こんな仕打ち許せるわけありません。死に戻り令嬢は婚約破棄を所望する

はなまる

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 私達は辺境伯の屋敷を出て騎士隊と合流した。

 「おはようございます。今日はよろしくお願いします。私は北辺境伯騎士隊長のレナン・トマーソンです。どうぞよろしくお願いします」とすぐに挨拶をされる。

 「レナンは警務部長ダニーと薬物研究室のリンハルの弟だ。レナンよろしく頼む」

 そう挨拶を返すのはネイト様。さすがだ。彼はまだ若いけど西の辺境伯なんだなと改めて思う。

 「そうか。シュナウト・ブルタニウスだ。いろいろ不慣れだがよろしく頼む」

 シュナウト殿下が手を差し出す。騎士隊長は慌てて握手をする。

 あれ、意外と立ち直ってる。良かった。これなら大丈夫そうだな。ってなんで私があいつの心配なんか!

 「私はリンローズ・コリーと言います。私も聖女としては二度目の結界修復ですのでどうかご指導よろしくお願いします」

 「とんでもありません。主人を助けていただいてありがとうございます」

 「こちらこそ、知らなかったとはいえご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

 「もう、挨拶はこれくらいでいいだろう。それより時間がない。レナン手はずは?」

 「はい‥」


 そこに神官のシバ様と聖女のロドミール嬢が走って来た。

 「大変です。神宿石がおかしいんです!」シバ神官ともあろう方が取り乱し真っ蒼な顔で言う。

 「そうなんです。まあ、ラセッタ辺境伯。ほんとにいて下さって良かった。早く神殿に急いでいて下さい」

 ロドミール嬢はネイト様に縋りつくと目をうるうるさせて言った。

 彼女ってこんなキャラだったかな?

 「すぐに行く。ロドミール嬢悪いがこれでは動きが着かない」

 「ああ、すみません。私恐くて。つい‥」

 彼女はすっとネイト様から離れるがその時私を見る視線にものすご~い殺気を感じる。

 なにこれ?彼女、ネイト様を好きなの?でも、あなた婚約者いましたよね?って私もか‥

 実はさっきからネイト様とは腕が触れあうほど近くにいた。私は慌ててぱっとネイト様から離れるといきなり彼に腕を掴まれた。

 「リンローズ急ごう」

 「‥はいっ!」


 とにかく私たち4人は神殿まで馬で駆け上がった。

 「「「「こ、これは!!」」」」

 神宿石が光を失い黒くなっていた。

 「どういうことだ?これはもはや神宿石の神力が失われたと言う事か?」騎士隊長がおびえたように言う。

 「わからない。こんなになった神宿石は見たことがない」ネイト様も驚いている。

 「とにかく魔力を注いでみよう。殿下、リンローズ。頼めるか。俺も一緒に加わる」

 「「わかりました。わかった」はい!」

 3人で神宿石に手を当てて魔力を込める。


 私はここに来て神宿石に手を当てた時の事を思い出していた。 

 もしかしてセレネーン様やポトス様の怒りが?どうしよう。もしそうだったとしたらこの国の神宿石は崩壊する。

 新しい神宿石をすぐに捧げて神様にお詫びをしなければならない。


 3人の魔力が辺りを包み込んでかなりの魔力が神宿石を包み込んだ。

 だが‥神宿石はその魔力を吸収しようとはしない。魔力はビリビリ辺りの空気を揺るがしそして時間の共に消えて行った。


 「おかしい。なにがあったんだ?」ネイト様が首をかしげる。

 「私もこんなの初めて見ましたわ。いつもなら神宿石に魔力が吸い込まれて行くはずですのに‥」つかつかとネイト様のそばに来てコテンと首をかしげるロドミール嬢。

 ああ、今来たのね。それにしても素早い。

 でも、ネイト様はそんな事は見てはいない。まあ、それどころではない。

 私は瞬時にロドミール嬢には聞かせない方がいいと判断した。

 「シュナウト殿下。ラセッタ辺境伯お話があります」

 「「リンローズどうした?何かわかるのか」」ネイト様、シュナウト殿下同時ですか。

 「ちょっと中に来て下さい」私は神殿の方に向きを変える。

 「ああ、わかった」ふたりが私について来ようとするが‥

 「お待ちになって。リンローズ様。お話はここでもいいんじゃありません?あなたシュナウト殿下というものがありながら、さっきから何です?ラセッタ辺境伯にすり寄ってばかり。見るに耐えられませんわ」

