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襲撃と衝撃と悪魔のしょっぱい顔

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長い廊下を抱っこされて移動中のリリアンヌです。
リリアンヌの体力の無さでは二曲続けてダンスは無謀と言うものでした。それに様々な香水の匂いに少し酔ってしまった様で気持ちが悪いのです。

王宮の客室で休むよりも庭で外の空気を吸った方が良さそう。という結論に至った為テラスから外に出て来ていた。

「うわぁ、綺麗」

肌寒い夜風に冬の匂いを感じます。

雪の妖精が舞い降り来月からは地方貴族達の大半が領地に帰り出す季節。
今年最後の王宮で開催する舞踏会の為今日の舞踏会は様々な趣向を凝らしている。
テラスから先はまるで星空がそのまま庭に降りてきたような光の魔法が込められた魔石が庭に散りばめられており、その魔石が七色の輝きを放ちとても幻想的な景色です。


「気に入った?」
ぽかんと口を開けていたリリアンヌは頷いた。
「はい、とっても綺麗です。」
「じゃあコレは?」
光の強くなった庭の中心にハート型の輪っかが現れた。
「ぅわぁぁ」
アレ?このハート型…
前に仕立て屋の魔女とドレスのデザインを決める時に話が脱線して好きなデザインの指輪の話や好きな物の話をした気がする。

ん?見ればラファエル様は私を見て嬉しそうに微笑んでいる。

「…もしかして、このお庭の仕掛け、ラファエル様が考案なさったんですか?」

ニコニコと何やらご満悦のラファエルは頷き庭に視線を向けた。
「リリー、この世界には愛のない夫婦もいれば愛し合う夫婦もいる。」
「はい」
私の両親は政略結婚だったが父が母にひと目で恋に落ちた為母を大切に大切に愛してきた。だから母は絆かされ、いつしか母も父を愛す様になったと聞いている。
けれど、周囲には愛のない全く会話のない夫婦だっている事は知っている。

「私は、あんな風に薬によってリリーを手に入れてしまった。でも私は君を愛している。生涯ずっとこの愛を受け入れて欲しい。(死がふたりを分かつとも永遠に、ともにあれ)」

ラファエルは静かに跪くとリリアンヌの手を取り薬指にハート型にカットされたダイヤモンドの指輪をその指に滑らせた。
以前仕立て屋の魔女に話したハート型の宝石とその下にはリボンの形にデザインされた台座。

リリアンヌは感激して胸が苦しくなって、その後ラファエルが呟いた禁じられた呪文を聴き逃してしまった。

「はい、私もラファエル様のことが大好きです。末永く宜しくお願いします」

何かが承認された様に輝きを放つ指輪を不思議そうに見たリリアンヌだがラファエルがリリアンヌのこめ髪に口付けたことでリリアンヌは立ち上がって両手を広げたラファエルの胸に飛び込んだ。
「ラファエル様、素敵な指輪をありがとうございます。それにこの星空のようなお庭も」
「リリアンヌ愛している」

ラファエルの腕の中は暖かくて逞しい腕は力強くてリリアンヌは『幸せだな~』と目を閉じた。

リリアンヌはラファエルとたわいもない話をしながら庭園を散策した。
光の魔法のライトで足元を照らし時折花の妖精がふわりと飛び交いリリアンヌは夜の庭園を満喫していた。

「お話中失礼します。ジュリエッティ公爵、陛下がお呼びでございます。」

「…仕方ないな。ちょっと行ってくる。リリー、君は音楽ホールに行っておくかい?」

舞踏会の会場の続きの間には防音の効いた音楽ホールがある。きっと女性達はそちらに移動しているのだろう。先程はクリスティナに出会わなかった。もしかしたらそちらに移動したのかもしれない。
「そうですね。クリスティナを探しに行ってみます!」






