巻き戻った令嬢は王子から全力で逃げる

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クレパルディ公爵夫人ジョゼファとパウラ王妃が非公式に教会で行われる競技会に訪れた事によって教会側は無様なほど動揺し、慌てていた。

そんな事では、ない腹まで探られる。ああ、なんと愚かな奴等だ。
しかし、王妃はともかく公爵夫人とはまた厄介な。クレパルディ公爵夫人にはどんな小細工も通用しない。魔法を感知し、更に読み解く彼女が居てはこちらの小細工が使えないでは無いか。

せっかく教会に金を掴ませ我が娘を癒しの聖女に祭り上げ、王子の妃にと仕立て上げるつもりが。

そもそも、今日の競技会には協力者の協力のもと公爵夫人を他の催しに出席させて上手くこの競技会から関心を逸らしたはずだった。

公爵夫人の予定を掴んで上手く他の催しに誘導し、王妃のスケジュールを調整して王妃のみをこの競技会に招くつもりだった。
しかし、最近王妃の周りがきな臭い事から王妃の出席も見送るべきだと結論付け、他の催しに出席させることにしてこの競技会への出席を阻んだはずだった。


二階席で下の様子を伺っていた男は悔しげに唇を噛み、ひとまず娘の待つ部屋へと向かった。

なぜこう上手くいかない。何が私の計画を阻んでいるのだ。

いったいなにが。



──────────


アリアンナはクレパルディ公爵夫人ジョゼファに洗いざらい話してしまったザカリを頬を引き攣らせ見ていた。口を挟むと「アリアンナは甘い」と言われてしまい、それを夫人に生暖かい眼差しで見守られてしまい、気まずげに口を閉ざすしかない訳で。

「カヴァルロ伯爵のご息女、確かニコーレ嬢だったかしら?」

「…………」

ニコーレに向き直った夫人は目を細めて彼女を見ている。
まるで蛇に睨まれた蛙の様にニコーレは硬直するばかりである。

「あらあら、挨拶もまともに出来ないなんて…本当にまだお子様ですのね。でも大丈夫よ。あなたがちゃんと成長するまで、無理に淑女の真似事をする必要は無いとカヴァルロ伯爵、あなたのお父様にわたくしから口添えして差し上げてよ」

言われたニコーレは意味を理解出来ない様で首を傾げている。

「あら、まぁ」
夫人はニコーレの様子に驚きと侮蔑の笑みを浮かべうっそりと嗤った。

アリアンナはあまりの恐ろしい夫人の様子に震え上がり俯く。
ニコーレはわからなかった様だがあれはちゃんとした淑女になるまで外に出すなとあなたのお父様にお伝えするから家から出るなと言っているのである。

クレパルディ公爵夫人の不興をかったと今、この教会にいる者達には知られてしまっている。ニコーレはそのうち領地に隠されるか修道院へと出されるだろうと予想できた。

夫人はわたくしまで騒がせてしまったわ。と淑女の礼をし詫びると「アリアンナちゃん、頑張ってね」とアリアンナに笑いかけて主教様のいる祭壇奥へと消えて行った。
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