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終焉の王都と食いしん坊聖女の決断。
魔王誕生とアンネリーゼの決意。
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「っと、その前にそれより少し前の話をしようか。」
――1か月前、王都
『フはハはハははははハハは……王城に戻ルゾ。僕ガ……こノ国ノ王となル。』
その日、王都中に“人ではない何か”の笑い声が響いた。
まるで世界が息を止めたように、音がすべて止む。
(……ついに、ここまで来たか。)
イザークは、変わり果てたエルネストを見つめながら静かに息を吐く。
王都にはもう「人間」はいない。
Sランク級の魔物が通りを我が物顔で歩き、鎧を纏った“元”兵士・騎士たちは、二本の角を生やし、赤黒い瞳をぎらつかせる。
エルネストと同じ二重に濁った声で、低く囁いた。
『お前ハ……ニんゲン……?』
視線が合った瞬間、襲いかかってこようと身を乗り出す魔人。
イザークは一息で建物の影に飛び込み、呼吸を殺した。
(……もう、騎士ではないな。)
冷静を装っていても、右手は震えていた。
瘴気に蝕まれながらも、
その震える手で――
イザークはただ、事実を紙に刻み続けた。
『皆ノ者!よォーく聞ケ。今日カら私がこノ国の王ダ。王城を奪還スルぞ!』
『『『『仰せノマまに…。』』』』
イザークが何も言わずに聞いていれば、エルネストが魔人となった者たちを引き連れて王城へと戻っていった。
そして王城に着くなり、エルネストは自分の父であるエドワーズに剣を向けた。
『エルネストか。アンネリーゼはどうした?みつかった…ってお前…どうしたその姿…。』
エドワーズは扉が開いたことに気付いていたが、背を向けて話しかけていたためエルネストの変貌に気付いていなかった。
そして振り返った瞬間、彼の頭に角が生え、目が赤くなっていることに気付いた。
『ウ、ウ、うるサイ!スすス全てハオ前のせいだ!お前ハ、こノ国ノ王に相応しクなイ。今なら殺サずにおいてやろう。ここから出てイくカ、こノ場で亡き者トなるか…好キな方を選ばセてやル』
エドワーズは、信じられないものを見るように目を見開いた。
『……お前は、誰だ?』
その問いに、エルネストは嗤った。
『ダレでもなイ……僕ガ……王だ。今日カら。』
その一言のあと――
床を走る“瘴気”が、まるで意思を持つ生き物のように蠢き、王城の石壁を黒く染めていった。
(……終わったな。)
イザークはその光景を、ただ物陰から見届けるしかなかった。
「……その直後、追放されたエドワーズ陛下と王妃は我が領地へ逃れ、今は離れに保護している」
「保護ですか……優しいですね。」
「まぁ、下手に外に出しては面倒なことになりかねないからな。そして、一か月前の出来事から一週間――時期で言えば、ちょうど“三週間前”だ。その頃、王都に稲妻が落ちた。」
その稲妻はまるで、“新たな王の誕生”を告げるかのように空を裂いて落ちたのだった。
三週間前――
ゴロゴロゴロピシャーーーー!!!
『な、なんだ!?』
『いま、王都の方から聞こえましたね…』
ダミアンとイアンが急いで王都の方を見ればそこには見慣れないほど大きな稲妻が何個も落ち、空は雨雲よりもサラン暗い状態になっていた。
『よ、夜…ではないですよね…?』
『あぁ、こっちは晴れている。恐らく…王族が何かしたんだろうな。』
その頃、王城では新たな王が誕生していた。
『フハハはハはハハはハはハハはハは!! 今日カらぼ、僕ガ王だ!』
その隣にはレリア・ゴモリーが立っている。
(なんだ…あれは…。人か…!?)
