ご機嫌ななめなお嬢様は異世界で獣人を振り回す

はなまる

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 リーネはくららの手を引いて国王の寝所までやって来た。

 ドアの前では家来が待機していて、もしもの時のための見張りをしている。

 腰に剣を差した家来がリーネとくららを部屋に通す。


 リーネは国王の部屋のリビングを抜けて次のドアをノックする。

 「陛下くららを連れてまいりました」

 「ああ、ご苦労、もう下がって良い」

 リーナはすぐにくららを中に押し入れてドアを閉めた。



 「くらら、待ちかねたぞ。こっちに来なさい」

 「いえ、陛下これは間違いでございます。わたしは‥‥その…夜のお務めをするつもりはないのでございます。このような事はする気はないとお断りしたのですが‥‥それなのに無理やり支度をさせられてここにつれて来られたのでございます。だからどうかお許しください」

 とにかくそんなつもりはないとはっきり言わないと‥‥くららは頭がはっきりしない状態でも何とか必死に訴えた。


 だが、そんなことはまったくブリュッケンに通じるはずもなかった。

 「くららお前の意見を聞くつもりはない。わたしが欲しいのもはわたしの好きに出来る。そうであろう?くらら…さあ、こっちに来なさい。何度も言わせるんじゃない。それくらいわかっておるであろう」

 緩んだ顔が少し引き締まりブリュッケンの顔がランプの明かりに浮かび上がる。


 彼の気分を損ねたことはすぐに分かった。

 「ですが…陛下大変なことが起きるのでございます。もうすぐこの部屋が火事になるのです」

 「言うに及んでそのような嘘を言うとは…そんなに私が嫌なのか?」

 ブリュッケンの顔がいかめしい顔つきになり、くららを睨む。

 「違います。わたしは決して嘘などをついてはおりません。本当に火事が起きるのです。早くここから逃げないと危険なのです。わたしを信じてくださらないのですか?」

 「そんなでたらめを?いいから早く脱いで、ベッドに横になるのだ。わたしを待たせるとは…せっかくの気分が台無しになるではないか!」



 ブリュッケンは自分の股間を撫ぜ上げると、はち切れんばかりの男根を夜衣の間から引きずり出した。

 くららの目の前に赤黒くたぎったものがさらけ出される。

 「やめてください。下品にもほどがありますわ。国王ともあろうお方がそのようなことをなさるなんて信じれません」

 くららはその異様な男の性器から目を反らす。

 だがいきなりそんなものを見せつけられて恥ずかしさで頬は赤く染まった。それは赤黒く太い血管がどくどく脈打っていて、グロテスクで中年の男の性のいやらしさみたいなものを感じさせた。

 くららは唇をかみしめて体を震わせた。



 だが、どうした事か体の奥がずくんとうごめいた。

 うそです。こんないやらしいものを見て体が反応するなんて…確かにわたしはバージンではありません。

 紫様と何度か身体を重ねたことはありましたが…

 いえ、愛し合った訳ではありません。彼はわたしを愛してはいなかったんですから。

 それでも彼の愛撫が心地よかったことは今でも思えています。


 胸をやわやわと揉まれてその頂を吸われた時は、それはもう体の奥深くが疼いて恥ずかしながらあそこがべっとり濡れてしまいました。

 彼と繋がった時など、はじめは痛みが伴いましたが、何度か繰り返すうちにそれはもうたまらない快感を覚えたものでした。

 ですが、これは全く別の事です。

 それにあの行為はわたしに取ったら大きな失敗でしたから、わたしがこんなことで興奮するわけがありません。


 「どうした?顔を赤く染めて…可愛いらしい。さあ恥かしがることはない。わたしがすぐに気持ち良くしてやろう」

 ブリュッケンはにやりと笑うとくららに近づいてきた。

 目の前には雄茎をピクピク引くつかせた国王が薄気味悪い笑いを浮かべてくららに近づいてくる。

 彼の手が羽織っていたガウンをはぎ取る。



 だが次の瞬間くららは窓に迫って来る炎に気づいた。

 「あれは…あれを見てください。陛下、危ないです。火が…」

 窓の外がオレンジ色の光で染まっていく。

 ブリュッケンがいぶかしそうに窓の方を振り返った。

 「何事だ。あれは…あっ!」

 ブリュッケンが叫んだ。



 いきなりパリーンとすさまじい音がして窓ガラスが割れる。

 粉々にガラスが割れた窓から火が生き物のようにうごめきながら部屋に入って来た。

 「危ない!陛下、とにかくここから早く逃げてください」

 とっさにくららはブリュッケンに言う。

 「くららお前も来るんだ」

 ブリュッケンは驚いた様子だがさすが国王だ。すぐに気を取り直した。

 「はい‥‥」

 火はあっという間にカーテンに燃え移り、カーテンを燃え上がらせた。そして壁を伝って天井に這いあがっていく。

 そして天井から天蓋に真っ赤な炎の触手を伸ばしていく。

 もうどうすることも出来そうにない。

 早くこの部屋から逃げなくては…‥

 国王は大きな声で「火事だ。誰か‥おーい、火事だ」と叫んだ。


 その時だった、別の窓が大きな音を立てて割れた。

 「ガッシャーン!」

 そして黒い塊が飛び込んできた。

 「おい、早く逃げろ!」


 「あなたはマクシュミリアン様‥‥どうしてここに?」

 飛び込んできたのはマクシュミリアンだった。

 彼はすぐにとなりのカーテンを引っ張って火が燃え広がらないように窓から引きはがすと、それを燃え上がっているカーテンめがけて覆いかぶせる。

 そしてすぐにベッドから上掛を取って、その上に重ねて火を閉じ込めてしまおうとしていた。

 「いいから早く逃げるんだ」

 「だめです。あなたを置いてはいけません」

 くららは気丈にも部屋の隅で迫る火を何とか食い止めようとしている。


 そこに家来たちが入って来た。

 「陛下、お怪我は?」

 「早くこちらに」

 国王に次々に声をかけると、国王を部屋から連れ出して安全なところに避難させる。

 「くらら、お前も来い!」

 「陛下、わたしはここを手伝いますから、どうぞ先に逃げてください」

 「…陛下急いでください」

 ブリュッケンは家来に抱えるようにして連れていかれる。

 「くらら、いいから逃げるんだ」

 ブリュッケンは叫び声を上げたが、家来が無理やり連れて部屋を出て行った。

 くららはまだ必死で火が広がるのを防ごうとしていた。


 すぐに何人かがマクシュミリアンの手伝いに入った。

 一人は敷物を手にまだ火のあるところに覆い被せた。バスルームには走って濡らしたタオルを火の上に覆いかぶせる者もいた。

 その後、水の入ったバケツを持った侍女たちがやってきて天井に燃え広がった火に一斉に水をかけた。

 おかげで火は何とか燃え広がらずに消えていった。

 他の家来たちもまだ火事の後始末であたふたしていた。


 くららはボー然と立ち尽くしていた。

 マクシュミリアン様はどこでしょうか?

 もしかして彼はわたしを助けるために‥‥?



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