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2話 リューガ・サンドフ公爵令息 その1
しおりを挟む「リューガ様、お久しぶりでございます」
「う、うん……久しぶりだね、メアル」
「はい、リューガ様」
「……」
私はリューガ・サンドフ公爵令息の屋敷を訪れていた。何人かの付き人と一緒に。久しぶりの再会に感動していることを伝える。
「こうしてリューガ様とお会い出来たことは、至上の喜びでございますわ」
「あの……メアル」
「如何なさいましたでしょうか、リューガ様?」
「その話し方、なんとかならないのか? 凄くむず痒いんだけど……」
「いえ、一応は公爵令息相手なのだし……言葉遣いに気を付けたつもりなんだけれど」
「一応も何も私は紛れもなく公爵令息だぞ」
「そう言えばそうだったわね」
リューガは丁寧な話し方を私がするのを嫌がっているようだった。私もそろそろキツイので戻っているけれど。まあ、久しぶりに会ったので照れくささを隠す為のスキンシップみたいなものだ。
「それじゃあ、そろそろ戻すわね。久しぶり、リューガ。こうして会えて嬉しいわ」
「私もだよ、メアル。君がナバット殿と婚約してからは会えなかったからな。婚約者に失礼になってしまうし」
「え、ええ……そうね……」
既にリューガには婚約破棄の話をしている。非常に驚いていたけれど、しっかりと聞いてくれた。
「まあ、その婚約も無くなったみたいだけどな」
「そうね……」
「びっくりしているよ。まさか、ナバット・アレクセイ侯爵令息ともあろう者が、別の女性と結婚するという理由で君との婚約を破棄するなんてな。しかも強制的に……信じられん」
「私も今だって信じられないわ。半分夢を見ていたかのようだったし」
今でもあの婚約破棄は何だったのか信じられない。私の半年間の婚約生活を無駄にさせただけでなく、傷物令嬢という汚名まで背負わせたのだから……ナバット様のことは本当に許せないわ。
「ナバット様のことは許せないわ……でも、彼のことを考えて神経を使うのは、とても勿体ないと思っているのよ」
「それは確かにそうかもな。私に会いに来てくれたのは、気持ちを切り替える為か?」
「そんなところね。今なら、誰にも気を遣う必要はないのだし」
リューガにも婚約者はまだ居ない。私も婚約破棄をされたのだから、幼馴染同士で出会っても特に問題はないはず。
「それなら、昔の遊び場にでも行かないか? 私としても君の気分転換には付き合いたいと思っているしな」
「昔の遊び場って……貴族街の時計塔の辺りかしら?」
「そうだな、どうだい?」
「別に構わないわよ、行きましょう」
あの辺りは現在はデートスポットになっているけれど……まあ、問題はないか。別にリューガはデートのつもりで連れ出すわけじゃないだろうしね。
ふふふ、久しぶりのリューガとのお出かけか。楽しみだわ。
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