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第二章 鵜の真似をする三羽烏
第三話 競泳水着ブリブリバース
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次の日、いつもより一〇分ほど早く登校した。
今日は一番乗りだと思っていたが、一番左前の席に亮が座っている。
机に肘をついて、窓の外を見ながら呆然した様子だ。
「おはよう。亮……だよね?」
「うぼ。うっちゅ! 咲耶……」
振り返った亮の右頬はボッコリと腫れていた。
近づいてみると、左頬も同じように腫れている。
謝りに行けとは言ったが、ここまでボコられるのは想定外だ。
水早ちゃんも、これは少しやりすぎではないだろうか。
「昨日、あれからなにがあったの? ドラ○もんみたいな顔になってるよ」
「うう。謝ったぞ、必死に謝った。ちゃんと謝って許してもらった」
「許してもらったわりには、ボコボコじゃないか」
「なはなおりにきふしようとしたはボコはれた……」
「ごめん、亮。なにを言ってるのか全然わからない。はっきり言ってくれない?」
すると亮は、目の前でなにやら演技をし始めた。
まず、手を合わせてペコペコ謝る動作を見せて、次にくちびるを尖らせて前へ。
「キスしようとしたら、拒絶されて連続往復ビンタのコンボだ……」
「なんてことをするんだ……」
やはり、他人の色恋沙汰に第三者が口出しして、いいことはない。
水早ちゃんは、謝罪をしてほしいだけじゃないと、亮に言ったのは僕自身だ。
それは、遠まわしに亮からのある一言だけを待ってるんだよ、と言いたかった。
お互いが相手を思い合っているのがわかっているのに……
どちらも微妙な距離感を保ち続け、関係性が変わるのを恐れる。
亮が尻込みする一方で、水早ちゃんは待ち焦がれる。
「すまん、咲耶。でも、ちゃんと謝って、告ったぞ」
「それで水早ちゃんの返事は?」
「顔が真っ赤でうつむいて……あんまり可愛いからハグして、そのあと……」
「ちょっと、それは強引すぎるだろう」
「だからって、こんなボコボコに叩くかよ! 俺はもう知らねえ!」
亮はプイッと顔を横に向け、窓の外を見て深いため息をつく。
ふてくされた親友をこのまま放置するのは気が引けるが、ここでひとつわかってきたことがある。僕には長年見せてこなかった、水早ちゃんの裏側や本質だ。
亮はいつだって悪気はない。中身は子どもの頃のまま、純粋そのものだ。
今回は順序としては間違っていないが、少し強引さが出たようだ。
タイミングの問題もある。そういうシチュエーションでも拒絶される場合もある。
(あんなに頬腫らして……)
顔を食べさせるヒーローとまで言わないが、亮の横顔を見ていると痛々しい。
水早ちゃんが亮に強烈なツッコミを入れるのは昔から変わらないが……
「おはよう、咲君……昨日は急に飛び出してごめんね!」
「いや、こちらこそ部活前に時間取らせてごめん」
「大丈夫だよ。一応、茶道部兼任だから」
「そうだけど……その、なんというか……」
「ああ……亮のことは、しばらく話題にしないでほしいの」
「うん、わかった。ごめんね。謝りに行けってハッパかけた僕が悪いよ」
「いいの。今はいい……それより、なにかわかった?」
僕に対してはいつも優しい水早ちゃんが、今日はトゲトゲしい。
毎朝見せてくれる屈託のない笑顔がない。二人に笑いがなくなってしまった。
僕が笑えないように、一切笑わない。灯火を失ったような気分だ。
「あの水着には三種類の穴が空いてるんだ」
「三種類? どういう意味なの?」
「刃物で切り裂いた部分、ペンなどで突き刺して広げた穴、熱で溶かした穴、三ヶ所それぞれ違う方法で破いてるってこと」
「それって、なんだかメンドウなやり方じゃない? 刃物持ってるなら、それでブリブリにしたほうが簡単じゃないのかな?」
「そこなんだ。刃物使って、ペン使って、なにかで焼くっていう手順をひとりの人間が踏んだとは思えない。同時に複数人が行ったと僕は考えてる」
「てことは、三人?」
「うん。確定ではないけど、そうなるね」
ここで水早ちゃん本人に、水泳部各学年の人数や部員の特徴を聞きたい。
聞きたいが、この場合の被害者目線での公正さが果たしてあるだろうか。
僕は、水泳部の中の蔵水早を知らない。
「三人かぁ……」
「この件は、僕と美咲先生に任せてもらえないかな?
