上 下
205 / 379
第6章 (3)父を求めて-前半-

3-10

しおりを挟む
***

「バ、バロン。
お待たせ、先にお風呂ありがとう」

暫くして。
お風呂を済ませた私は寝具に着替えると、ゆっくりと脱衣所から出て来た。

なんだかソワソワする。
湯上り姿なんて何度も見られているが、今日はいつもより落ち着かない。
緊張してついつい長風呂になっていた気もする。
変に意識しているのをバロンに悟られていないか心配だ。

しかし。


ーーあれ?いない?

返事も無ければ、少し歩いて来てソファーを覗き込んでも姿も見当たらない。


「バ、バロン?……どこ?」

いつも傍に居てくれる彼がいない。
不安な気持ちを抑え、部屋を見渡しながら進んで行くと、私は恐る恐る奥の寝室を覗き込んだ。

すると……。


「!っ……え?」

私の目に映ったのは、ベッドで仰向けで寝ているバロンの姿。


う、嘘っ……。
寝てる姿なんて、初めて見た!

いつもは必ず、バロンは私より先に寝たりしない。
私が眠るまで起きてくれていて……。
特にこの旅中は、眠っていない夜もあると思う。
しおりを挟む

処理中です...