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旅の始まり
狩り、再び
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「ところでアースさんはこんなところで、あんな姿で何をなさっていたのですか?」
「狩りをしながら身体強化だな」
「へぇ……それは人間の姿では出来ないことなのですか? 正直申しまして、あのように小さくか弱そうな姿より、今の姿で戦った方が勝機はあるかと思うのですが。魔法もありますし」
「うっ……」
痛いところを突かれてしまった。
『ギースよ、言うてやるな。アースはの、魔法が使えんのじゃ』
「そうだったのですね! これは申し訳ないことを言いました!」
素直に謝罪し、深々と頭を下げるギース。そこいらにいる人間よりも人間が出来ていやしないか!? 中身地龍だぞ!?
「あの姿は猫って言うんだが、あの姿でなら俺は強くなれるみたいなんだよ、魔法がなくても」
「そうなんですね! あの体にしては重い打撃だなとは思いましたが、そういうことでしたか。あの姿はネコと言うのですね」
全く効いていなかったのに……。
「ケルベルースは倒せるようになったんだが、ドスベアーはまだ少しばかり早かったようでなぁ」
「へぇ! あの体でケルベルースを倒せるんですか! それは凄い!」
何だろうか、こいつ、地龍なのに良い奴過ぎないか?
「ケルベルースが倒せるのなら、次は『シシーガ』辺りがいいかもしれませんね。僕より少し小さめの魔物です」
「おぉ、いいね! でも、そんなやつこの辺にはいないからな」
「あっちの方にいましたよ?」
ギースは草原の更に奥の方を指さした。
「ここから数キロほど離れたところにいるのを見掛けましたね」
猫の姿であれば結構近いかもしれない。
ということで猫に変化してギースの指さした方向をひた走った。
空は薄らと明るくなってきており、夜明けが近いようだ。
俺の速度に着いて来れなかったギースは「僕はこの辺りにいますから、どうぞ行ってきてください」と手を振って見送ってくれた。
『あいつ、大丈夫か?』
『この辺りでギースに勝てるものはおらんよ。ガクが来なければ大丈夫じゃろう』
どのくらい走ったのか、空は更に明るさを増し、いよいよ日が上り始めるかという頃、丁度よさそうな魔物を見つけた。
『あれがシシーガか?』
『うむ、あれじゃな』
猪を一回り大きくしたくらいの、土色の皮膚をした魔物が前足と牙を使って土を掘っていた。
口の両端から反り返った牙のような角を生やしており、こめかみにも同様の角が二本生えている。
当然毛はない。
鼻はべチャリと潰れたような形をしていて、何となくずっと見ているとドリスを彷彿としてきてムカムカしてくる。
『腹立たしい顔をしておるの』
どうやらシャンテも同じように感じているようだ。
そいつに狙いを定め、気付かれないように背後を取ると、無防備にさらけ出されている尻にクロス切りをお見舞いしてみた。
「ピギャァァァァァ!!」
尻にはしっかりと切り傷が出来ていて、ドスベアーより皮膚の固さはなくてホッとした。
土に突っ込んでいた顔を上げこちらを振り返ったシシーガを見て、更にムカムカしてきた。
ピンク色の角の取れた三角形のような鼻には土がべっとり付いていて、口の下の肉はタプタプと揺れている。
『好きになれん顔をしておるな』
『魔物版ドリスだな、ありゃ』
『プッ……ククッ……アハハハハ!』
初めてシャンテの笑い声を聞いた。
『似ておる! 似すぎておるわ! あれは駄目じゃ! ドリス、プッ! アハハハハ!』