先生が独自に調査するいい方法があるって言ってたんだ」
「方法があるの? わかった。元々、わたしが咲君に頼んでるしね」
一時間目の授業開始のチャイムが鳴る。
水早ちゃんは前を向いて、教科書やノートを用意している。
亮は相変わらず窓の外ばかり見て、こちらを気にする様子さえない。
***
放課後、いつもより迅速に教室を退出する。
亮は家の手伝いでコンビニバイト、水早ちゃんは水泳部に直行するはずだ。
特に水早ちゃんには、調査の方法を知られたくない。
僕と美咲先生が知りたいのは、蔵水早がどんな水泳部員か……なのだから。
今日は授業中も休み時間も、水早ちゃんとの接触をなるべく避けた。
部室へ向かう途中も、スパイ映画さながらの動きで背後を気にかけて歩いている。
「咲耶君、あの二人どうだった?」
部室に入るなり、椅子に座った美咲先生が問いかけてくる。
「最悪ですね。冷戦中ですよ」
「そうなの? いったい、なにがあったの?」
「先生は僕がいきなり抱きついて、キスしようとしたらどうします?」
「え? 女の子同士だからいいかなって思う」
「いや、僕男の子ですから……」
「急にそんなことされると驚いちゃう。受け入れがたいかな」
「亮がそれをやらかしたようです」
目を閉じて、首を大きく傾げながら先生は畳の上に入った。
僕も畳の上に座り、一連の所作をこなしていく。
「水泳部の子をひとり呼んでるの」
「え!? 水泳部って部活始まってますよ?」
「その子は剣道と水泳のかけ持ち。剣道がメインで水泳はたまに出てるらしいわ」
「そうなんですか。剣道と水泳……スポーツとスポーツのかけ持ちは珍しい」
「家が剣道場だからね。剣道部はほとんど指南役みたいなものなの」
この付近に剣道場は一件しかない。
うちの祖父も剣道の有段者で、その道場の門下生だと聞いたことがある。
面識はないが、同じ中学校出身の娘がひとりいる。
道場の名前が思い出せない。思考を巡らせていると、部室のドアが開かれた。
「失礼する」
「来てくれてありがとう。こちらへどうぞ」
「あまり時間がない。手短に頼む」
制服のリボンが赤い。青は一年、緑が二年、赤は三年だ。
黒髪のロング、身長は僕より数センチ高い。体型は細身から普通ぐらいか。
男の目線を釘づけにするような大きなバストだ。おそらく、先生より大きい。
「咲耶君、紹介するわ。こちら――」
「三年の四条春香、生徒会会計。茶道部の予算を決めたのもわたしだ」
「予算の話は今はいいです。先輩には水泳部の蔵水早についてお聞きしたい」
美咲先生の言葉をさえぎって、四条春香は早口で自己紹介を済ませた。
やりづらい相手、そういう印象しかない。先生、人選を間違えてないだろうか。
「蔵は、水泳部のエースだ。去年、新入生の中でも特に速かった」
「それって一番ってことですよね?」
「そうだ。蔵より速い部員はいない。一年のときから主将より速かった」
「現在の水泳部の人数わかりますか?」
「三年はわたし含めて四人、二年が蔵を含めて六人、一年も六人入部している」
水泳部には、現在一六名在籍しているようだ。
この中に犯人がいるのかどうか、犯人は三人なのかどうか……
「水早ちゃ……蔵水早が部内で問題を起こしたりしたことはありませんか?」
「問題? それはないな。優秀な選手だと思うが?」
「そうですか……」
「ただ、蔵は反感を買いやすい性格でもある」
「例えばどんな感じですか?」
「そうだな……例えば、三年が後輩にフォームを直すように指摘されたとする。
本来は教える側が教わるんだ。あまり、いい気分ではないだろう?」
「それは、言い方にもよるでしょう?」
「蔵の教えは丁寧だ。偉ぶったりもしない」
淡々と語る四条春香との会話に夢中になって忘れていた。
