荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

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食いしん坊聖女はプロセルピナ神殿へ行く。

ようこそプロセルピナ神殿へ。

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荒地セラフィエルとラファリエールを繋ぐ大きな扉を開き、足を踏み入れればモワッと重たい空気が身体に纏わり付く。


全員が同じように感じているのか少し顔色が悪い。いくら聖女や神官で瘴気に耐性があるといっても、これだけの瘴気を一気に取り込むには無理がある。


(私やケルネリウスであれば大丈夫だけど…他の聖女や神官はこの空気に順応してからじゃないと先に進むのは無理ね…。)


胸元には十字架のペンダントをつけているが、それだけでは賄えない瘴気の量。


周りを見渡すとたくさんの人骨が転がっているのが見える。


(ひぇーー…リアルホラーだわ…。)

恐らく今まで来た聖女や神官たちのほとんどがこの空気に慣れずにここで朽ち果てたのだろう。



もし生き残っているとするならば、中聖女以上で耐性が強い人や、神官騎士以上の人のはずだ。


「きっと…耐えられなかったのね…。」


アンネリーゼとケルネリウスは周りにある亡骸に鎮魂の祈りを捧げた。


「魂の導き手であるメルクルオス様。冥府の神プルトー様。今一度、彼等を安らかな場所へとお導きください。」


聖女や神官たちも胸の前で手を組み目を瞑った。





……


………



1分くらい黙祷していると、先ほどまでの雰囲気とは打って代わり明るい声でとある言葉を唱えた。


「業務用冷蔵庫!!」



「「「「「(えっ!?今!?!?)」」」」」



瘴気の所為で立っているのもままならない状態の聖女たちも、アンネリーゼの唐突な発言に思わず心の中でツッコミを入れる。


瘴気もそうだが、荒地という未開の土地で夜を迎えるのは正直避けたいところである。


それは、アンネリーゼも同じ考えだ。


そのためにも業務用冷蔵庫を開いたのだが、今のこの状況でそれに気づいているのはアンネリーゼの他にはケルネリウスくらいだった。


「んふふ。やっぱり作っておいて正解だったわね。さっ、今すぐこれを食べなさい!!」


そう言って一人一人に渡すのはキラキラと輝くロックバードのプリンだった。


アンネリーゼの器具は全て浄化機能が付いている。
そのため器具を使って作ったものは浄化作用が含まれるのだ。ただし器具はアンネリーゼが使わなければただの調理器具となってしまうし、浄化機能も無くなってしまう。


(ファンタジー小説で言うところのご都合設定ってやつね!!)


顔色の悪い人達全員にカップに入った小さいプリンを渡せば、今度は両手くらいの大きなボウルを持ってくる。


「んふふー。私はこっちのボウルプリン♪」



「いや、自分だけかい!!」


スプーンですくって口へと運ぶアンネリーゼを見て思わず本音がそのまま口から出てしまっている。


その言葉を聞いたアンネリーゼはスプーンを口に含んだまま首を傾げる。


「んー。皆にもあげたじゃない?ほら早くしないと皆もどんどん悪化するわよ?」


なんで自分だけが言われているのか分からないという雰囲気を出しているが、むしろなぜ気づかないのか。

そっちの方が不思議である。

アンネリーゼが幸せそうに食べ進める姿を見て、プリンをもらった聖女たちもスプーンですくって口に運ぶ。



「「「「「んふふ…おいしい~!!!」」」」」


「でしょぉ~???」


今回は普段のプリンよりも時間をかけて裏ごしをしていた。そのため滑らかさが格段に違った。

それにロックバードの卵だ。普段使っている鶏の卵とは大違い。


もちろん、鶏の卵でも全然悪くはないのだが…濃厚さが全然違った。


口の中に入れた瞬間、「本当に口に入れた?」という感じで溶けてなくなる。


ほどよい甘さに、カラメルソースが合わさればソロの時は一味違った美しいハーモニーが響き渡る。


味わってゆっくり食べていれば、少しずつ身体が軽くなるのがわかった。


「こ、これは?」


アンネリーゼの力を初めて見た人たちは、身体が軽くなっていくのを感じて驚いているようだ。


「ふふ…秘密よ?」


人差し指を口元に持ってきて、ウインクすれば首を縦に振る聖女たち。


別に秘密にしている訳ではないが、力については知っている人が少ない方がいい。

今までどおり、スキル調理器具で使い道のないもの…という認識くらいにしておくのがいいこともあるのだ。


前からアンネリーゼの能力を知っている人達はすぐにここを出発できるようにと準備を始めていた。



そして、それから数時間後…



日が変わる前に、何とかプロセルピナ神殿に辿り着いたのだった。



「えっと…ここがプロセルピナ神殿?な、なんか…魔王とか居そうだけど…。」


瘴気の所為か空は星や月が見えないように暗く、カラスのような鳥の鳴き声と、狼のような遠吠えだけが響き渡っている。


そして目の前に立つプロセルピナ神殿は…


神殿と言うよりも、壊れかけの城にしか見えない。



「あぁ、ここがプロセルピナ神殿で間違いないはずだ…。」



思っていた神殿とあまりに違いすぎたのか皆同じように口を大きく開けて驚いていると、神殿の門がギィーット開き、中から執事のような格好をしたおじいさんがランタンを持って出てきた。


「いらっしゃいませ。ようこそプロセルピナ神殿へ…」


音もなく出てきたおじいさんに「ひぃッ」と声を上げる聖女たち。


「フォッフォッフォ…驚かせてしまったようで申し訳ない。久しぶりのお客さんで驚いてしまいました。ささっ…ここまで遠かったでしょう。中へ入ってお休み下さい。」


門の中に全員が入ったのを確認するとおじいさんがバッタンと扉を閉める。


薄気味悪がって誰一人話さないからか、扉の閉まる音だけがその場に響いていた。
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