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1章-追放冒険者
1.追放
しおりを挟む「スイ。お前を追放する。金輪際僕と関わらないでくれ」
とある酒場の一角で地面にひれ伏す僕に目掛けて冷淡に放たれた。
声の主は同じ冒険者のパーティの仲間だったギルファスである。
なんでこんな事に…
ギルファスに跪くようにして地に這いつくばっていたスイは顔を歪めながら声が放たれた所に顔を向けた。
「冗談…ですよね…ははは」
これはギルファスさんのいつもの冗談だ。きっと前と同じように僕を使って場を盛り上げているんだろう。
そう自分に言い聞かせるように、神に願うかのようにスイは冷や汗をかきながらギルファスに向かって歪に微笑んだ。
だがそんな自己暗示も、神に縋り得た些細な希望も、ギルファスの前では路肩に転がる塵芥のように跳ね除けられた。
「真実だ」
「ッ…!!」
たった一言。そのたった一言だけでスイの心臓は大きく跳ね上がり、今までに無いほど激しく鼓動した。
「…目が見えず、魔法が使えず、人並みにも動けない。はっきり言おう。迷惑なんだ」
「…!で、でも!!ーー」
五年も君達と組んでいた。
そう叫ぼうするが、それはギルファスによって遮られた。
「五年…五年だスイ。君と僕たち四人が過ごした期間は。
僕たちは冒険者として冒険し、数多くの魔物を狩ってきた。
その間、君は何をしていたんだ?
僕やゴルグは剣で魔物を葬った。女性のメイサだって魔法を使って魔物を葬った、リアナは怪我をした僕たちを魔法で癒せた。
剣も魔法も使えない君はこの五年間何をしていた?
何もしていないだろう。何も出来ていないんだスイ。」
「……」
スイの口から言葉は出なかった。
いや、出せなかった。
声を荒げるでもなく、ただただ冷淡にそこにひれ伏すモノに向かって声を発するギルファス。
それは感情論でも曲論でもなく正論からでた言葉。
五年もの間、雑務や荷物持ちしかしていなかったスイが返せる言葉は何もなかった。
やがてスイの顔は地面を向き、さらに歪む。
「何もできない足手まといは必要ないの!」
「あなたの傷を癒す魔力をギルファス様に使えば私達はより強くなれます」
「惨めだな」
横からも声が聞こえた。メイサ、リアナ、ゴルグの声だ。
メイサは隠す事なく嫌悪感がその言葉に含まれていた。
リアナは遠回しに僕を邪魔者だと淡白につげた。
ゴルグは地に伏す今の僕に向けて、侮蔑と哀れみを込めるように言った。
スイの信じていた人達は皆スイを信じていなかったのだ。
スイの追放を止めるものなど誰一人としていない。
満場一致の追放に僕は地面に向かい咽び泣いた。
涙は出なかった。代わりに鼻水を垂らしていた。
ギルファスは最後に言い放った。
「明日、僕達はこの街を発つ。僕たちのパーティは国王様に活躍を認められてね。王宮に呼ばれたんだ。もちろん呼ばれた名前に君の名はない。国王様は君の活躍もしっかりと見ていたみたいだ。
今までありがとうスイ。これからは会うことのないよう君の運命を祈っているよ」
僕はただ、咽び泣く事しかできなかった。
(ギルファス…君はどんな眼を僕に向けていたんだい。
僕には想像もできないや。分かりたくもないよ。
その眼はきっと僕を写していなかったのだろうから)
***
ギルファスさんとの出会いは五年前の暑い日、僕がまだ12だった頃。
どこで出会ったのかも、何故拾われたのかもわからない。
ギルファスさんは僕に出会い、この街ミルドラへと連れ出してくれた。
ギルファスさんとの出会いは僕の中で最も古い記憶だった。
僕にはそれまでの記憶がなかった。
自分が覚えているのはスイと言う名前と知識だけ。それ以外は自分がどこで何をしていたのか全く覚えていなかった。
だから僕は何故、眼が見え無いのかがわからなかった。
ただわかるのは両の目に額から目元にかけてクロスするように大きな傷を負っている事から怪我で見えなくなったらしいということだけだ。
僕は眼が見えない代わりに魔力のあるものは感知ができた。
だがそれ以外、僕には何もなかった。
だからギルファスさんに拾ってもらった時はまるで神様のように感じた。
だからギルファスさんに言われたことは何でもやった。
魔物の囮、荷物持ち、薬草集め、装備の手入れ、ギルファスさんが泊まる宿の床の掃除だって何度も頭をぶつけながらもやった。
するとギルファスさんは僕に食べ物を与えてくれた。
僕が食べ物を食べるとギルファスさんやメイサ、リアナ、ゴルグが何故か笑ってくれた。
僕もそれが嬉しかった。
仲間、パーティとして僕たちは繋がっているんだと心の底から彼らを信用した。
ゴルグなんて友達の印として毎晩僕を部屋に呼んでくれた。
そこでは僕は床に寝転がりゴルグが寝転がった僕を蹴るという遊びをしてもらった。
痛かったけど、ゴルグは楽しそうだったので僕も楽しかった。
メイサはゴルグほど仲良くは無かったけれど、ゴルグに呼び出されなかった日の夜にゴルグと同じように僕のことを蹴ると喜んでくれた。
リアナは僕がたまに一人でやった依頼の報酬を渡すととても喜んでくれていた。
ギルファスさんは仲良くなるなんていうのが恐れ多いほどの大恩があるのだが、いつも優しく声をかけてくれた。
そんな幸せだった生活も今終わりを告げた。
僕はパーティに捨てられて生きる意味を失った。
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