僕の隣りにいる美咲先生の様子がさっきからおかしい。
一言もしゃべらなくなった。どこか上の空で時計を見たり、窓を見たりしている。
「美咲先生? どうしたんですか?」
「え!? えっと、なんの話だったかな……」
「そろそろ部活に行きたいんだがいいか?」
「先輩! 最後に質問です」
「なんだ?」
「蔵水早が練習用の水着を破られたのは、部員全員が知っているんですよね?」
「ああ、知っている。部員同士が疑心暗鬼になって困ったものだ」
つまり、水泳部員は全員が内部犯だとお互いを疑い合っている。
こんなギクシャクした中で部活に顔を出し、昨日の亮の強引な行動……
水早ちゃんがイラつくのも、少しは理解できる。
「すみません、最後にもう一つだけ確認です」
「確認?」
「ロッカールームに入れるのは、部員と顧問だけですか? 他には?」
「今の時期、部員と顧問しか入れないはずだ。
だから、さっき言ったように、部員同士が疑り深くなっているんだ」
「そうですか……わかりました。ありがとうございます」
「では、わたしはこれで失礼する」
四条春香は茶室から退出する所作を行って、足早に部室を出て行った。
そのサバサバとした態度や言葉遣いに僕は少々イラついたようだ。
「なんなんだ……あの女は……この一件が終わったら、予算の抗議してやる!!」
「珍しいね。咲耶君がそんなに怒るなんて」
「あっけらかんとしすぎでしょ! 見下すような話し方もカンに障る」
「――を、悪く言わないで……」
「え? 今、なんと言いました?」
「妹を悪く言わないで……」
「はい……?」
水早ちゃんの競泳水着破損事件、亮の強引な告白事件……
このややこしい時期に、そんなカミングアウトはやめてもらいたいものだ。
今日は一番乗りだと思っていたが、一番左前の席に亮が座っている。
机に肘をついて、窓の外を見ながら呆然した様子だ。
「おはよう。亮……だよね?」
「うぼ。うっちゅ! 咲耶……」
振り返った亮の右頬はボッコリと腫れていた。
近づいてみると、左頬も同じように腫れている。
謝りに行けとは言ったが、ここまでボコられるのは想定外だ。
水早ちゃんも、これは少しやりすぎではないだろうか。
「昨日、あれからなにがあったの? ドラ○もんみたいな顔になってるよ」
「うう。謝ったぞ、必死に謝った。ちゃんと謝って許してもらった」
「許してもらったわりには、ボコボコじゃないか」
「なはなおりにきふしようとしたはボコはれた……」
「ごめん、亮。なにを言ってるのか全然わからない。はっきり言ってくれない?」
すると亮は、目の前でなにやら演技をし始めた。
まず、手を合わせてペコペコ謝る動作を見せて、次にくちびるを尖らせて前へ。
「キスしようとしたら、拒絶されて連続往復ビンタのコンボだ……」
「なんてことをするんだ……」
やはり、他人の色恋沙汰に第三者が口出しして、いいことはない。
水早ちゃんは、謝罪をしてほしいだけじゃないと、亮に言ったのは僕自身だ。
それは、遠まわしに亮からのある一言だけを待ってるんだよ、と言いたかった。
お互いが相手を思い合っているのがわかっているのに……
どちらも微妙な距離感を保ち続け、関係性が変わるのを恐れる。
亮が尻込みする一方で、水早ちゃんは待ち焦がれる。
「すまん、咲耶。でも、ちゃんと謝って、告ったぞ」
「それで水早ちゃんの返事は?」
「顔が真っ赤でうつむいて……あんまり可愛いからハグして、そのあと……」
「ちょっと、それは強引すぎるだろう」
「だからって、こんなボコボコに叩くかよ! 俺はもう知らねえ!」
亮はプイッと顔を横に向け、窓の外を見て深いため息をつく。
ふてくされた親友をこのまま放置するのは気が引けるが、ここでひとつわかってきたことがある。僕には長年見せてこなかった、水早ちゃんの裏側や本質だ。