ツボに入ってしまったのかずっと笑っている。
後ろ足で地面を蹴りながら、頭を下げていたシシーガが一直線にこちらに突進してきたので、それをジャンプでかわしつつ、その背に飛び乗った。
一度走り出すと止まれないのか、大きな木に思い切り激突したシシーガは、背に俺が乗っていることに気付いていないのか、辺りをキョロキョロと忙しなく見渡し始めた。
シシーガに突進された木は激しく揺れ、ボトボトと木の実が落ちてきた。
あの実は『ココッタ』じゃないだろうか? 拾って帰りたい。
『背中に神経走ってないのか?』
『単に知能が足りぬのだろ?』
俺を見失ったと思ったのか、ゆっくりと歩き出したシシーガ。
無抵抗の相手に攻撃を与えるなんてと一瞬思ったが、気付かないシシーガがアホなだけだと、後頭部に猫パンチとクロス切りを打ち込んだ。
さすがに俺に気付いたシシーガは、また醜い叫び声を上げ、ゴロッと寝そべると地面を転がり出した。
既に背中には俺がいないことも気付いていないようだ。本当に色々と残念な魔物である。
ある程度転がると立ち上がって地面を見ているのだが、そこに俺がいるはずもない。
そんなシシーガに駆け寄り腹に猫パンチを連打すると、ドーンと音を立ててシシーガは倒れた。
だが倒れただけでまだ元気はありそうだ。
起き上がるのに時間を取られている間に腹に何度も猫パンチを打ち込みつつ爪を立てる。
最後の爪攻撃で皮膚が大きく避けて血が吹き出し、それを全身に浴びてしまった。
一瞬目に入り視界が染まった。
ブルブルッと身を震わせて血を飛ばし、すぐさま攻撃に移る。
シシーガはフゴフゴと鼻を鳴らしながらも立ち上がろうとしているのだが、腹の傷が効いているようで膝に力が入らないようだ。
『なぁ、ちなみにこいつ、売れる部分はあるのか?』
『シシーガは肉が売れるぞ? 知らんのか?』
うちでは肉として食卓並んでいたのは主にウサータで、たまに野鳥の肉が並んでいたりしていたが、シシーガの肉は出たことがなかった。
貧乏だったから買えなかったのだろうか?
何だか切ない気持ちになってきた。
『睾丸は珍味としても好まれておるらしいな』
『こうっ!?』
切ない気持ちをぶち壊すのには十分すぎる情報だった。
聞かなかったことにしよう。魔物版ドリスの……そんなもんを食べる想像はしたくない!
その後、立ち上がろうと上げた頭を上から猫パンチで何度も叩いていたら、シシーガは事切れた。
それからまたシシーガと戦い、あっさり倒せるようになった頃には朝日が地平線からすっかり顔を出していた。
「狩りをしながら身体強化だな」
「へぇ……それは人間の姿では出来ないことなのですか? 正直申しまして、あのように小さくか弱そうな姿より、今の姿で戦った方が勝機はあるかと思うのですが。魔法もありますし」
「うっ……」
痛いところを突かれてしまった。
『ギースよ、言うてやるな。アースはの、魔法が使えんのじゃ』
「そうだったのですね! これは申し訳ないことを言いました!」
素直に謝罪し、深々と頭を下げるギース。そこいらにいる人間よりも人間が出来ていやしないか!? 中身地龍だぞ!?
「あの姿は猫って言うんだが、あの姿でなら俺は強くなれるみたいなんだよ、魔法がなくても」
「そうなんですね! あの体にしては重い打撃だなとは思いましたが、そういうことでしたか。あの姿はネコと言うのですね」
全く効いていなかったのに……。
「ケルベルースは倒せるようになったんだが、ドスベアーはまだ少しばかり早かったようでなぁ」
「へぇ! あの体でケルベルースを倒せるんですか! それは凄い!」
何だろうか、こいつ、地龍なのに良い奴過ぎないか?
