久々に実家に帰ったら、俺にはライオンの様に凶暴な義妹が出来ていました。父「ごめん、言うの忘れてた。俺再婚した^_^」俺「◯ね」

ゆうらしあ

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第5章 なんでもない!

第48話 初めての後夜祭

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「うっ……調子に乗って走らなければ良かった…」

 俺が横っ腹を抑えながら学校に着くと、もう既に後夜祭の目玉であるキャンプファイヤーは始まっていた。

 高校時代は来る事のなかった後夜祭。
 夜の学校、部活が終わる頃にはよく見てた光景。それに見た事のない物が合わさる。
 それを大学生になった今見ると、懐かしい物には見えない。何か変な感じだ。

「っと、それよりも葵は……」

 懐かしさを感じている暇はないと、世理はキャンプファイヤーの近くまで寄る。

 しかし、何分か探すが葵は見つからなかった。

「どこに行ったんだ?」
「あ、葵のお兄さん」

 困っていると、環ちゃんが視界の隅から手を振って現れる。

「環ちゃん、お疲れ様」
「お疲れ様で~す、来ないかと思ってたんですけど、来たんですね」
「まぁ、ね。ちょっと色々あって…それよりも葵が何処に行ったか分かる?」

 俺が聞くと、環ちゃんは少し言いづらそうに頰を掻く。

「あー……まぁ、分かります」
「どうしたんだ?」
「いえ…取り敢えず葵は学校の中に入って行きました。詳しくは分からないですけど」

 なるほど…

「分かった、ありがとう」
「え、あ、ちょっと!」
「うん?」
「あ………いや、何でもないです。卒業したからって廊下は走っちゃダメですよ」

 おー、まさかそんな事を注意されるとは。

「了解」

 世理は敬礼すると、早歩きで学校の中へと向かった。それを見送る環の眉は、八の字に歪められていた。





 昇降口から中へ入ると、文化祭の残骸が俺を迎え入れる。
 フワフワな造花、教室に付けられた看板、廊下に落ちた紙吹雪。
 何故だか心に穴が空いた様な、何かがこぼれ落ちたかの様な虚しい気分になる。

 そんな懐かしさと空虚さを感じながら、世理は辺りを見回っていく。

「……ちょっとこれは、中々見つけられなくね?」

 学校に誰もほぼ人が居ないとは言え、風嶺高校は6階建で、此処らへんでは中々大きい高校の1つでもある。

 此処を走らないで探すとなると、結構な時間が掛かってしまうだろう。

(やっぱり少し走って探すか…)

 そう思った瞬間。向かいの棟の窓。真っ暗な中、何かが動いた様な気がした。

(あそこは確か……)


 ***


「ごめん、こんな所まで」
「別に良いよ。高波君、改めてお疲れ」
「あ、う、うん! お疲れ!!」

 そこは学校でも中々人が来ないであろう、美術室の中。2人は近くにある背もたれのない椅子へと座り、来る途中に買ったジュースの缶を開けた。

「ふぅ~……取り敢えずこれで終わったね」
「え、あ、あぁ」

 会話が続かない、気まずい空気だ。

 環と喧嘩していた時とは違う、自分の行動に後悔している様な事はない。だけど相手の気恥ずかしさに当てられ自然になれない。

「み、神輿以外は上手く行ったみたいでーー…」
「うん…そうだね」

 少し堅い雰囲気が、高波君の口調に現れている。

 あぁ、何かもう……

「あのさ、高波君」
「え?」
「何か用があって私を此処に連れてきたんじゃない?」

 私がそう言うと、高波君はあからさまに動揺した様子だった。
 でも、このまま無駄な話を進めても仕方ない。

「あ、その、実はそうなんだ……」

 そう言うと、流星は緊張から手持ち無沙汰になったと感じたのか、机の上にある缶ジュースを両手で握り締める。

 そして、大きく深呼吸をした。



「俺、やっぱり神原さんの事が好きだ」



 流星は自分で顔が赤くなっているのを感じながらも、ゆっくりと話す。

「最初は容姿が好きで告白したんだけど…文化祭実行委員を一緒にやって神原さんの事が一層好きになったって言うか、人が見てない所で頑張ってたり、暴虐姫って呼ばれてるのに本当は優しい所とか…兎に角もっと好きになったんだ! 良かったら付き合って下さい!!」

 高波君は、それは本当に、神に願うかの様に顔を伏せながら言った。


 前とは違う、本気さが伝わってくる。


 だけどーー


「ありがとう。でも、ごめんなさい。実は私、今恋とかそう言うのに興味がないの」
「…………そ…っかぁ」

 高波君は私の言葉を噛み締めるかの様に間を開け、天井を仰いだ。

「高波君には、私よりも相応しい人が居ると思う」
「そう、かな」
「うん」

 短くも、私も返事を返す。だけど、段々それを無くなって行く。

「……態々ありがとう。此処まで来てくれて。そろそろキャンプファイヤーも終わるだろうし、俺、もう行くわ……」

 流星は、少し半笑いで美術室から出て行った。

「………ふぅ~っ」

 廊下から聞こえて来る、少し早めの足音が遠くなっていく中、一気に緊張と疲れが体に現れる。

 癒しを求めるかの様に、葵は窓際へとキャンプファイヤーを見に近づく。

 ユラユラと炎が、周りの影が揺れる。
 窓を開ければ先程までしていた絵の具の様な特有な匂いが、木を燃やした煤けた匂いに変わる。

「何で私の事なんか……」



 ガタッ バターンッ



「ッ!!??」

 そう呟いた瞬間、隅にあった大きな絵が倒れ、葵は身を竦めた。


 そこにはーー


「あ……お、おう。お疲れ」
「……」

 体育座りをして、汗を垂れ流している、此処には来ないと言っていた不審者が申し訳なさそうに手を挙げていた。




「フンッッッ!!!」
「んごおぉぉぉっ……!!!」


 ……私が綺麗なボディブローを入れたのも致し方ない事だと思う。
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