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第1章(1)アカリside
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しおりを挟む「すまんね。
少し目を離したら転んでしまって……」
申し訳なさそうな表情をしながらヒカルを手渡すお祖父様に、私は首を横に振ると笑顔で泣いている息子をあやした。
「ほら、ヒカル~泣かないの。そんなに痛くないでしょ~?」
転んだ、と言っても見た感じ擦りむいた所も赤くなった所も特にない。
私が背中をポンポンと叩きながら抱き締めてあげると、ヒカルはぎゅ~っとしがみ付いてきた。
活発で元気な姉のヒナタと違って、ヒカルは泣き虫で甘えん坊。
二人とも黒髪に黒い瞳で、私似で……。
ヒカルは私の父のギルバートの幼少期によく似ているらしく、お祖父様はもうメロメロ。
ヒカルが産まれた時。
私似のこの子を見た瞬間。
残念なような、嬉しいような、複雑な気持ちが葛藤した。
”ヴァロンにそっくりな、男の子がほしい”……。
そう願った私が、彼との別れ際に身籠った命。
ヴァロンが私に、未来を生きていく為の希望をくれたんだと思ってた。
……けれど。
ヒカルは、私似の男の子。
ヴァロンの遺伝子はどこいっちゃったんだろう?って思う位。
容姿も、泣き虫な所も、私に似てる。
でも。
それを残念に思うと同時に、私は思ったの。
私がヴァロンに願った事は、まだ叶ってない。
彼は必ず、願いを叶えに帰って来てくれる。
って……。
そんな都合の良い解釈ばかりして、私は今日まで生きてきた。
現実は、そんなに甘くないのにね。
この三年間。ヴァロンからの連絡は勿論無ければ、彼が今一体どうしているのか、手術が上手くいって、生きているのかさえ分からない。
ヴァロンと別れる際に、私と子供達には一切手を下さないという条件と引き換えに……。彼にも今後、一切関与しないと、約束してしまったから。
私から探りを入れる事は勿論。
お祖父様達でさえ、仕事以外ではヴァロンの関係者には近付けない状況だった。
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