レリア・ゴモリーにも立派な角が二本……だがイザークが息を呑んだのは、角ではなかった。
レリアの“雰囲気”そのものが、すでに人ではなかった。
レリアは聖女らしい柔らかな微笑みを浮かべているが、その瞳の奥は井戸の底のように乾いていて、人間という生物への興味すら感じられない。
ふわりと揺れた白いドレスの裾は黒色に変わり、彼女の中の瘴気そのものがドレスの色を黒く変色させているように見える。
(いや違うな…と、言うことは元から、聖女ではなかったということか……)
イザークは目を細めて観察する。
聖女であれば、瘴気に多少の耐性はあっても、“わずか一週間”で魔人となるはずがない。
いくら魔人化したエルネストの側にいたとしても――あまりに早すぎる。
(いや……元から魔人化していたのか?角を隠す術でも持っていたとすれば……)
イザークがじっと見つめたその瞬間、レリアの視線がぴたりとこちらを捕らえた。
まるで、人間を人間として見ていない“無機質な目”だった。
そこには恐怖も怒りもなく、ただ“自分より下位の存在がそこにいる”ことを確認するだけの、冷たい光だけが宿っている。
(あれは……エルネスト以上に危険だ)
空気がひやりと冷え、鉄錆の甘い匂いが王座の間に広がる。
次の瞬間、レリアの足元から黒い百合の花がふくりと膨らむように咲き、花弁がぬめりを帯びながら、床を侵食するように広がっていった。
石床の白が、黒へと染まっていく。
(……ここはもう、人の住む場所ではない)
イザークは震える手で、その光景を書き残すしかなかった。
――これが、三週間前の王都だ。
「……これが、イザークが最後に書き残した報告だ。」
「そうですか。」
アンネリーゼのはダミアンの話を聞いても淡々と受け答えをする。
その表情は王都の様子を重く受け止めている様子は見られない。
「驚かないのだな。」
「驚くも何も…想像していた通りだったので…。それでイザークは…?」
「イザークは逃げているはずだ。そのあたりは抜かりない。」
「ならいいのですが…」
アンネリーゼは少しまつげを揺らし、ほっとした表情を浮かべる。
(変わったな…。)
今までであれば人を巻き込むことはしても心配するそぶりすらなかったアンネリーゼ。
なんでも一人でこなせてしまうが故に、周りの感情に疎かった。
そんなアンネリーゼを見てダミアンはほっと息を吐いた。
皆の間に一瞬静寂が訪れる。
風がそよそよと流れ、まるで王都で起きていることが嘘のような緩やかな時間。
その静寂を切ったのはアンネリーゼだった。
「…それで、ここからが本題ですが、王都をどうするか…ということですよね?」
その言葉を聞いた瞬間、皆の顔が引き締まった。
「正直、王都を助ける義理はない。しかも領民たちも皆非難が完了しているんですよね?」
「あぁ…そうだ。」
「ですが…このままでいいとも思っていないのがお父様たちの考え。そして、エルネストは私を所望している…と、言うことですね。」
今まで話したことを簡単にまとめるとアンネリーゼは少し考えてから答えを出した。
「うん…私的にエルネストはどうでもいいんですよねぇ~。ただ、私が厄災?災厄?って言われているのが気に食わないです!なので、王都に行って物申してやろうと思います!」
(((えっ!?!?そこ!?!?)))
今まで黙っていた人たちも思わず心の中で突っ込む。
「それに…S級の魔物がいっぱ~いいるんですよね?だったら…ふふ…食べないのは損じゃないですか!!」
アンネリーゼの言葉に皆の動きが一瞬止まる。
そして次の瞬間――
どっと笑いが起こった。
「あはははははは!!!さすが杏菜だね!」
オリザールスの言葉に続くように、シルクトレーテは笑う。
「そうじゃのう!杏菜はどこまでいっても杏菜だのぉ~。」
ケルネリウスも口を頑張って抑えているところを見ると笑いを耐えているらしい。
「そ、そうだな…うまい魔物を食いに行こう。それに、兄貴を止めなきゃならないしな…。」
三人の言葉を聞いた瞬間、アンネリーゼの目が輝く!
