84 / 143
第11話:空から来るもの
Aパート(1)
しおりを挟む
レイチェルの救出に成功したアルテローゼだったが、容易くヘリオスに戻さないとばかりに、オリンポスからの追っ手に追われていた
『革命軍に航空戦力は無かったはずなのに、この戦闘機はどこからやってきたんだ』
革命軍はアルテローゼへの追っ手として、最新鋭のロボット戦闘機二機を送り出してきた。アルテローゼ・スカイフォームは高速飛行できると言っても純粋な戦闘機に比べれば速度も運動性も格段に落ちる。ヘリオスへの帰途の半分も行かないうちに追いつかれてしまった。
「オリンポスには様々な企業がいますわ。そのどれかが革命軍に提供したのでしょうね」
「金髪ドリル、落ち着いて解説している場合かよ」
『むぅ、緊急回避するぞ』
「「きゃあ」」
アルテローゼ・スカイフォームの背後を取った戦闘機から、対空ミサイルが発射される。
レーザー機銃はプロテクション・フロム・ミサイルの魔法で避けることが可能だが、近接信管で爆発する空対空ミサイルには効果が薄い。魔法の効果により直撃しないが、近距離で爆発して破片をまき散らされると、その破片は魔法で避けることはできないからだ。
『こうなることが分かっておれば、チャフやフレアとかいう装備も付けてくるんだった』
レイフは革命軍に航空戦力が無いと思っていたため、重量が増えてしまうチャフ・フレアディスペンサーというミサイルの防御手段の搭載を見送ったのだ。
アルテローゼの至近で爆発したミサイルの破片が、カンカンと音を立てて機体に衝突する。
「ドローンの時みたいに撃墜できないの?」
『それができれば苦労しない。魔力が足りないのだ』
魔法を使うことでスカイフォームは、通常の飛行機にはできないようなアクロバティックな飛行ができる。しかし今のアルテローゼには、魔法を使うための魔力が無かった。
レイチェルを救出するときに、無理やりフライの魔法を使って加速したことが、この魔力不足をまねていた。
「ミサイルがきますわ!」
『分かっている』
再び放たれたミサイルを避けるため、アルテローゼは高度を上げ進路を変えた。
『アルテローゼをヘリオスに向かわせないつもりだな』
「私をどうしても捕まえたいようですわね」
戦闘機はアルテローゼを撃墜しないように、ミサイルを発射している。実際、アルテローゼを本気で落とすつもりなら、こんなちまちまとした攻撃は無駄である。戦闘機が全ての空対空ミサイルを発射すれば、アルテローゼは致命的な損傷を受けて墜落してしまう。
革命軍はレイチェルを生きて捕らえるつもりだという事は、レイフにも分かっていた。
『もう少し速度が落とせれば、変形して地上に降りられるのだが…』
レイフはそう愚痴る。
スカイフォームを変形させるには一定の速度まで速度を落とす必要がある。速度を落とすぐらい簡単だと思うだろうが、今の状況で速度を落とすとミサイルの餌食となるため、迂闊には速度は落とせないのだ。
それに魔力がないため、変形後はアルテローゼは地上に降りなければならない。しかし、戦闘機もそれが分かっているのか、アルテローゼを地上に降ろさないように牽制してくるため、地上戦に持ち込むというのも無理な状況であった。
「速度を落とせば変形できるのですか……レイフ、変形した後、地上に降りる必要があるのですか?」
『レイチェル、何を言っている。魔法が使えないのだ、変形しても落ちるだけだぞ?』
「いえ、変形だけなら地上に降りなくても良いのではないですか? つまり、地上とは逆に空に上がれば良いのです」
レイチェルは、手を飛行機の形にすると、それを水平飛行から急上昇させた。
『なるほど!』
レイチェルの意図を理解したレイフは、すぐさまアルテローゼを上昇させた。
当然、戦闘機もアルテローゼに付いて上昇を始めた。戦闘機の飛行機としての性能はアルテローゼより上なので、アルテローゼがどんな動きをしてもすぐさま対応を取ってくる。
『飛行性能ではお前達に勝てないが、アルテローゼは飛行機じゃない!』
アルテローゼはエンジンを全開で上昇すが、その速度はどんどん落ちていった。そして速度が安全基準を下回ったとき、アルテローゼは機体を人型に変形させた。
「うぁっ、体が浮き上がるよ」
「アイラちゃん、シートに捕まりなさい」
両手を広げてエアブレーキを効かせると、アルテローゼの機体は空中にほとんど制止する。戦闘機のAIは、飛行機として非常識な動きに混乱をきたした。
戦闘機のAIは慌ててミサイルを発射するが、安全距離を割っていたため近接信管は作動しなかった。ミサイルはアルテローゼの側をかすめて空の彼方に飛んでいってしまう。
『レイチェル、トリガーを頼む!』
「分かってますわ」
レーザー機銃のレーザーが命中して右側の戦闘機が火を噴く。しかし左側の戦闘機ははレーザー機銃を避けると、あろう事かそのままアルテローゼに突っ込んできた。
『体当たりをするつもりか』
戦闘機のAIが体当たりを選択するとは、レイフは思ってみなかった。接触するまでの時間はほとんど残っていない。
「特攻なんて時代遅れですわよ」
その一瞬の刹那に、レイチェルはスティック操作するとアルテローゼの機体が、人間のように反り返る。
戦闘機の体当たりはアルテローゼの機体をかすめるに留まった。衝突を回避し、後ろを取ったアルテローゼはレーザー機銃が発射して戦闘機を撃墜した。
地上に落下する前に、アルテローゼは変形して飛行形態となった。
『ふぅ、何とかなったな』
「最後の体当たりは危なかったですわ」