 あっ、それあなたですから。

 「ロ‥「ロドミール嬢君はさっきからうるさいぞ。今は急を要するんだ。言いがかりばかりつけるならもう帰れ!」‥」

 私が言う前にネイト様がバッサリ切り捨てた。

 「ひ、ひどい~私はお手伝いしようと‥」ロドミール嬢は泣きながら神殿の中に駆け込んで行った。

 あれ、泣いてないよな。まったく今はそんな事言ってる場合?違うでしょ。言い寄ってる場合じゃないよねぇ~。 

 私は脳内で気持ちをすぐに切り替える。


 そして神宿石に触れた時の事をふたりに話した。

 「ちょっと待てリンローズ。その時声がしたって言ったな?俺もお前が言うような話が聞こえた。あの時はそんな訳がないと思って俺の勘違いだって思おうとした。でも、まさか‥あれが神の?‥」シュナウト殿下が驚く。

 えっ?シュナウト殿下も聞こえた?それって最初に神宿石を一緒に触ったからなの?じゃあ、どうして今まで黙ってたのよ!

 まっ、私も彼には話していないけど‥


 脳内で情報処理も追いつかないうちに。

 「それって神が相当怒ってるって事か?」とネイト様に尋ねられシュナウト殿下への気はそがれた。

 「はい、きっとそうだと。神話にもありましたよね。西のセレネーン様と北のポトス様が愛し合っていたって、ふたりは地上から天に帰るつもりなんですよ。このままでは国は大変なことになるはずです。大至急神宿石を何とかしなくては‥それに王都のガイアン大神にも祈りを捧げなければと思います」

 「リンローズの話は信じる。これはどう見てもおかしいからな。そうとなれば急いで王都に帰らなくては‥シュナウト殿下。もしもの時には国王代理を頼むかもしれない。覚悟をしてくれ」

 「協力はいくらでもする。だが、こうなったらすぐにでも国王をドーナン兄上にした方がいいんじゃないのか?」

 「本気か?」

 「もちろんだ」

 「そうとなれば急いだほうがいいな。レナン騎士隊長、俺達は転移陣で王都に帰る。神宿石の事は何とかするからここは任せていいか?」

 「はい、お任せください!」

 そうして私たちは急いで王都に戻る事になった。


 神殿に入ってくとロドミール嬢が走り寄って来る。

 「私も協力しますわぁ、ラセッタ辺境伯。何でもおっしゃってぇぇ~」ロドミール嬢は懲りずにネイト様に視線を送る。

 「君はここで騎士隊長に協力をしてくれ。それが聖女としての役目だ!」

 「でも、それならリンローズ様をここに残せばいいじゃないですか?どうして彼女ばっかり!」

 「彼女は王都でやることがあるんだ。そんな事もわからないのか!」

 「そんなぁ~」

 「レナン!いいからこいつを連れて行け。俺達は急いでるんだぞ!ったく。さあ、リンローズ。俺と一緒に転移陣へ」

 「でも、一人ずつで「俺なら一緒でも行けるくらいの力はある。さあ、行こう」はい」

 「待て、俺はどうすればいいんだ?」シュナウト殿下が狼狽える。

 そこにシバ神官が走り込んで来た。

 「シバ。シュナウト殿下を王都に送ってくれ。俺は先に行く。お前も来い!」

 「わかりました」

 「ラセッタ辺境伯~」ロドミール嬢の叫び声が聞こえる中慌ただしく私とネイト様はカルキース辺境伯領を後にした。


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