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王都へ
湧水亀
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その後ギースが「僕も釣り、してみたいです!」と言い出したためギースに任せたところ、あっという間に十匹も釣り上げてしまったため、シャッケ釣りはそれにて終了となった。
あまり捕りすぎてもあの女性が困るかもしれないし、生態系も崩れるかもしれないから。
『ちと泉に我を浸してくれんか?』
突然シャンテがそんなことを言い出したため、大丈夫なのかと思いつつネックレスを少し泉に浸してみた。
『ほぅ……おぉ……なるほどの』
何かを納得しているようだが、卵の周りにはシャッケが集まってきているのが見えたので慌てて引き上げた。
「何かあったか?」
『この泉の正体が分かったのよ』
「正体? 何だそれ?」
『この泉、「湧水亀」の巣じゃな』
「何だそいつ? 亀か?」
聞いたことのない名前である。
その後のシャンテの説明を簡単に言うと、湧水亀は魔物である。
だが人を襲う魔物ではなく、二、三年に一度地上に出て餌である「ポリポリ苔」という植物を食べてあとはひたすら巣でじっとしているだけの亀らしい。
その名の通り甲羅からは水が湧き出るため、湧水亀の巣となる場所は池や泉になるそうだ。
『湧水亀から湧き出る水は非常に栄養価の高い水じゃからの。シャッケがここで増えるのも納得じゃ』
泉の水面にボコボコと気泡が浮かび、何かが浮かび上がってくる影が見えた。
『言うてる傍からお出ましじゃの』
水面が盛り上がり現れたのは黒くて楕円形の顔。大きさは人間の顔より少し小さいくらいだ。
「思ってたより小さいな」
『そんなに大きくはない魔物じゃからの。ああやって日に数度空気を吸うために顔を出すのじゃ』
「へぇ」
水面から顔を出し、閉じている鼻の穴がスライドドアのようにパカッと開くと、こちらにまで聞こえる音量の鼻息が聞こえた。
──ブシューーー!
「すげー鼻息」
「大きいですねー。どうなっているんでしょうね。体は水底にあるんですから、首が随分長いのに、よく息が出来ますね」
「いやいや、そんな馬鹿な」
『知らんのか? あやつの首は十メートルほど伸びるのじゃぞ?』
「はぁ!? 十メートル!? いやいや、体、すぐそばにあるんだろ?」
『餌を食う時以外は体を浮上させることはないぞ? 疑うなら水の中に頭でも突っ込んで見てみるがよいわ』
泉はかなりの透明度があるため頭を突っ込めばどうなっているのか見えそうではある。
だがシャンテがこれまで嘘をついてこなかったことは知っているので疑う余地はない。
「疑ってるわけじゃないが、興味はある」
「僕も! 僕も見てみたいです!」
ということでギースと二人、泉に顔を突っ込み水中を見ることになった。
ガバッと顔を突っ込み目を開くと、目の前をシャッケが逃げるように泳いでいくのが見えた。
湧水亀がいた方に視線を向けると、黒っぽい枯れ枝のような長いものが下へ伸びているのが見えた。
『あれが首か!?』
『どうじゃ? 長かろう?』
『いやいや、あんなの首じゃねぇ! 棒じゃねぇか!』
『じゃが、あれが首なのじゃ』
本当にどうなっているんだろうか? あんなに長ければ息を吸ったり吐いたりもとんでもない重労働なのではないのだろうか?
と思っていたら首がグニャッと動き、シュルシュルと縮んで行くのが見えた。
『呼吸が終わったのじゃな』
頭がどんどん水底の方に沈んでいくのが見える。
本当にどうなってるんだ!
「ぷはぁ! ありゃ、どうなってるんだ!?」
「珍しいものが見れましたー!」
『あれの生態は謎なのじゃ』
謎にもほどがあるだろう!