戦闘機を撃墜し、ほっとするレイフとレイチェルだった。
『革命軍に航空戦力は無かったはずなのに、この戦闘機はどこからやってきたんだ』
革命軍はアルテローゼへの追っ手として、最新鋭のロボット戦闘機二機を送り出してきた。アルテローゼ・スカイフォームは高速飛行できると言っても純粋な戦闘機に比べれば速度も運動性も格段に落ちる。ヘリオスへの帰途の半分も行かないうちに追いつかれてしまった。
「オリンポスには様々な企業がいますわ。そのどれかが革命軍に提供したのでしょうね」
「金髪ドリル、落ち着いて解説している場合かよ」
『むぅ、緊急回避するぞ』
「「きゃあ」」
アルテローゼ・スカイフォームの背後を取った戦闘機から、対空ミサイルが発射される。
レーザー機銃はプロテクション・フロム・ミサイルの魔法で避けることが可能だが、近接信管で爆発する空対空ミサイルには効果が薄い。魔法の効果により直撃しないが、近距離で爆発して破片をまき散らされると、その破片は魔法で避けることはできないからだ。
『こうなることが分かっておれば、チャフやフレアとかいう装備も付けてくるんだった』
レイフは革命軍に航空戦力が無いと思っていたため、重量が増えてしまうチャフ・フレアディスペンサーというミサイルの防御手段の搭載を見送ったのだ。
アルテローゼの至近で爆発したミサイルの破片が、カンカンと音を立てて機体に衝突する。
「ドローンの時みたいに撃墜できないの?」
『それができれば苦労しない。魔力が足りないのだ』
魔法を使うことでスカイフォームは、通常の飛行機にはできないようなアクロバティックな飛行ができる。しかし今のアルテローゼには、魔法を使うための魔力が無かった。
レイチェルを救出するときに、無理やりフライの魔法を使って加速したことが、この魔力不足をまねていた。
「ミサイルがきますわ!」
『分かっている』
再び放たれたミサイルを避けるため、アルテローゼは高度を上げ進路を変えた。
『アルテローゼをヘリオスに向かわせないつもりだな』
「私をどうしても捕まえたいようですわね」
戦闘機はアルテローゼを撃墜しないように、ミサイルを発射している。実際、アルテローゼを本気で落とすつもりなら、こんなちまちまとした攻撃は無駄である。戦闘機が全ての空対空ミサイルを発射すれば、アルテローゼは致命的な損傷を受けて墜落してしまう。
革命軍はレイチェルを生きて捕らえるつもりだという事は、レイフにも分かっていた。
『もう少し速度が落とせれば、変形して地上に降りられるのだが…』
レイフはそう愚痴る。
スカイフォームを変形させるには一定の速度まで速度を落とす必要がある。速度を落とすぐらい簡単だと思うだろうが、今の状況で速度を落とすとミサイルの餌食となるため、迂闊には速度は落とせないのだ。
それに魔力がないため、変形後はアルテローゼは地上に降りなければならない。しかし、戦闘機もそれが分かっているのか、アルテローゼを地上に降ろさないように牽制してくるため、地上戦に持ち込むというのも無理な状況であった。
「速度を落とせば変形できるのですか……レイフ、変形した後、地上に降りる必要があるのですか?」
『レイチェル、何を言っている。魔法が使えないのだ、変形しても落ちるだけだぞ?』
「いえ、変形だけなら地上に降りなくても良いのではないですか? つまり、地上とは逆に空に上がれば良いのです」
レイチェルは、手を飛行機の形にすると、それを水平飛行から急上昇させた。
『なるほど!』
レイチェルの意図を理解したレイフは、すぐさまアルテローゼを上昇させた。
当然、戦闘機もアルテローゼに付いて上昇を始めた。戦闘機の飛行機としての性能はアルテローゼより上なので、アルテローゼがどんな動きをしてもすぐさま対応を取ってくる。
『飛行性能ではお前達に勝てないが、アルテローゼは飛行機じゃない!』
アルテローゼはエンジンを全開で上昇すが、その速度はどんどん落ちていった。そして速度が安全基準を下回ったとき、アルテローゼは機体を人型に変形させた。
「うぁっ、体が浮き上がるよ」
「アイラちゃん、シートに捕まりなさい」
両手を広げてエアブレーキを効かせると、アルテローゼの機体は空中にほとんど制止する。戦闘機のAIは、飛行機として非常識な動きに混乱をきたした。
戦闘機のAIは慌ててミサイルを発射するが、安全距離を割っていたため近接信管は作動しなかった。ミサイルはアルテローゼの側をかすめて空の彼方に飛んでいってしまう。
『レイチェル、トリガーを頼む!』
「分かってますわ」
レーザー機銃のレーザーが命中して右側の戦闘機が火を噴く。しかし左側の戦闘機ははレーザー機銃を避けると、あろう事かそのままアルテローゼに突っ込んできた。
『体当たりをするつもりか』
戦闘機のAIが体当たりを選択するとは、レイフは思ってみなかった。接触するまでの時間はほとんど残っていない。
「特攻なんて時代遅れですわよ」
その一瞬の刹那に、レイチェルはスティック操作するとアルテローゼの機体が、人間のように反り返る。
戦闘機の体当たりはアルテローゼの機体をかすめるに留まった。衝突を回避し、後ろを取ったアルテローゼはレーザー機銃が発射して戦闘機を撃墜した。
地上に落下する前に、アルテローゼは変形して飛行形態となった。
『ふぅ、何とかなったな』
「最後の体当たりは危なかったですわ」
戦闘機を撃墜し、ほっとするレイフとレイチェルだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる