あの人たち上手くいったようだな」
「そうね。アーヴリル様も殿下も、激情するような様子も落胆する様な様子も無い。至極落ち着いて、嬉しそう。良かったわ」
「ああ。俺も護衛主が落ち着いてよかったよ。それに、俺達の結婚も近づくしな」
「あ」
「ん、忘れてたのか?まぁ、シルファはそういうとこあるか。まぁ、今からでもちゃんと衣装とかどこで式したいとかちゃんと考えておけよ」
「っ……」
忘れてたのに。姫たちの騒動で有耶無耶になってると思ってたのに。逃げ出したい気持ちを抑え、不安に歪む顔をバレないように隠した。その現実を現実として捉えたくない。予想だにしていなかった今後の自分に不安になる。くぐもった表情で曇った気持ちに蓋をする。
アルディスはベランダの柵にもたれかかって互いに触れ合っている護衛主達を見ながら呟く。
「なぁ……俺達も踊るか?」
「え?」
「あの2人は庭の護衛が見てる。殿下にも、団長にもシルファと一度くらいパーティーに出た方がいいって言ってくるのに休みはくれないから。今日のこの時間くらいは良いって許しを貰ってる」
そう言われ庭を見ると、遠くから彼女らを見守る護衛たちの姿が見えた。他の人が彼女の身を守っている。殿下が彼女の隣にいて騎士もいて、私達は休んでもいい。
頭がいっぱいになって息を詰める。
「……うん。そうだね。1度くらい」
「そう、1回。それが終わってから迎え行けばいい」
手を添えて体を寄せる。ダンスは一応習ったことがない訳では無い。でもそれは騎士として学んだことがあるだけだ。他の貴族令嬢のようには知らない。経験もないのだ。
ベランダの向こう、扉の内側から流れる音楽に合わせて踊り出した
私たちの間には沈黙が漂った。
気まずい訳でもでも快楽を感じる訳でもないなんとも言えない空気が私たちを包んだ。
リズムに合わせ動かす足が縺れる。アルディスのリードのお陰で辛うじて踊れているくらいに持ち上げてもらっている。失敗する度、彼と目が合う度、恥ずかしさが増してきて、顔も体も逸らそうとするのにダンスを主導するアルディスは自身の体に寄せてくる。
「ふはっ。シルファはダンス苦手なのか?」
「うるさい。こういうこと初めてなのよ」
「へー……そりゃ、良かった」
「何がよ」
「なんでも。ほら、足踏んでるぞ」
私にとって長くも短い1曲。
心臓がうるさくて、体が緊張していた。
そして、聞こえなくなった音楽。彼と目が合う。
私は急いで手を離して顔をパタパタと扇いだ。
「……もう、いいわよね。ほら、行くわよ」
「そうだな。婚約者様の初めてを貰えて嬉しい限りだ」
「は、恥ずかしいこと言ってないで早く!」
「はいはい」
私たちは庭から戻る護衛主たちの元へ向かった。
私の婚約へのカウントダウンはまた見なかったことにして。
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