荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

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食いしん坊聖女の帰還と迫る影

宴の始まりはアンネリーゼの合図で!

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「皆も揃ったことだし、宴をしましょう~!」


パンッと手を叩いたアンネリーゼの声が神殿に響く。


その瞬間、聖女たちや神官たちの顔がぱっと輝いた。


「「「「宴!?!?」」」」


宴という言葉に皆が反応する。その姿は一緒にいなかった時間をあっという間に埋めてくれる呪文のような言葉のようにも見えた。


「宴ってことは…アンナのごはんが久しぶりに食べられるわね!?」

「アンナ達がいなかった一年はずっと豪快な料理がなかったものね…」

「そうそう~…やっぱりこれがないと、この神殿は締まらないわよね??」

「ね~!!今日はどんなものが食べられるかしら…」


留守番組の面々が目をキラキラさせながらアンネリーゼの方を向けば声をそろえて――


「「「「アンナ特性の魔物料理!!」」」」


その言葉を聞いて一瞬静寂が訪れる。


そして次の瞬間――


神殿中がどよめいた。



「「「「うぉぉぉぉ~~~」」」」


「久しぶりにアンナの料理が食べられるぞぉぉ~!!」


「肉だぁぁぁ~~!!肉がくえるぅぅぅ~~!!」



神殿内にいたはずの人や、ここを統括する大神官までもが外へと出てきて泣きながらアンネリーゼを見ていた。


それは感動の再会の涙…


ではなく、ただただアンネリーゼの食事が食べられるという嬉し涙だった。


そんな姿を見た、ケルネリウスはこめかみを抑えながら溜息を吐く。


「はぁぁぁ~…お前らもう少し静かにしてくれ。」


ケルネリウスの言葉が聞こえていたのか、神官たちが彼に詰め寄る。


「それは無理だ!!この一年どれだけ我慢してきたと思っている。」


「そうだそうだ!この一年…毎日野菜生活だったんだぞ。たまに出た肉だってな…アンナが作る料理とは全然味が違うんだ。」


「カチカチの焼きすぎた肉に、瘴気が抜けきっていないためか苦みが残っている…」


「それだけじゃない…秘伝のたれがないのもでかかったな…」


「あぁ~…俺もついていけばよかったって何度思ったことか…」


遠い目をしながらこれまでの一年を思い出す神官たち。

その姿をみたケルネリウスは少しばかり同情する。


誰もがアンネリーゼのつく料理に魅了され、その味を忘れられないでいる。

しかし、魔物がおいしく食べられるのもアンネリーゼの浄化付き調理道具スキルがあってこそ…。


「…全く…お前たちはアンナの料理がないと生きていけないのか…?」


「あぁ~…もう無理だな。あの味を知ってしまえば同じこと思うはずだ!」


ケルネリウスの言葉に誰かが話を続ける。

そしてその言葉に同意するように全員が同じリズムで首を縦に振った。


(こわッ…)

あまりに揃っている動きに一瞬鳥肌が立つ。


そんな皆の姿をみて、アンネリーゼはクスクスと笑った。


「ふふ…そんなに皆が私の料理を待っていてくれたなんて!これは腕に腕を振るうしかないわね!」


「それを言うなら腕によりをかけてだろ…?」


「…あら、そうだったかしら?まぁ、いいのよ。なんとなくニュアンスでつながれば…」



二人の掛け合いをみてまたもやどっと沸きあがる。

そして皆が同じことを思った。


((((あぁ~やっぱりこの二人の掛け合いがないと始まらないな…。))))


それを横目で見ながら、アンネリーゼは業務用冷蔵庫からたくさんの魔物を出していく。


クラーブンから始まり、イグナ・ヴァルスまで。


そして…バック―スでとったお酒の入った樽まで出てきた。


「お、おい!あれは酒じゃないか!?」


「まさか~あれは高級品だぞ?貴族ですら簡単に手に入らないというのに…」



その言葉にアンネリーゼは「ふふん」と胸を張る。


「今日はお酒つきよ~!幻のお酒を取ってきたんだから楽しみにしててね!私も~ふふここまで飲まずに我慢してきたから楽しみだわ~!」


そういうとアレットがアンネリーゼに近づいていくと頬を引っ張った。


「お酒はしまいなさい!あなた…まだ成人していないでしょう!?」


「い、いひゃい…」


「わかったわね?あなたが成人するのを楽しみに待っている人もいるのよ?それまではお酒はなし!神殿の皆も許してくれるわよ…ね!?」


アレット言葉に威圧たっぷりの言葉に皆が頷く。


そしてその空気を変えようと誰かひとりが皆に聞こえる声で続けた。


「それじゃあ宴の準備だぁぁぁ~!」


「「「「「うぉぉぉぉ~!」」」」」


聖女たちがわぁっと走り出し、神官たちも慌ただしく机や椅子を並べ始める。


神殿はまるで戦場のような熱気に包まれ、笑い声と歓声が絶え間なく響いた。


アンネリーゼはその光景を見て、ふっと微笑む。


(やっぱり…この賑やかさが一番落ち着くわね。)


アンネリーゼが袖をまくり、まな板と包丁を手に取ると――


「よーし、みんな! 今日は山ほど作るから覚悟してね!!」


その明るい宣言と同時に、聖女たちが一斉に動き出した!


「火は私が起こしましょう。」


「テーブル広げろー! 全員ぶん盛るぞー!」


「ケルネリウス様は秘伝のたれ担当ですよね!!!」


「私は何故いつもたれ担当なんだ!!」


ドタバタと走り回る音、
机の脚が床を滑る音、
神官たちの活気のある声。


――プロセルピナ神殿は、久しぶりに“生き返った”。


そしてアンネリーゼはその姿を見ながら何を作ろうか考える。


(せっかくのパーティーだもの。ピザにパスタ…それにパエリアなんかも作ろうかしら!)


目の前にある魔物たちをどう調理するか決まれば、調理器具を取り出して早速料理を始める。


「ふふっ、全部美味しくしてあげるからね~♪」


その微笑みに、ケルネリウスが思わず息を飲んだ。

(……やっと戻ってきたな、この空気が)


そんな穏やかな瞬間の中で――


誰も気づいていなかった。


神殿の外の風は、


ほんのわずかに“冷たさ”を帯び始めていることに。
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