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3話 リューガ・サンドフ公爵令息 その2
しおりを挟む私とリューガは貴族街の時計塔に向かった。私の付き人と彼の付き人が周囲の警護をしているけれど、雰囲気的にはデートのそれだ。なんだか、そう考えると恥ずかしくなってくるわね……。
「リューガ……こうして時計塔の近くで会っていると恥ずかしくなってくるわね……」
「そうかな? そんなに恥ずかしいか?」
彼は私とは感じる印象が異なっているようだ。私が恋愛脳なだけなのかもしれない。
「いえ、この辺りは昔とは違ってデートスポットになっているみたいだし……」
「そう言えば、そうだったか……そう考えると、月日が経ったのだと思えるな」
「そうね……こんな場所で公爵令息の貴方に普通の口調で話しているのも不思議な感じだけど」
他の貴族に聞かれたりしたら、怒られそうな光景だ。それ程にリューガの地位は高い。リューガはまったく気にしていないようなので、その点は嬉しかった。
「でも、こうしてリューガと一緒に時計塔に来れたのは素直に嬉しいわ。心が晴れ渡るというか」
「それなら良かったよ、メアル。君の役に立てるのは、私としても嬉しいからね」
「……」
リューガの言葉は時々、私をドキリとさせる。このデートスポットに臆面もなく来ている態度も含めて。この感情はもしかして……ああ、いけないいけない。私は婚約破棄されたばかりだということを忘れたら駄目だ。
「そう言えば、メアル。今度のパーティーへの参加についてだけれど……」
「えっ、次のパーティー?」
「ああ、参加はするのかい?」
「そうね……正直、あまり気乗りはしないけど……参加しないわけにはいかないから」
周りの人に好奇な目で見られる可能性がある。私はそれを怖がっていた。
「なら、私と一緒に参加しないか? 周囲の視線がおそらく気になるのだろうが、私と一緒に居ればそういう視線から守ってあげられるし」
「リューガ……でも良いの? 私と一緒に参加したら貴方も好奇な目で見られるわよ?」
「私はそんなことは気にしないさ。メアルが良いなら、是非、一緒に参加させて欲しい」
「リューガ……ありがとう」
彼の優しい微笑み。私はその微笑みにかなり救われた気がする。まさか、次のパーティーに一緒に参加することになるとは思わなかったけれど。
ナバット様からの理不尽な婚約破棄……その悲しみが癒えるのは、意外と早いのかもしれない。
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