しばらく湧水亀の体の仕組みなどをあーでもないこーでもないと話し合い、昼時になったので泉の畔で昼食を食うことになった。
もちろんメイン食材はシャッケである。
ナイフの背を使って丁寧に鱗を落とし、泉の水で綺麗に洗ったシャッケを三枚におろす。
『手慣れたもんよの』
「綺麗ですねぇ」
オレンジ色の身をしているが、こいつは白身魚だ。赤身魚と勘違いされやすいが、単に身の色にエビやカニなどに含まれる成分と似たような成分が含まれているためこんな色をしているのだと前世の本に書いてあったのを覚えている。
おそらくこっちのシャッケも同じだと思う。
しかし、ここまで新鮮なら刺身で食べたいところである。
この世界にも醤油にそっくりな調味料が存在しており、それは購入済みである。
薄くスライスしたシャッケの身を一切れだけ醤油を付けて口に放り込んだ。
皮側の少しコリッとサクッとした食感も、オレンジの身の部分の柔らかな食感も心地よく、シャッケの身の甘みが口の中に広がりたまらない。
「あ! ズルいです! 僕にもくださいよ!」
『生で食したのか!? 人間が!?』
「シャッケは新鮮なうちは生でも食えるんだよ。かー、美味ぇ!」
シャンテとギースにも醤油を付けたシャッケの身を一切れずつやってみると、「『おかわり!』」と勢いよく言われた。
「そのソースがシャッケと合いますよ!」
『塩気と少しの苦味がある風味豊かな「ショーグ」の汁との相性が抜群よの!』
この世界の醤油に似た調味料とは「ショーグ」という植物の実の汁である。
絞って二週間ほどしか保存が出来ない上に塩気が強いと不人気なのだが、うちは母親が保存魔法を使えたのでたまに買って料理の隠し味として使ったりしていた。
前世では幼くてワサビなんて食べられなかったのだが、今のこの体でならワサビもいけそうだ。
親がワサビを乗せた刺身を美味そうに食っていた姿が思い浮かんできた。
まぁ、そのワサビもこの世界には似たようなものがあるため買っているので、試しに食ってみることにした。
『何じゃ!? 「サビラ」の根なぞ何に使うのじゃ!』
この世界のワサビは「サビラ」という草の根である。その辺に生えていて、主に食用としてではなく防虫剤の材料に遣われている。
ツーンとした辛さが癖になると一部の酒飲みに愛されているようだが、大半の人は食べない。
すり下ろされたものが瓶詰めで売られているのでそれを購入しておいたのだ。
それをほんの少しだけシャッケの刺身の上に乗せ、ショーグを垂らして口に運んだ。
ツーンとした辛さに思わず顔をしかめてしまったが、シャッケの生臭さが消え、サビラの爽やかな辛さの奥からは甘みを感じ、思わず「美味い!」と声が出ていた。
あまり捕りすぎてもあの女性が困るかもしれないし、生態系も崩れるかもしれないから。
『ちと泉に我を浸してくれんか?』
突然シャンテがそんなことを言い出したため、大丈夫なのかと思いつつネックレスを少し泉に浸してみた。
『ほぅ……おぉ……なるほどの』
何かを納得しているようだが、卵の周りにはシャッケが集まってきているのが見えたので慌てて引き上げた。
「何かあったか?」
『この泉の正体が分かったのよ』
「正体? 何だそれ?」
『この泉、「湧水亀」の巣じゃな』
「何だそいつ? 亀か?」
聞いたことのない名前である。
その後のシャンテの説明を簡単に言うと、湧水亀は魔物である。
だが人を襲う魔物ではなく、二、三年に一度地上に出て餌である「ポリポリ苔」という植物を食べてあとはひたすら巣でじっとしているだけの亀らしい。
その名の通り甲羅からは水が湧き出るため、湧水亀の巣となる場所は池や泉になるそうだ。
『湧水亀から湧き出る水は非常に栄養価の高い水じゃからの。シャッケがここで増えるのも納得じゃ』
泉の水面にボコボコと気泡が浮かび、何かが浮かび上がってくる影が見えた。
『言うてる傍からお出ましじゃの』
水面が盛り上がり現れたのは黒くて楕円形の顔。大きさは人間の顔より少し小さいくらいだ。
「思ってたより小さいな」
『そんなに大きくはない魔物じゃからの。ああやって日に数度空気を吸うために顔を出すのじゃ』
「へぇ」
水面から顔を出し、閉じている鼻の穴がスライドドアのようにパカッと開くと、こちらにまで聞こえる音量の鼻息が聞こえた。
──ブシューーー!