大ホールの奥には続きの間がありリリアンヌはすれ違う知り合いに祝福の言葉を頂いたり、挨拶やたわいもない話をしながらも何とか音楽ホールに到着した。

中を伺うと直ぐにクリスティナを見つけられた。黒髪に緑の瞳の美しいクリスティナは海のような青緑のドレスを着ており、とてもひと目を引く美しさだった。

「リリアンヌ、婚約、おめでとう!なんて言っていたらもう数日で結婚式だなんて!貴方ったら!しかもお相手はあの麗しの王弟殿下、あっ、今はジュリエッティ公爵様でしたわね。」

クリスティナはそう言って捲し立てると片眉を上げてクリスティナの後ろを気にしながらリリアンヌの方に近づくと顔を近づけた。
「彼女達、わかる?ボンファンティ侯爵家の三姉妹。」
「いいえ?お見かけしたのは今日が初めてよ?」
「やっぱり、ちょっと…あっ、あちらの隅に移動しましょう?」
クリスティナは姿勢をただして隅にある椅子にリリアンヌを連れて移動した。

「なぁにクリスティナ。あの方達がどうかなさったの?」
「彼女達、実は先程遅れて会場に入られたみたいなんだけど、ジュリエッティ公爵様の結婚が決まった。と聞いて、なんとご自分達がそのお相手だと言いだしたの。」
「…え?」
なぜそんな事に?

「どうやら隣国に留学なさっていたみたいで、今年最後になる舞踏会だからって昨夜帰国なさったばかりだったみたい。」

なるほど、お相手の名前がまだ分からない、もしくは権力でどうとでもできると思っているのか。
むぅ、面倒くさそうです。

「お話中ごめんなさい。わたくしはボンファンティ侯爵家の長女、キャサリンよ。ねぇ?貴方がリリアンヌ様?」
「ええ、わたくしがリリアンヌ・ディ・ジョルジュですわ?」
リリアンヌは余り宜しくない眼差しと態度からクリスティナだけは何とか巻き込まない様にと彼女の前へと移動した。

「貴方が、まさかラファエル様を射止めたと言うの?」
「ええ、数日後にはラファエル様と結婚する予定ですが。」
「…止めて!すぐに中止すると言って来なさい!」
「…え?なぜそんな事を?それにもう式場もドレスも新居も準備万端ですわ?」
「ふざけないで!ラファエル様と結婚して良いのはわたくしだけなのよ!!」
リリアンヌはため息を飲み込みクラッチバッグを開け漁る。
「…えっとぉ、………勘違い女の対処法…あったわ。」
「……ちょっと!!何を見てますの!」
ばさっと本が叩き落とされ、リリアンヌはカッとなった。
「何なさるの!!この本はティムさんがわたくしの為に夜なべして作って下さった別冊バージョンだったのに…」

「へぇ、更に別冊まであったんですね…」
あ、アレ?

リリアンヌは目を瞬き居るはずのない人物の姿に驚き、別冊を拾う事をすっかり忘れていた。
「リリアンヌ、あちらの後処理に手間取っていて遅くなったね。さぁ、もう帰ろう。そしてこの冊子の詳細を聞こうか?」

ラファエルは別冊の著者名を見てなんとも言えないしょっぱい顔をしていた。

「ラファエル様の半目、なんか面白いけど、やっぱり何しても美形は美形なのですね」
「リリアンヌ、貴方、気にする所はそこなの?」

気付けばクリスティナはなぜか入り口付近から音楽ホールの方に入って来た所だった。

「ぁ、え?クリスティナ、貴方、わたくしの後ろに居たんじゃ…アレ?」
リリアンヌは後ろを確認するが誰も居ない。

「…いつの間に」

リリアンヌがぼんやりしていた間にクリスティナはラファエル様を呼びに行ってくれたのだわ。

なんて凄いの。

リリアンヌの羨望の眼差しを浴びるクリスティナをラファエルは面白くない気持ちでみやる。

ひとまず、同族嫌悪的な?
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