亮はいつだって悪気はない。中身は子どもの頃のまま、純粋そのものだ。
今回は順序としては間違っていないが、少し強引さが出たようだ。
タイミングの問題もある。そういうシチュエーションでも拒絶される場合もある。
(あんなに頬腫らして……)
顔を食べさせるヒーローとまで言わないが、亮の横顔を見ていると痛々しい。
水早ちゃんが亮に強烈なツッコミを入れるのは昔から変わらないが……
「おはよう、咲君……昨日は急に飛び出してごめんね!」
「いや、こちらこそ部活前に時間取らせてごめん」
「大丈夫だよ。一応、茶道部兼任だから」
「そうだけど……その、なんというか……」
「ああ……亮のことは、しばらく話題にしないでほしいの」
「うん、わかった。ごめんね。謝りに行けってハッパかけた僕が悪いよ」
「いいの。今はいい……それより、なにかわかった?」
僕に対してはいつも優しい水早ちゃんが、今日はトゲトゲしい。
毎朝見せてくれる屈託のない笑顔がない。二人に笑いがなくなってしまった。
僕が笑えないように、一切笑わない。灯火を失ったような気分だ。
「あの水着には三種類の穴が空いてるんだ」
「三種類? どういう意味なの?」
「刃物で切り裂いた部分、ペンなどで突き刺して広げた穴、熱で溶かした穴、三ヶ所それぞれ違う方法で破いてるってこと」
「それって、なんだかメンドウなやり方じゃない? 刃物持ってるなら、それでブリブリにしたほうが簡単じゃないのかな?」
「そこなんだ。刃物使って、ペン使って、なにかで焼くっていう手順をひとりの人間が踏んだとは思えない。同時に複数人が行ったと僕は考えてる」
「てことは、三人?」
「うん。確定ではないけど、そうなるね」
ここで水早ちゃん本人に、水泳部各学年の人数や部員の特徴を聞きたい。
聞きたいが、この場合の被害者目線での公正さが果たしてあるだろうか。
僕は、水泳部の中の蔵水早を知らない。
「三人かぁ……」
「この件は、僕と美咲先生に任せてもらえないかな?
先生が独自に調査するいい方法があるって言ってたんだ」
「方法があるの? わかった。元々、わたしが咲君に頼んでるしね」
一時間目の授業開始のチャイムが鳴る。
水早ちゃんは前を向いて、教科書やノートを用意している。
亮は相変わらず窓の外ばかり見て、こちらを気にする様子さえない。
***
放課後、いつもより迅速に教室を退出する。
亮は家の手伝いでコンビニバイト、水早ちゃんは水泳部に直行するはずだ。
特に水早ちゃんには、調査の方法を知られたくない。
僕と美咲先生が知りたいのは、蔵水早がどんな水泳部員か……なのだから。
今日は授業中も休み時間も、水早ちゃんとの接触をなるべく避けた。
部室へ向かう途中も、スパイ映画さながらの動きで背後を気にかけて歩いている。
「咲耶君、あの二人どうだった?」
部室に入るなり、椅子に座った美咲先生が問いかけてくる。
「最悪ですね。冷戦中ですよ」
「そうなの? いったい、なにがあったの?」
「先生は僕がいきなり抱きついて、キスしようとしたらどうします?」
「え? 女の子同士だからいいかなって思う」
「いや、僕男の子ですから……」
「急にそんなことされると驚いちゃう。受け入れがたいかな」
「亮がそれをやらかしたようです」
目を閉じて、首を大きく傾げながら先生は畳の上に入った。
僕も畳の上に座り、一連の所作をこなしていく。
「水泳部の子をひとり呼んでるの」
「え!? 水泳部って部活始まってますよ?」
「その子は剣道と水泳のかけ持ち。剣道がメインで水泳はたまに出てるらしいわ」
「そうなんですか。剣道と水泳……スポーツとスポーツのかけ持ちは珍しい」
「家が剣道場だからね。剣道部はほとんど指南役みたいなものなの」
この付近に剣道場は一件しかない。
うちの祖父も剣道の有段者で、その道場の門下生だと聞いたことがある。
面識はないが、同じ中学校出身の娘がひとりいる。
道場の名前が思い出せない。思考を巡らせていると、部室のドアが開かれた。
「失礼する」
「来てくれてありがとう。こちらへどうぞ」
「あまり時間がない。手短に頼む」
制服のリボンが赤い。青は一年、緑が二年、赤は三年だ。
黒髪のロング、身長は僕より数センチ高い。体型は細身から普通ぐらいか。
男の目線を釘づけにするような大きなバストだ。おそらく、先生より大きい。
「咲耶君、紹介するわ。こちら――」
「三年の四条春香、生徒会会計。茶道部の予算を決めたのもわたしだ」
「予算の話は今はいいです。先輩には水泳部の蔵水早についてお聞きしたい」
美咲先生の言葉をさえぎって、四条春香は早口で自己紹介を済ませた。
やりづらい相手、そういう印象しかない。先生、人選を間違えてないだろうか。
「蔵は、水泳部のエースだ。去年、新入生の中でも特に速かった」
「それって一番ってことですよね?」
「そうだ。蔵より速い部員はいない。一年のときから主将より速かった」
「現在の水泳部の人数わかりますか?」
「三年はわたし含めて四人、二年が蔵を含めて六人、一年も六人入部している」
水泳部には、現在一六名在籍しているようだ。
この中に犯人がいるのかどうか、犯人は三人なのかどうか……
「水早ちゃ……蔵水早が部内で問題を起こしたりしたことはありませんか?」
「問題? それはないな。優秀な選手だと思うが?」
「そうですか……」
「ただ、蔵は反感を買いやすい性格でもある」
「例えばどんな感じですか?」
「そうだな……例えば、三年が後輩にフォームを直すように指摘されたとする。
本来は教える側が教わるんだ。あまり、いい気分ではないだろう?」
「それは、言い方にもよるでしょう?」
「蔵の教えは丁寧だ。偉ぶったりもしない」
淡々と語る四条春香との会話に夢中になって忘れていた。
僕の隣りにいる美咲先生の様子がさっきからおかしい。
一言もしゃべらなくなった。どこか上の空で時計を見たり、窓を見たりしている。
「美咲先生? どうしたんですか?」
「え!? えっと、なんの話だったかな……」
「そろそろ部活に行きたいんだがいいか?」
「先輩! 最後に質問です」
「なんだ?」
「蔵水早が練習用の水着を破られたのは、部員全員が知っているんですよね?」
「ああ、知っている。部員同士が疑心暗鬼になって困ったものだ」
つまり、水泳部員は全員が内部犯だとお互いを疑い合っている。
こんなギクシャクした中で部活に顔を出し、昨日の亮の強引な行動……
水早ちゃんがイラつくのも、少しは理解できる。
「すみません、最後にもう一つだけ確認です」
「確認?」
「ロッカールームに入れるのは、部員と顧問だけですか? 他には?」
「今の時期、部員と顧問しか入れないはずだ。
だから、さっき言ったように、部員同士が疑り深くなっているんだ」
「そうですか……わかりました。ありがとうございます」
「では、わたしはこれで失礼する」
四条春香は茶室から退出する所作を行って、足早に部室を出て行った。
そのサバサバとした態度や言葉遣いに僕は少々イラついたようだ。
「なんなんだ……あの女は……この一件が終わったら、予算の抗議してやる!!」
「珍しいね。咲耶君がそんなに怒るなんて」
「あっけらかんとしすぎでしょ! 見下すような話し方もカンに障る」
「――を、悪く言わないで……」
「え? 今、なんと言いました?」
「妹を悪く言わないで……」
「はい……?」
水早ちゃんの競泳水着破損事件、亮の強引な告白事件……
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