「すげー鼻息」
「大きいですねー。どうなっているんでしょうね。体は水底にあるんですから、首が随分長いのに、よく息が出来ますね」
「いやいや、そんな馬鹿な」
『知らんのか? あやつの首は十メートルほど伸びるのじゃぞ?』
「はぁ!? 十メートル!? いやいや、体、すぐそばにあるんだろ?」
『餌を食う時以外は体を浮上させることはないぞ? 疑うなら水の中に頭でも突っ込んで見てみるがよいわ』
泉はかなりの透明度があるため頭を突っ込めばどうなっているのか見えそうではある。
だがシャンテがこれまで嘘をついてこなかったことは知っているので疑う余地はない。
「疑ってるわけじゃないが、興味はある」
「僕も! 僕も見てみたいです!」
ということでギースと二人、泉に顔を突っ込み水中を見ることになった。
ガバッと顔を突っ込み目を開くと、目の前をシャッケが逃げるように泳いでいくのが見えた。
湧水亀がいた方に視線を向けると、黒っぽい枯れ枝のような長いものが下へ伸びているのが見えた。
『あれが首か!?』
『どうじゃ? 長かろう?』
『いやいや、あんなの首じゃねぇ! 棒じゃねぇか!』
『じゃが、あれが首なのじゃ』
本当にどうなっているんだろうか? あんなに長ければ息を吸ったり吐いたりもとんでもない重労働なのではないのだろうか?
と思っていたら首がグニャッと動き、シュルシュルと縮んで行くのが見えた。
『呼吸が終わったのじゃな』
頭がどんどん水底の方に沈んでいくのが見える。
本当にどうなってるんだ!
「ぷはぁ! ありゃ、どうなってるんだ!?」
「珍しいものが見れましたー!」
『あれの生態は謎なのじゃ』
謎にもほどがあるだろう!
しばらく湧水亀の体の仕組みなどをあーでもないこーでもないと話し合い、昼時になったので泉の畔で昼食を食うことになった。
もちろんメイン食材はシャッケである。
ナイフの背を使って丁寧に鱗を落とし、泉の水で綺麗に洗ったシャッケを三枚におろす。
『手慣れたもんよの』
「綺麗ですねぇ」
オレンジ色の身をしているが、こいつは白身魚だ。赤身魚と勘違いされやすいが、単に身の色にエビやカニなどに含まれる成分と似たような成分が含まれているためこんな色をしているのだと前世の本に書いてあったのを覚えている。
おそらくこっちのシャッケも同じだと思う。
しかし、ここまで新鮮なら刺身で食べたいところである。
この世界にも醤油にそっくりな調味料が存在しており、それは購入済みである。
薄くスライスしたシャッケの身を一切れだけ醤油を付けて口に放り込んだ。
皮側の少しコリッとサクッとした食感も、オレンジの身の部分の柔らかな食感も心地よく、シャッケの身の甘みが口の中に広がりたまらない。
「あ! ズルいです! 僕にもくださいよ!」
『生で食したのか!? 人間が!?』
「シャッケは新鮮なうちは生でも食えるんだよ。かー、美味ぇ!」
シャンテとギースにも醤油を付けたシャッケの身を一切れずつやってみると、「『おかわり!』」と勢いよく言われた。
「そのソースがシャッケと合いますよ!」
『塩気と少しの苦味がある風味豊かな「ショーグ」の汁との相性が抜群よの!』
この世界の醤油に似た調味料とは「ショーグ」という植物の実の汁である。
絞って二週間ほどしか保存が出来ない上に塩気が強いと不人気なのだが、うちは母親が保存魔法を使えたのでたまに買って料理の隠し味として使ったりしていた。
前世では幼くてワサビなんて食べられなかったのだが、今のこの体でならワサビもいけそうだ。
親がワサビを乗せた刺身を美味そうに食っていた姿が思い浮かんできた。
まぁ、そのワサビもこの世界には似たようなものがあるため買っているので、試しに食ってみることにした。
『何じゃ!? 「サビラ」の根なぞ何に使うのじゃ!』
この世界のワサビは「サビラ」という草の根である。その辺に生えていて、主に食用としてではなく防虫剤の材料に遣われている。
ツーンとした辛さが癖になると一部の酒飲みに愛されているようだが、大半の人は食べない。
すり下ろされたものが瓶詰めで売られているのでそれを購入しておいたのだ。
それをほんの少しだけシャッケの刺身の上に乗せ、ショーグを垂らして口に運んだ。
ツーンとした辛さに思わず顔をしかめてしまったが、シャッケの生臭さが消え、サビラの爽やかな辛さの奥からは甘みを感じ、思わず「美味い!」と声が出ていた。
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※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
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※カクヨム、なろうでも公開しています
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