「じゃぁ~決まりね!!明日の朝一!出発するわよ~!!」
――1か月前、王都
『フはハはハははははハハは……王城に戻ルゾ。僕ガ……こノ国ノ王となル。』
その日、王都中に“人ではない何か”の笑い声が響いた。
まるで世界が息を止めたように、音がすべて止む。
(……ついに、ここまで来たか。)
イザークは、変わり果てたエルネストを見つめながら静かに息を吐く。
王都にはもう「人間」はいない。
Sランク級の魔物が通りを我が物顔で歩き、鎧を纏った“元”兵士・騎士たちは、二本の角を生やし、赤黒い瞳をぎらつかせる。
エルネストと同じ二重に濁った声で、低く囁いた。
『お前ハ……ニんゲン……?』
視線が合った瞬間、襲いかかってこようと身を乗り出す魔人。
イザークは一息で建物の影に飛び込み、呼吸を殺した。
(……もう、騎士ではないな。)
冷静を装っていても、右手は震えていた。
瘴気に蝕まれながらも、
その震える手で――
イザークはただ、事実を紙に刻み続けた。
『皆ノ者!よォーく聞ケ。今日カら私がこノ国の王ダ。王城を奪還スルぞ!』
『『『『仰せノマまに…。』』』』
イザークが何も言わずに聞いていれば、エルネストが魔人となった者たちを引き連れて王城へと戻っていった。
そして王城に着くなり、エルネストは自分の父であるエドワーズに剣を向けた。
『エルネストか。アンネリーゼはどうした?みつかった…ってお前…どうしたその姿…。』
エドワーズは扉が開いたことに気付いていたが、背を向けて話しかけていたためエルネストの変貌に気付いていなかった。
そして振り返った瞬間、彼の頭に角が生え、目が赤くなっていることに気付いた。
『ウ、ウ、うるサイ!スすス全てハオ前のせいだ!お前ハ、こノ国ノ王に相応しクなイ。今なら殺サずにおいてやろう。ここから出てイくカ、こノ場で亡き者トなるか…好キな方を選ばセてやル』
エドワーズは、信じられないものを見るように目を見開いた。
『……お前は、誰だ?』
その問いに、エルネストは嗤った。
『ダレでもなイ……僕ガ……王だ。今日カら。』
その一言のあと――
床を走る“瘴気”が、まるで意思を持つ生き物のように蠢き、王城の石壁を黒く染めていった。
(……終わったな。)
イザークはその光景を、ただ物陰から見届けるしかなかった。
「……その直後、追放されたエドワーズ陛下と王妃は我が領地へ逃れ、今は離れに保護している」
「保護ですか……優しいですね。」
「まぁ、下手に外に出しては面倒なことになりかねないからな。そして、一か月前の出来事から一週間――時期で言えば、ちょうど“三週間前”だ。その頃、王都に稲妻が落ちた。」
その稲妻はまるで、“新たな王の誕生”を告げるかのように空を裂いて落ちたのだった。
三週間前――
ゴロゴロゴロピシャーーーー!!!
『な、なんだ!?』
『いま、王都の方から聞こえましたね…』
ダミアンとイアンが急いで王都の方を見ればそこには見慣れないほど大きな稲妻が何個も落ち、空は雨雲よりもサラン暗い状態になっていた。
『よ、夜…ではないですよね…?』
『あぁ、こっちは晴れている。恐らく…王族が何かしたんだろうな。』
その頃、王城では新たな王が誕生していた。
『フハハはハはハハはハはハハはハは!! 今日カらぼ、僕ガ王だ!』
その隣にはレリア・ゴモリーが立っている。
(なんだ…あれは…。人か…!?)
