荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

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食いしん坊聖女は聖女達のために最高の武器を作る。

あなた達の武器を作りましょうか!

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「折角だし、皆に武器になる物を作りましょうか!」


「「「「……え? 武器……?」」」」


お腹いっぱいにバラモーラを食べ、シルトクレーテの甲羅の上で食休みを兼ねて空を見ながら寝転がっていると、アンネリーゼが唐突に、訳の分からないことを言い出した。


そもそも、聖女は戦わない。


神殿で祈りを捧げるのが基本で、魔物討伐に同行する場合も、せいぜい浄化スキルを使う程度だ。


中聖女以上であれば、長年祈りを捧げることで神からスキルを授かることもあるが、そこに至るには、数年から数十年かかるのが当たり前。


何年祈り続けても、何も授からないことだって珍しくはない。


そして、神から授かるスキルの中で“戦う”系のものを持っている者は一人としていない。


何なら、アンネリーゼだって例外ではなく、授かったスキルは“調理”のためのものだ。浄化機能が付いていたのは、たまたまラファリエール家の血を引いていたから――


それが大きな理由だろう。


「そう! あなたたちも、これから一緒に旅をするつもりなんでしょ? だったら……護身用に一つくらい持っていないと心配じゃない?」


アンネリーゼの言葉に、聖女たちは顔を見合わせてから、ぽつりぽつりと頷き始める。


「確かに……?」


「ずっとシルトクレーテの上にいるというわけにもいかないものね……?」


「アンネリーゼが、ずっとそばにいるとも限らないし……?」


「ここに攻めて来られたらと思えば……?」



少しずつ、聖女たちの表情が引き締まっていく。



「「「…持っていた方が安心かもしれないわね…。」」」


「でしょ? じゃっ! 決まり!!」


聖女たちが声をそろえて頷いた瞬間、アンネリーゼはパチンと指を鳴らしながら、いち早く反応した。


しかし――


武器を持つと言っても、今まで戦ったことのない彼女たちにとって、剣はあまりにも重すぎる。


持っていたところで宝の持ち腐れにしかならないだろう。



「……それで、アンネリーゼの言いたいことは分かったけど? 武器って言っても色々あるじゃない……何を考えているの? 重たいものは持てないわよ?」


エリザベッタの言葉を聞いて、アンネリーゼは空を見ながら少し考える。


ここがウルカヌス火山だと忘れてしまうくらいに、真っ青な空。


澄んだ空気に、熱くも寒くもない、ちょうどいい風が吹いていた。


お腹いっぱい食べたこともあって、瞼が少し重くなってきたアンネリーゼだったが――


あることを閃いて、ニヤリと笑った。


「決めたわ! あなたたちの武器は――包丁よ!!」





……


………


「「「……え? 包丁!?!?」」」


まさかの武器の名前に、聖女たちは一斉に「それ、料理道具じゃないの!?」と心の中で叫んだ。


「えっ? 私の耳がおかしくなった……? 今、包丁って聞こえたような……」


「間違ってないわ……包丁って言ったわよ」


「えぇ……じゃあ、左手には鍋の蓋を持って盾にでもするぅ?」



「「「……それ……面白いわね!?」」」


アンネリーゼの言葉を聞いて、冗談を言い合うだけの余裕を見せる聖女たち。


全く使ったことのない剣を持てと言われたら戸惑ったかもしれないが、いつも使っているものだったからか、そこまで拒否反応は出なかった。


「んふふ……これであなたたちも、立派な包丁使いになれるわね!」


その言葉を聞いていた神官たちは、溜息を吐きながら――


「こいつら、似てきたな……」と心の中でそっと突っ込んだ。




***


アンネリーゼたちが武器作りで盛り上がっていた頃――


王都では、エルネストがアンネリーゼ討伐のための準備を進めていた。


「まだ、集まらないのか!?」


エルネストはイライラした様子で執務室を歩き回り、目の前にいる小柄な男の胸倉をつかみ上げる。


「ひ、ひぃ……も、申し訳ございません……!」


半数以上の騎士たちが団を離れ、故郷へ帰ってしまったことで、補充と再編に時間がかかっていた。



胸倉をつかまれているのは、ジルド・ナベーリス。ナベーリス侯爵家の嫡男であり、宰相の息子でもある。


(できれば、僕もこの騎士団から抜けたかったんだけどな……)


幼い頃からエルネストの側近として仕えてきたジルド。


これまで散々虐げられてきたが、侯爵家の存続のため、仕方なく命令に従ってきた。


そのため今回の件に関しても、まったく乗り気ではなかったのだ。


「お、俺は悪くないんだ! 早く集めないと、王都どころかこの国が大変なことになるんだぞ!? わかっているのか!? さっさと人を集めてこい!!」


エルネストが怒鳴ると、ジルドは逃げるようにその場を後にした。


その後ろ姿を目で追うや否や、目の前の地図を睨みつけると、小さな声でブツブツ呪文のような言葉を吐き出した。


「俺は悪くない…俺は悪くないないんだ…全部……全部、アンネリーゼのせいだ。あいつさえいなければ……俺は今頃、レリアと幸せな時間を過ごせていたんだ……」


プロセルピナ神殿のある場所を指で叩きつけ、手に力を込めて地図をぐしゃぐしゃに握り潰す。


まるでアンネリーゼそのものを押し潰そうとしているかのような勢いだった。


エルネストがアンネリーゼの剣で返って来るなと言われたとき、アウローラ大神殿で好き勝手していたレリアは王城の塔の奥深くに幽閉されていた。


理由は――聖女ではなかったから、である。


最後の最後まで「私は聖女よ!」と叫び続けていたレリアだったがエドワーズ国王は、それを認めることはなかった。


それもそのはずだ。


もし本当にレリアが聖女であったなら――


ここまで瘴気が濃くなることなど、あり得なかったのだから。


「あいつが瘴気を振りまいたんだ。そうでなければ、こんなことにはなるまい……。早く見つけて、あいつを処刑しなければ……」


まるで悪魔に取り憑かれたかのように、同じ言葉を繰り返すエルネスト。


彼は気づいていなかった。


自分が瘴気に耐性を持たないことも――


そのせいで、少しずつ身体が瘴気に蝕まれていることも。



「うひ……おれは……うひ……おれ、おれ、おれ……うひ……うひひひひ、おれ、おれ、お、お、お、おれおれおれは……」


遠くからその様子を観察していたエダンは、静かに呟く…。


「……ついに、この時が来たか」


エドワーズもエルネストも、そればかりかこの国の貴族たちも


ルシフェール国は刻々と破滅の道を進み始めていることに気付いていなかった。


勿論、アンネリーゼもである。



***



「さぁ! 消えない炎と、硬度の高い鉱石を探して――かっこいい包丁をつくるわよぉぉぉぉ!!」



「「「おおおぉぉぉ!!」」」


聖女たちの声が、ウルカヌス火山に響き渡る。


その笑顔の裏で、世界は静かに崩れ始めていた。







***


こんばんわ!

ゆずこしょうです。
いつもお読みいただきありがとうございます。
このお話はここから2部へと突入いたします。
あまり飯テロができていないのが申し訳ないのですが…お話は濃い目のスープになっています。
ファンタジーでしかも暗め…サクッと読める感じでもないですが…。
少しでも読んでくださる皆さんがいることでが何よりうれしいです。
ここまで長い長編は初めてなのですが、ぜひお楽しみいただけますと幸いです。
そして大変申し訳ございませんが…2話は更新しますが3話できる時出来ないときがあるのでご了承ください。
その分文字数多めです><
それでは引き続きよろしくお願いいたします。


ゆずこしょう


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