国王陛下に激怒されたから、戻って来てくれと言われても困ります

ルイス

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7話 国王陛下 その3

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(ルード・フィクス公爵視点)


 アーサー国王陛下の表情のは怒りのそれに変わっていた……マズイ、なんとか言い訳をしなければ……。


「ち、違うのです……アーサー国王陛下! 本当に違うのです……!」

「一体、何が違うというのだ? 身体の関係を迫ったのは事実なのだろう?」


 くそっ……! 本来なら嘘を吐きたいところだが。誰がバラしたのかは分からないが、ここは正直に答えるしかないか……。


「は、はい……それについては事実でございます」

「公爵ともあろう者がそのような間違いを……本当に残念だ」

「ま、待ってください! 国王陛下! 確かにアンナに身体の関係を求めたのは事実ですが、彼女と私は婚約関係にあったのですよ!?」

「それがどうしたと言うのだ? まさか、婚約関係になっていたから問題ないと言いたいのか?」

「そ、その通りですが……何か問題があるでしょうか?」

「はあ……フィクス公爵……」


 むむっ? アーサー国王陛下は大きく溜息を吐いているようだぞ? 私はそんなにおかしなことを言っているだろうか? 実際に婚約している状況で身体の関係になっているカップルは居るはずだしな……。


「しゃ、社会通念上は問題があることは承知しております、国王陛下」

「そこは分かっているのか……」

「ですが、カップルの中には婚約の段階で肉体関係になっている者達も居るでしょう? 避妊さえしていれば特に問題はないのでは……?」

「本気で言っているのか? フィクス公爵……」

 うっ……国王陛下の顔が怖いが、大丈夫だ……必要以上に気圧される必要はない。それにしても、なぜ国王陛下はこんなにも追及してくるのだろうか? 所詮はアンナと私の些末な婚約破棄だというのに……。

「少なくとも国王陛下に叱責されることではないと思います」

「ふふっ、強気だな。フィクス公爵」

「いえ、そのようなことは……ないと思いますが」

「普通の公爵と伯爵令嬢同士の肉体関係だぞ? 結婚前にそんな間違いが許されるとでも思っているのか? 他の貴族の見本にならなければならない存在の其方が、こんなことをするとはな……だから、残念だと言ったんだ」

「そ、それは……」


 行動規範のことを言われれば確かに言い返せない。ここは素直に謝罪しておくべきか。それで、アーサー国王陛下の機嫌も収まるだろう。触らぬ神に祟りなしというやつだ。

「申し訳ありませんでした、国王陛下。謝罪させていただきます」

「謝罪だけで済むと?」

「済まないのですか? 確かに社会通念上、よろしくないことをしましたが、未遂に終わりましたし……」

「未遂に終わっただと……? 其方はアンナ嬢の気持ちを考えたことはあるのか? 彼女には子を産む道具とまで言ったそうじゃないか。個人的にもとても腹立たしいのだが……どうしてくれようか?」

「えっ……国王陛下?」


 おかしい……なにやらおかしなことが起きようとしている。私にはそう感じられた。アーサー国王陛下はなぜ、ここまで本気になっているのだ……!?
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