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憎い、苦しい。殺してやりたい。

自分がこんなにも惨めなのはなぜなのか。そう考えると必ずあの女の姿が脳裏を過る。
なぜ私がこんな辺境の地に追いやられてるいるのか。

訳が分からない。

けれどこれだけは確信していた。
あの日あの女は私に罪を被せたのだ。私は気が付けばあそこに居ただけなのに。
きっとあの女が仕組ん事だったのだ。

許さない。こんな人を陥れる浸潤の譖りを、まさか私がやられるなんて。

待っていて。アリアンナ。

やられっ放しで引下がる様な私では無いのよ。

「ビアンカ。準備は出来たの?あなたは病み上がりなのだから、なるべく暖かくしているのよ?」

「ええ、お母様。ごめんなさい。心配ばかりかけてしまって」

しょんぼりする娘に母親は慌ててそんな事は無いと否定する。
「いいのよ。ビアンカ。わたくしは貴女の母だもの。娘は何をしても心配だし、何をしても、可愛いの。わたくしは貴女が可愛くて心配なだけなのよ。」

ビアンカを溺愛する母オスティ伯爵夫人アザレアはあの日の真実を娘には一切話していなかった。娘があんまりにも可哀想だった。
ビアンカのいとこであり、アザレアの妹の息子ヘンリーの話によればビアンカがおかしな事をしでかした事はジョバンニ殿下やクレパルディ公爵夫人とアリアンナ以外では騎士達や魔術師達の中でもごく限られた人物しか知らないと言うし。

それならばわざわざ娘に話して傷つける必要など無いだろうと判断していた。

「それにしても、今日は何だか街が騒がしいわね?早く発った方が良さそうだわ」



南にある海辺の街ジナステラはエイナウディ辺境伯の治める土地の中でも一番治安の良いリゾート地である。

王侯貴族の別荘が立ち並ぶ一等地で悠々自適な療養生活を送ったビアンカは日々の鬱憤を晴らす為に少々食べ過ぎ、何処と無く逞しさが伺える胴回りを隠す為にヒラヒラとしたドレープがたっぷり入ったドレスを着て可愛らしい旅用のブーツを履き準備を整えた。

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