レリア・ゴモリーにも立派な角が二本……だがイザークが息を呑んだのは、角ではなかった。
レリアの“雰囲気”そのものが、すでに人ではなかった。
レリアは聖女らしい柔らかな微笑みを浮かべているが、その瞳の奥は井戸の底のように乾いていて、人間という生物への興味すら感じられない。
ふわりと揺れた白いドレスの裾は黒色に変わり、彼女の中の瘴気そのものがドレスの色を黒く変色させているように見える。
(いや違うな…と、言うことは元から、聖女ではなかったということか……)
イザークは目を細めて観察する。
聖女であれば、瘴気に多少の耐性はあっても、“わずか一週間”で魔人となるはずがない。
いくら魔人化したエルネストの側にいたとしても――あまりに早すぎる。
(いや……元から魔人化していたのか?角を隠す術でも持っていたとすれば……)
イザークがじっと見つめたその瞬間、レリアの視線がぴたりとこちらを捕らえた。
まるで、人間を人間として見ていない“無機質な目”だった。
そこには恐怖も怒りもなく、ただ“自分より下位の存在がそこにいる”ことを確認するだけの、冷たい光だけが宿っている。
(あれは……エルネスト以上に危険だ)
空気がひやりと冷え、鉄錆の甘い匂いが王座の間に広がる。
次の瞬間、レリアの足元から黒い百合の花がふくりと膨らむように咲き、花弁がぬめりを帯びながら、床を侵食するように広がっていった。
石床の白が、黒へと染まっていく。
(……ここはもう、人の住む場所ではない)
イザークは震える手で、その光景を書き残すしかなかった。
――これが、三週間前の王都だ。
「……これが、イザークが最後に書き残した報告だ。」
「そうですか。」
アンネリーゼのはダミアンの話を聞いても淡々と受け答えをする。
その表情は王都の様子を重く受け止めている様子は見られない。
「驚かないのだな。」
「驚くも何も…想像していた通りだったので…。それでイザークは…?」
「イザークは逃げているはずだ。そのあたりは抜かりない。」
「ならいいのですが…」
アンネリーゼは少しまつげを揺らし、ほっとした表情を浮かべる。
(変わったな…。)
今までであれば人を巻き込むことはしても心配するそぶりすらなかったアンネリーゼ。
なんでも一人でこなせてしまうが故に、周りの感情に疎かった。
そんなアンネリーゼを見てダミアンはほっと息を吐いた。
皆の間に一瞬静寂が訪れる。
風がそよそよと流れ、まるで王都で起きていることが嘘のような緩やかな時間。
その静寂を切ったのはアンネリーゼだった。
「…それで、ここからが本題ですが、王都をどうするか…ということですよね?」
その言葉を聞いた瞬間、皆の顔が引き締まった。
「正直、王都を助ける義理はない。しかも領民たちも皆非難が完了しているんですよね?」
「あぁ…そうだ。」
「ですが…このままでいいとも思っていないのがお父様たちの考え。そして、エルネストは私を所望している…と、言うことですね。」
今まで話したことを簡単にまとめるとアンネリーゼは少し考えてから答えを出した。
「うん…私的にエルネストはどうでもいいんですよねぇ~。ただ、私が厄災?災厄?って言われているのが気に食わないです!なので、王都に行って物申してやろうと思います!」
(((えっ!?!?そこ!?!?)))
今まで黙っていた人たちも思わず心の中で突っ込む。
「それに…S級の魔物がいっぱ~いいるんですよね?だったら…ふふ…食べないのは損じゃないですか!!」
アンネリーゼの言葉に皆の動きが一瞬止まる。
そして次の瞬間――
どっと笑いが起こった。
「あはははははは!!!さすが杏菜だね!」
オリザールスの言葉に続くように、シルクトレーテは笑う。
「そうじゃのう!杏菜はどこまでいっても杏菜だのぉ~。」
ケルネリウスも口を頑張って抑えているところを見ると笑いを耐えているらしい。
「そ、そうだな…うまい魔物を食いに行こう。それに、兄貴を止めなきゃならないしな…。」
三人の言葉を聞いた瞬間、アンネリーゼの目が輝く!
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