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6話 国王陛下 その2
しおりを挟む(ルード・フィクス公爵視点)
「お話というのはなんでしょうか……アーサー国王陛下……」
「ああ……ここでなら、腹を割って話せるな」
私はアーサー国王陛下に舞踏会会場の外に連れて来られていた。他の貴族は興味津々だったようだが、この場所ならば聞かれることはないだろう。それが逆に不安になってしまうのだが……」
「アンナ嬢の件だが……」
「アンナのことですか?」
「うむ……フィクス公爵、其方はなぜアンナ嬢と別れたのだ?」
「そ、それは……」
答えにくい質問が飛び込んで来た……マズイ、なんと答えれば良いものか。嘘を吐いた方が良いのか?
「分かっているとは思うが、嘘は吐かないことだ。私に嘘を吐けば、いくら公爵と言えどもタダでは済まないからな」
「こ、国王陛下……」
くっ……やはり嘘は吐けないか。こうなれば素直に答えるしかない……。
「彼女が……アンナは私に逆らった言動をしたのです。ですので、私は婚約破棄を言い渡しました」
「ほう、逆らった言動を……」
「さ、左様でございます……」
よし、嘘は言っていないはずだ。これで、アーサー国王陛下も納得してくれるだろう。
「その逆らった言動というのは、どういうものだったのだ?」
「それは……わざわざ、アーサー国王陛下にお伝えするものではないと思いますが……」
「私に伝えないと言うのか?」
「い、いえ……決してそういうわけではありませんが……」
ぬう……アーサー国王陛下は怪訝な表情をしていた。このまま誤魔化しきるのは難しいだろうか? しかし、正直に答えるのもマズイ……なんとか、嘘は吐いていない体で受け流さなければ……。
「ふむ……あくまでも詳細を語るつもりはないと言うことか。非常に残念だよ、フィクス公爵」
「アーサー国王陛下……? どういうことでしょうか?」
「私から答えを出すのは、いささか心苦しいが……仕方ない。フィクス公爵はアンナに身体の関係を迫ったのだろう? それも結婚前にな……」
「……! なぜ、そのことを……!?」
私はまさかの国王陛下の言葉に大声をあげてしまった。なぜ、国王陛下がそれを知っているのか……まさか、アンナが言ったのか?
「敢えて情報源は伏せておくが、アンナ自身ではないよ。彼女以外にも、その情報が漏れる要素はあるだろう?」
「そ、それは……!」
まさか、私が雇っている家の者が教えたと言うのか? そんなはずは……いや、相手が国王陛下ならば伝えてしまうか……一体誰が……!
「誰が伝えたのかは、この際問題ではない。問題なのは、それが事実であるということだ。今のフィクス公爵の反応を見て確信することが出来たよ」
ば、馬鹿な……私の反応でアーサー国王陛下はその不明瞭な情報に確信を得たというのか。しまった……完全に嵌められた気分だ……。
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