荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

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食いしん坊聖女の帰還と迫る影

おかえりアンナ!神殿が揺れる大混乱の帰還劇

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「みんな~!!ただいまぁぁぁ~~!!」


果樹の都バック―スから数日――


アンネリーゼたちはプロセルピナ神殿へ戻ってきた。


行きはネプリヌス海に着くまでかなり時間がかかったが、シルクトレーテのおかげで帰りは驚くほど早かった。


「えっ!? アンナの声が聞こえた気がするんだけど……」


「アンナの声ってまさか~。空耳よぉ……」


「でも、私も聞こえたわ!」


「わ、私も……」


聖女たちは顔を見合わせ、半信半疑で耳を澄ませた。


まだ姿は見えない。しかし、確かに“アンナの声”だけが届いてくる。


「……ねえ、なんか……森が近づいてきてない?」


「森が近づくって何よ! 森は動かないでしょ!」


「でもほら、木々がざわざわして……まるで歩いてるみたい!」


ざわり、と枝葉が大きく揺れ、森が神殿へ迫ってくるように見える。


「や、やっぱり!! 森がこっちに近づいてるわ!! ま、魔物だったら……」


「アンナも帰ってきてないのに……?」


不安が走り、数人が息を呑んだのがわかる。


「で、でも……私たちが戦うしか……!」


「そ、そうよ!! 今こそ特訓の成果を見せるチャンスよ!」


慌てて武器になりそうなものを取りに走り、包丁や鍋の蓋を構えた。


「き、きなさいっ! 私たちが相手よ!」


「絶対、この神殿は守ってみせるわ!」


震える手とは裏腹に、その表情が近づいてきている魔物に向けられている


しかし――。


あと数歩で神殿にぶつかりそうになったところで、大きな魔物はピタリと動きを止めた。


中から、ぴょーんと軽く飛び降りるアンネリーゼ。


「みんな! ただいまぁぁぁ~~!!」


「「「「えっ!? アンナ……!?」」」」

「そう、一応大聖女やってます! アンネリーゼ・ラファリエールです~!そして、こっちは仲間になったシルクトレーテ!」


手を振りながら大きな魔物の背から降りてくるアンネリーゼ。まるで当たり前のように、その巨体をぽんぽん叩きながら紹介した。


しかもその“シルクトレーテ”は――
この国で知らぬ者はいないほど語り継がれる、伝説級の魔物だった。


「えっ!? シルクトレーテ!?!?」


聖女たちは呆然と固まる。


その反応に応えるように、シルクトレーテの木々がざわざわと揺れた。


その間に、一緒に旅をしていた仲間たちが次々とシルクトレーテから降りてきた。ケルネリウス、エリザベッタ、キャスバル、そしてメメント・ムーンとメメント・ソレイユ。


「「「ただいま~!」」」


その調子の良い挨拶に、聖女たちは目を丸くして口をぱくぱくさせた。


そして次の瞬間――。


「「「「「「えぇぇぇぇぇ~~~~!!!! どういうことぉぉぉ!?!?!?」」」」」」


シルクトレーテと邂逅していた面々の叫びが神殿中に響き渡る。


その声に、

カン、カン、カン――!

フライパンをおたまで叩く金属音が、神殿の静寂を破った。


「うるっさ~~~い! いつもいつも……ここは神殿よ!? もう少し静かにしてって……って、アンナ!?」


夕飯の支度中だったのだろう。フライパンを片手に飛び出してきたアレットは、アンネリーゼの姿を見て固まった。


それから、


「何ごと!?」


「うるさいわねぇ……ってアンナじゃない!」


「えっ!? うそ!! アンナが帰ってきたの!?」


「おかえりぃぃぃ~! 遅かったわね~~~!!」


「ちょっと! 鍋焦げるから早く説明してよ!」


「アンナ、果物のお土産ある!? でしょ!? あるでしょ!?」


「ねぇねぇ! 旅の話聞かせて! 魔物と戦ったんでしょ!? ねぇねぇ!!」


神殿中の聖女や神官たちが次々に押し寄せ、質問とツッコミの嵐が飛び交う。


その賑やかさは、まるで祭りのように神殿全体を包んだ。


アンネリーゼは思わず笑みをこぼした。


(シルクトレーテとの旅もよかったけど……やっぱりここが一番落ち着くわね。)


見慣れた風景、騒がしいほど温かな仲間たち。その全てに胸がじんわり熱くなった。


「アンナ……」


小さく名前を呼ぶ声。振り向くと、姉のように慕うアレットが彼女を見てほほ笑む。


「アレット……」


二人の間に静寂が落ちる。


周囲のざわめきがふっと遠のき、ほんの一瞬だけ世界が止まったように感じられた。


そしてアレットは、堪えきれずにアンネリーゼの元へ駆け寄り、ぎゅっと抱きしめた。


「遅かったじゃない……このバカ……!」


その声は怒りではなく、涙をこらえた愛しさに満ちていた。


「ふふふ……ごめんねぇ~。いろいろ寄り道していたら遅くなっちゃったわ。」


アンナが優しく笑うと、アレットの肩が小さく震えた。


久しぶりの抱擁は、旅の終わりを告げる鐘の音のように、静かに神殿の空気を満たしていった。


そして聖女たちもその様子を見守りながら、そっと息を呑んだ。


「……よかった……」


誰かが小さくつぶやいた。

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