荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

文字の大きさ
6 / 105
食いしん坊聖女の里帰り。

そうだ!里帰りしましょう!!

しおりを挟む
(プロセルピナ神殿ねぇ…。)


プロセルピナ神殿。


ルシフェール国の最北端に位置し、別名冬の神殿とも言われ、ルシフェール国の未開の地セラフィエルにある。


常に瘴気で満ちていて住民は住むことも不可能だと言われているほど最も過酷な神殿だ。


そこに配属されれば帰って来れる可能性は限りなく0に近く、帰ってこれたとしても亡骸だったという噂もある。そのため、神殿にいる聖女や神官たちも年老いた者たちか、問題を起こして異動を命じられた者しかいないという。



「ふふ。リース?明日から私達プロセルピナ神殿に異動だってぇ…巻き込んでごめんね。」


先ほどまでの勢いはどこへやら…

少し気落ちした表情で謝るアンネリーゼ。

どうやら巻き込んでしまったことを少し気にしているらしい。


「あぁ~…まっ、楽しそうだしいいんじゃないか。それに、プロセルピナ神殿に行けば父上から小言もなくなりそうだしな。」


アンネリーゼの言葉に軽口で返すケルネリウス。


アンネリーゼの相棒となって4年。


普段は誰よりも強く明るく、前だけを見据えて周りを引っ張っていくような存在であるアンネリーゼだが、自分の事で周りを巻き込む事があると誰よりも気落ちしてしまう。


特にケルネリウスと2人の時はそれが顕著だった。


(まぁ、それだけ俺を信頼してくれているからだと思うが…。)


周りも弱音を吐けるのがケルネリウスだけだと知っているからか、何かあった後は何も言わずに2人だけにするようにしている。



「それに瘴気に満ちた荒れた地なんて夢が詰まってるだろ?研究し放題だし、ここよりも美味い魔物にも出会えるかもしれない。そう考えれば悪いことばかりじゃないさ。」


頭を撫でれば少しホッとした表情を浮かべる。


アンネリーゼも別にプロセルピナ神殿に行きたくなかったわけではない。ただ、周りを巻き込みたくなかったと言うだけなのだ。


ケルネリウスもそれを分かっているからか頭を撫でるだけでそれ以上の事は話さない。


(10歳から大聖女となって働いているんだ。少しくらい甘やかしてもいいだろう。)



(あ~。プロセルピナ神殿に行ったらやりたいこといっぱいあるわね。美味しい食事もそうだし、荒地が改善されたら自分の好きなようにしてもいいかしら。ふふふ…楽しみが広がるわ。考えるだけでヨダレが…ふふふ。)


ケルネリウスの優しさを無下にするかの如く全く別のことを考えていたアンネリーゼだった…。



それからしばらくして落ち着いたのかバッと顔を上げる。


「ありがとう。リース。おかげで少し元気が出たわ!!やっぱり持つべきものは相棒よね。これからも頼りにしているから!!よろしくね、ケルネリウス。」


ケルネリウスの背中をバシバシと叩くと、勢いが強すぎたのか、そのまま前のめりに倒れて勢いよく壁に額をぶつけた。


その衝撃で壁に若干ヒビが入っていたが、明日からここを使うのはレリアだし、さほど気にすることではないだろう。


「あ、あは…あはははは(しまった…勢いつきすぎたわ…)」


ケルネリウスの額からは赤い液体がドクドクと出ていた。


(本当に相変わらずのバカ力だな…。)


ケルネリウスはハンカチを取り出すと慣れた手つきで額にハンカチをあてる。


「…そ、そうだな。元気が出たようで何よりだ。ただ、力加減はもう少し弱めてくれると助かる。プロセルピナ神殿はきっと頑丈な造りではないだろうからな…。」


「す、すみません。以後き、気をつけます。」


遠回しに壊さないように伝えれば、上下に首を動かして返事をした。



そして、それから5分もしないうちに先ほどまでしんみりしていた者とは思えないような明るさで皆が集まっているであろう祈りの間へと向かって歩き出し、そのままの勢いで扉を開けた。


ドカーン!!


大きい音の方を見ればアンネリーゼが立っている。


「…なんだ。いつものことか…」

「良かったわ。いつものアンナに戻ったのね。」

「な、何事!?」


いつもの事だと気にせず掃除を続ける者と、アンネリーゼのいつもと同じ状態をみてホッと胸をなで下ろす者。何事かと言った表情を浮かべる者。



アンネリーゼはそんなことを気にも留めず、入ってくるなり明るい声で想像していた言葉とは違う事を言い出した。



「みんなー、聞いてー!!明日から一ヶ月間、里帰りするわよー!!」



思わぬ一言に…祈りの間にいた人たちは、アンネリーゼに向かって普段より何トーンか低いドスの効いた声を発する。



「「「「「「は!?!?」」」」」」




それもそのはずだ…(何回目か分からない)扉を壊し、それを気にもとめずに話してきた内容が、まさかの里帰りだったのだから、誰だって驚くだろう。



「ふふふ…こういう時くらいしか外に出られないのだし、皆それぞれ里帰りしてちょうだい。プロセルピナ神殿に行ったら最後帰れない可能性もある。だから皆には自分がどうしたいのか、きちんと考えて欲しいの。」


エルネストのことだ。誰が笑っていたかなんてほとんど覚えていないだろう。


一ヶ月という長めの期間にしたのはゆっくり考えてほしいのと、片道一週間くらいかかる人達もいるからだ。


それに明日中に出て行けと言われただけで、いつまでにプロセルピナ神殿に行くようにとは言われていない。


「考えた上で、もし一緒に行ってもいいと思ったらラファリエール領に来てちょうだい。おいしい料理を作っていつでも待っているわ!」



こうして翌日。


アウローラ大神殿にいた聖女や神官は夜のうちに準備を終え、朝早くに里帰りをしたのだった。


まさかアウローラ大神殿がもぬけの殻だとはこの時誰も気づいていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム 前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した 記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた 村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた 私は捨てられたので村をすてる

薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました

佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。 ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。 それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。 義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。 指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。 どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。 異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。 かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。 (※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

無能だと追放された「雑用係」のハル、現代の知恵(ライフハック)を駆使したら、呪われた魔王城が聖域化して伝説の賢者と呼ばれ始めた

ユネ
ファンタジー
「君のような無能な掃除係は必要ない!」 勇者パーティーからゴミのように捨てられた雑用係のハル。だが彼女には、前世で培った【家事のプロとしてのライフハック】があった。 ​移り住んだのは、誰もが恐れる『呪われた魔王城』。しかしハルにとっては、ただの「掃除のしがいがある大型物件」に過ぎなかった! 重曹とクエン酸で呪いを浄化し、アルミホイルで魔物を除け、ジャガイモの皮で伝説の鏡を蘇らせる。 ​魔法より便利な知恵で、お城はいつの間にか世界一快適な聖域に。 一方、ハルを失った勇者たちは、汚部屋と化した拠点と自らの無知に絶望することになり――。 ​これは、一人の「掃除好き」が知恵と工夫だけで異世界に革命を起こし、最高のスローライフを手に入れるまでの物語。

処理中です...