荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

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食いしん坊聖女の里帰り。

ロックバードの唐揚げ。

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里帰りして数日。


ラファリエール公爵家には少しずつ里帰りしていた聖女や神官が集まって来てきた。


「リース。今日こそはロックバードの唐揚げを食べるわよ!」


帰ってきた日にロックバードを調理しようと調理場に向かおうとすれば、父や兄に呼び止められ、会えていなかったこの4年分の話を根掘り葉掘り聞かれていつの間にか日は落ちていたため断念…。


その次の日からも似たような状態が何日か続き…


開放されたのはラファリエール公爵家にポツポツと聖女や神官が集まってきてからだった。



残すところ里帰りの期限まで1週間。


まだ数名の者が来ていないが、来なければ来ないで仕方がないと思っている。


(あとは新人達だけね…でも新人達には酷な所だし…来なくて正解かもしれないわ。)


解体しておいてもらったロックバードを持って調理場に行けば料理長が近付いてきて何かすることはないか確認してきた。


どうやら手伝ってくれるつもりらしい。


ケルネリウスはこの地がどうして瘴気が少ないか興味を持ったらしく、事ある度にイアンのところに行ってしまっていないため、手伝ってくれるのはありがたいのだが…。


物珍しさにどんどん料理人が寄ってくるため、逆に頼まなければ良かったかもしれない。


(これなら一人でやった方が早かったかもしれないわ。)


アンネリーゼが何も無いところから包丁を取り出せばそれが珍しいのか拍手が沸き起こる。


まな板の上に、ロックバードを置けば赤みがかった血色のあるお肉が姿を現す。


「うはぁぁぁぁ(さすがAランクのお肉ね!!)」


声にならない声を上げてお肉をうっとりと見つめるアンネリーゼ。


その姿を見た料理人達は胸をグッと抑えて倒れ始めた。


「「「「(か、か、かわいい~)」」」」


料理人達が心を奪われていることなど気にもとめず、アンネリーゼは包丁でお肉を一口大に切っていく。


「んふふ~ロックバードちゃぁぁ~ん!やっと会えまちたねぇ~。これからおいちーい唐揚げに大変身させてあげまちゅからねぇぇぇ!!ふふふ」



愛おしそうな顔で全てのお肉を一口大に切り終えれば先程よりも瑞々しさの増したお肉に変わっていく。色艶も完璧だ。


料理人たちも普段から食材を目利きしているだけあって、見ただけで味がわかるのか喉の奥をゴクリと鳴らした。



「お、おい、肉がさっきよりも新鮮な色味になっているぞ!!しかもあの弾力…食べなくてもわかるな…」



「あぁ、さっきも美味しそうだったが…今の方が断然美味しそうだ。」


「俺たちの食材への愛が足りなかったのか。赤ちゃんに語りかけるように話せば食材が応えてくれるのかもしれんぞ。」


翌日以降、調理場では体格のいいおじさんたちが赤ちゃん言葉で食材に語りかける姿が多数目撃されたそうだが、誰一人として突っ込むものはいなかった…。


***


包丁を洗って片付ければアンネリーゼよりも大きなボールと調味料が沢山出てきた。





その中に切ったお肉を入れて、お酒に漬け込む。


それから醤油、すりおろしたニンニクとしょうが、隠し味に砂糖をひとつまみ。それと塩麹を入れてよく揉み込んで、数十分置いておく。



のだが、ここで大聖女になった時に授かったもう一つのスキルを発動する。







……



………




「業務用冷蔵庫」


アンネリーゼがそう唱えると目の前に大きな扉が出てきた。


食材や調味料を収納でき冷やしたり凍らせたりすることも出来る。それとなぜか食材の時間を止めたり早めたりすることも出来る優れ物。


調味料などの手に持てるサイズなら無詠唱で出し入れが可能だ。


一つ難点があるとすれば、大きな冷蔵庫ではあるものの魔物をそのまま保管することは出来ないということ。


そして、聖女のスキルとは全く関係なく浄化の機能などもついていないため料理する以外には全く使い道のないスキルだったりする。


巨大なボールを片手で持ち上げて業務用冷蔵庫に入れて漬け込んでいる間に付け合せを作っていく。


「揚げ物といえばキャベツは欠かせないわよね。あとポテトサラダにスープに…ナスが美味しそうだから、ナスの揚げ浸しにしようかしら。」


手を余している料理人たちに食材の下処理をしてもらっている間に、ポテトサラダに欠かせないマヨネーズと、揚げ浸し用の漬け汁を作っていればあっという間に一時間が経っていた。


「さて…とあとはロックバードちゃん達をあげるだけねっ!!」


大きな中華鍋を取り出し、油を入れたら火をかける。


パチパチと油の声が聞こえてきたら下味をつけたロックバードのお肉に片栗粉をまぶして油の中に投入する。


ジュワー!!


パチパチとした静けさから一気にクライマックスへと続くような盛り上がりを見せる中華鍋の中。


その中では今か今かと軽快なステップを踏むロックバードたち。


「んふふ…この音が好きなのよね。まるで油が跳ねて喜びの舞を踊っているようだわ。」


徐々に音が弱まりまたパチパチとゆったりとした音に切り替わる。


お箸で中まで火が通っているのを確認したら取り出し、最後に強火で2度揚げしたら完成だ。


「ロックバードの唐揚げ!!完成よ!!」


味見と称して一つ口に持っていけば、


サクッと言う音とともに口の中がロックバードの肉汁で埋め尽くされた。


「んふ…んふふ…んふふふふふ…」


さすがAランクの魔物と言うだけあって、後味がなくさっぱりと食べることが出来る。また、醤油とニンニクの風味がマッチしていてちょうどいい。


頬を膨らまして言葉にならない声をあげていれば、料理人たちもヨダレを垂らしてやってきた。


何人かに唐揚げを上げればそのまま口に持っていく。


「「「「んふ…んふふ…んふふふふふ」」」」



先ほどと同じような不気味な笑い声が聞こえたと思えば、最後は皆同じようにひとこと「んまぁーい!!」と声を上げて笑った。


そのあとは大人気となった唐揚げはあっという間になくなって
しまったのは言うまでもない。

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