じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ

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第1章 店を作ろう

第3話 店名

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「いやー! 今日が楽しみ過ぎて早く起きちまってよ!! 知り合いの材木屋で安く仕入れて来たんだ!!」


 源さんはそう言って明細書を出してくる。

 おー…すげぇ安い。だけど、今はそんな事どうでも良い。


「源さん?」
「んー? どうしたー? 中々の出来じゃねぇかー?」
「まぁ…その、はい。この建物のデザインは兎も角、素晴らしい出来だと思いマスヨ」
「そうだろ!!」


 源さんは大きく胸を張り、誇らしげだ。

 いや、良い事だよ? こんなに早く出来ると思ってなかったし。何より早ければ早いほど開店の時期は早まる訳で…


「…これって昨日はなかったよね?」
「まぁ、今日俺が作り始めたからな」
「………それで、普通に建物って出来る?」
「…まぁ、出来ないな」
「じゃあ何で出来てるんだよ…!!!」


 俺は深く地面に膝を着いた。それはもう、地面にめり込むのではないかと言う程に。


「んー…いや、何か力が湧いて来たんだよなー……ま! 結果オーライってやつだな!!」


 源さんは不思議そうに首を傾げると、豪快に笑った







「………もう、いいか」


 いつまでも悩んでも仕方ない。無事に店が出来たんだし。外見は兎も角、カフェが出来れば良いんだ。あー、良かった良かった。


「それで? 中はどんな感じなの?」


 せめて中は綺麗な感じにしたいぞ。


「ま、それは見た方がはえーな」


 俺は源さんに促される様に、建物の扉を開く。


 そこには、テーブル席が3つ。カウンター席が5つある。木の温かみを感じる、こじんまりとはしているが、悪くない作りだ。
 立地的には1日に数人来るか来ないかぐらいだろうから、広さ的にも問題はないだろう。

 俺が隅々を見て回っていると、源さんが俺の肩をグッと掴む。


「まだ色々と準備する物はあるだろうが…あとこっからはの仕事だろ?」


 その言葉に俺は思わずポカンとし、数秒後吐き出す様に笑った。


「そうだな! あとは店主に任せてくれ!!」


 ***


「はぁ……どうしよう」


 勢いで言ったは良いがどうすれば良いのか分からないーーと言うのが俺の本音だった。

 頼りになりそうな源さんは『店主頑張れよー』って、この土地にあった草の塊を持って何処かに行ってしまった。

 俺はカフェの内装を決める為、さっきからカウンターに突っ伏しながら鉛筆を転がしているのだが、何もアイディアは出てこない。


 取り敢えずノートに書いたのはーー

 ・冷蔵庫
 ・照明
 ・皿、カップ
 ・なんか良さげなテーブルクロス
 ・良い感じの小物

 ぐらいである。

 ん? 徐々にテキトーになってきているって? ……まぁ、その、ご愛嬌だ。

 あと必要なのは何だろう…と考えていた俺は、大事な事に気づく。



「あー…店名決まってねぇ」


 店名。それはその店の印象を全て決めると言っても過言ではない大事なものである。


「田舎のカフェ…自然いっぱいカフェ…幽霊とか出ちゃうカフェ…」


 ……一応、自分でも分かってはいるが俺のネーミングセンスは皆無。それこそ誰かに考えて貰うか? でも店主が店の名前を決めないでどうするんだ。

 俺は唸りながら頭を抱える。


 店名はやっぱりこのカフェの特徴を捉えた感じの名前にした方が良いよな。


「じいちゃんから譲られた土地カフェ………いや、ダメに決まってんだろ」


 自問自答しながら、俺は改めて何故カフェを作ろうと思ったのか考えてみた。
 何故そんな事考えるかって? そこから何かいいヒントが得られる気がしたからだ。

 俺は工場勤務で…このままやってても仕方ないなぁって思いながら仕事をしてた。
 そんな時、じいちゃんが死んで土地を譲られて、心機一転、カフェを作ろうと思ったんだ。


「あ……そういえばじいちゃん、言ってたなぁ」


 じいちゃんの事を考えていた俺は、ふとある事を思い出す。


『いずれ、お前も人生の岐路に立つ事があるだろう。その時は自分が後悔しない方へ行け』


 俺が小さい頃。縁側でじいちゃんに言われた言葉だ。


『後悔、しない方?』
『あぁ。あと何十年もしたら哲平にも大切なものが出来る筈だ。それが出来てから自由なんてねぇ。だから今のうちに後悔しない方にドンドン挑戦しろ』


 ーーあぁ。あの時はテキトーに聞いてた。


『? 何で自由じゃなくなるの? 学校の先生は僕たちの事自由だって言ってるよ?』
『はは、今の哲平達はそうだろうな。今の哲平達はだからなぁ』
『? どう言う事?』
『いずれ分かるさ』
『ふーん……じいちゃんは、後悔してる?』
『ははっ! 後悔ばっかよお!』
『えぇっ!?』
『だけどな』


 じいちゃんのゴツゴツとした大きな手が俺の頭に乗っかったのを覚えている。


『こっちを選んで本当に良かったと思える事もあるのよ』


 あぁ。そうだ。


 俺の胸が熱くなるのを感じる。


「人生の岐路で、後悔しない方に…か」


 口に出すと、俺は自然と店名はこれが良いと感じた。





 人生の岐路に立った時、勇気が出る様な幸せな時間を過ごす事が出来るカフェ。


 ーーうん。悪くないんじゃないか?



 喫茶店 KIRO。



 俺は噛み締める様に、ノートに書いた。
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