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第1章(1)アカリside

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言葉を失ってしまって、目を丸くするだけで……。返事なんて、出来なかった。


「私はいいと思うけど?」

「!……え?」

「真面目に仕事してくれて、優しくて、何よりも子供達を大切にしてくれる。
アカリにとって、良い話だと思うわ」

顔を上げた私を見てモニカは優しく微笑むと、視線を子供達の方に向けて言葉を続ける。


「もう、三年よ。
外国で手術って言ったって、無事なら……。戻ってくる気があるなら、とっくに帰ってきてもいいでしょう?」

「……」

「つまり、そういう事よ。
アカリは充分待ったわ。まだ23なのよ?そろそろ、次の幸せを考えてもいいんじゃない?」

「っ……」

モニカに言われて、ズキッと痛む胸。

せっかくモニカは名前を出さないでくれたのに、私は心の中で毎日名前を呼んで、彼の姿を思い浮かべてしまうの。


ヴァロン。
私が自分で決めて、彼に”生きてほしい”と願って……。三年前に別れる道を選んだ。

生きていてくれるなら、それだけでいいと思ってた。


……でも、違う。
私は、心の何処かで勝手に期待していたの。

生きていてくれたら、また会える。
ヴァロンならきっと私の嘘を見抜いて、手術が無事に終わったら、また私のところへ帰ってきてくれるんじゃないか。って。

そんな馬鹿で、都合のいい夢を描いてた。


私の決断に何も言わず、一緒に暮らそうと言ってくれたお祖父様の好意を断ってまで住み続けた、港街の家。
それも、ヴァロンへの想いを諦めきれない私の未練。

そして……。


「うぇ~ん!!」

「ママ~!ヒカルがころんだぁ~」

考え事をしていた私の耳に届く息子の泣き声と娘の呼び掛けにハッとすると、いつの間にか泣いたヒカルを抱いた祖父のアルバートが近くに来ていた。
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