「ケルベルースが倒せるのなら、次は『シシーガ』辺りがいいかもしれませんね。僕より少し小さめの魔物です」
「おぉ、いいね! でも、そんなやつこの辺にはいないからな」
「あっちの方にいましたよ?」
ギースは草原の更に奥の方を指さした。
「ここから数キロほど離れたところにいるのを見掛けましたね」
猫の姿であれば結構近いかもしれない。
ということで猫に変化してギースの指さした方向をひた走った。
空は薄らと明るくなってきており、夜明けが近いようだ。
俺の速度に着いて来れなかったギースは「僕はこの辺りにいますから、どうぞ行ってきてください」と手を振って見送ってくれた。
『あいつ、大丈夫か?』
『この辺りでギースに勝てるものはおらんよ。ガクが来なければ大丈夫じゃろう』
どのくらい走ったのか、空は更に明るさを増し、いよいよ日が上り始めるかという頃、丁度よさそうな魔物を見つけた。
『あれがシシーガか?』
『うむ、あれじゃな』
猪を一回り大きくしたくらいの、土色の皮膚をした魔物が前足と牙を使って土を掘っていた。
口の両端から反り返った牙のような角を生やしており、こめかみにも同様の角が二本生えている。
当然毛はない。
鼻はべチャリと潰れたような形をしていて、何となくずっと見ているとドリスを彷彿としてきてムカムカしてくる。
『腹立たしい顔をしておるの』
どうやらシャンテも同じように感じているようだ。
そいつに狙いを定め、気付かれないように背後を取ると、無防備にさらけ出されている尻にクロス切りをお見舞いしてみた。
「ピギャァァァァァ!!」
尻にはしっかりと切り傷が出来ていて、ドスベアーより皮膚の固さはなくてホッとした。
土に突っ込んでいた顔を上げこちらを振り返ったシシーガを見て、更にムカムカしてきた。
ピンク色の角の取れた三角形のような鼻には土がべっとり付いていて、口の下の肉はタプタプと揺れている。
『好きになれん顔をしておるな』
『魔物版ドリスだな、ありゃ』
『プッ……ククッ……アハハハハ!』
初めてシャンテの笑い声を聞いた。
『似ておる! 似すぎておるわ! あれは駄目じゃ! ドリス、プッ! アハハハハ!』
ツボに入ってしまったのかずっと笑っている。
後ろ足で地面を蹴りながら、頭を下げていたシシーガが一直線にこちらに突進してきたので、それをジャンプでかわしつつ、その背に飛び乗った。
一度走り出すと止まれないのか、大きな木に思い切り激突したシシーガは、背に俺が乗っていることに気付いていないのか、辺りをキョロキョロと忙しなく見渡し始めた。
シシーガに突進された木は激しく揺れ、ボトボトと木の実が落ちてきた。
あの実は『ココッタ』じゃないだろうか? 拾って帰りたい。
『背中に神経走ってないのか?』
『単に知能が足りぬのだろ?』
俺を見失ったと思ったのか、ゆっくりと歩き出したシシーガ。
無抵抗の相手に攻撃を与えるなんてと一瞬思ったが、気付かないシシーガがアホなだけだと、後頭部に猫パンチとクロス切りを打ち込んだ。
さすがに俺に気付いたシシーガは、また醜い叫び声を上げ、ゴロッと寝そべると地面を転がり出した。
既に背中には俺がいないことも気付いていないようだ。本当に色々と残念な魔物である。
ある程度転がると立ち上がって地面を見ているのだが、そこに俺がいるはずもない。
そんなシシーガに駆け寄り腹に猫パンチを連打すると、ドーンと音を立ててシシーガは倒れた。
だが倒れただけでまだ元気はありそうだ。
起き上がるのに時間を取られている間に腹に何度も猫パンチを打ち込みつつ爪を立てる。
最後の爪攻撃で皮膚が大きく避けて血が吹き出し、それを全身に浴びてしまった。
一瞬目に入り視界が染まった。
ブルブルッと身を震わせて血を飛ばし、すぐさま攻撃に移る。
シシーガはフゴフゴと鼻を鳴らしながらも立ち上がろうとしているのだが、腹の傷が効いているようで膝に力が入らないようだ。
『なぁ、ちなみにこいつ、売れる部分はあるのか?』
『シシーガは肉が売れるぞ? 知らんのか?』
うちでは肉として食卓並んでいたのは主にウサータで、たまに野鳥の肉が並んでいたりしていたが、シシーガの肉は出たことがなかった。
貧乏だったから買えなかったのだろうか?
何だか切ない気持ちになってきた。
『睾丸は珍味としても好まれておるらしいな』
『こうっ!?』
切ない気持ちをぶち壊すのには十分すぎる情報だった。
聞かなかったことにしよう。魔物版ドリスの……そんなもんを食べる想像はしたくない!
その後、立ち上がろうと上げた頭を上から猫パンチで何度も叩いていたら、シシーガは事切れた。
それからまたシシーガと戦い、あっさり倒せるようになった頃には朝日が地平線からすっかり顔を出していた。
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