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9話 大公との会話 その1
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「叔父上……先ほどまでの言葉は全て聞いていました。率直な感想を言わせてもらうと、とても大公殿下とは思えない発言でしたね」
「それは……」
「ウォルト大公殿下、私としましてもとても残念に思います」
「カイマール大臣……そうか、ジェシカの家系には大臣参謀の其方が居たのだったな……」
ブラックル様は今更になって気付いたようだ。高額な慰謝料を請求するのだから、事前に相手の家族構成くらいは調べていないと話にならないと思うけれど。私とラクロアの関係も含めて。その辺りを知らなかったということは、バームという執事も大したことないわね。
「ラクロア……! まさか、お前がこんなところに居るとはな……」
何を考えているのか、ラクロアのことを急に呼び捨てにするブラックル様。頭が混乱しているのかもしれない。
「呼び捨てですか、叔父上」
「当たり前だ、私は大公なのだからな。王子という立場は貴族令嬢と同じで、家督にならなければ、圧倒的な権力の行使は出来ないはずだ。お前はまだまだヒヨッ子なのだよ」
「まあ、それについては否定はしません。私もまだまだですからね」
焦っているブラックル様と冷静沈着なラクロア……これではどちらが大人か分かったものではないわね。
「ウォルト大公殿下、ラクロア王子殿下に対して失礼かと思われますが……あなたはもう、王族ではないのですよ?」
「カイマール大臣も下位の貴族の分際でよく私に意見が出来るな。大臣という役職に胡坐をかいているのではないかな?」
「な、なんですと?」
大公殿下よりは地位としては下がるけれど、大臣の一人である伯父様に対しても、ブラックル様は非常に強気だった。
「私がラクロアに対して敬語など使う必要はない……そうだな? バームよ」
しかも、敬語云々に関して執事のバームに質問しているし……この人は自分の意見がないのだろうか。
「その辺りは貴族間でも、意見の別れているところだと思われます」
「うむ、そうだったのか……まあ、良しとするか」
流石のバームもハッキリとしたことは言わずに、言葉を濁していた。逃げたわね……。
それにしても……驚くほどに滅茶苦茶な発言をブラックル様は行っている。こんなことを言って大丈夫なのかしら、と思えるくらいだ。
「カイマール殿、私についての態度は別に構わないさ。確かに叔父上は父上の弟になるからな。私に対して敬語を使うというのは抵抗があるのだろう」
「ラクロア王子殿下……しかし」
「構わないさ」
「ははは、当然じゃないか」
言葉遣いについて、ラクロアは普通に許しているようだった。大人な対応……それと比べて、ブラックル様は子供にしか見えない。私は一時期、この人と婚約していたのよね……なんだか、とても恥ずかしくなってきた。
「それよりも、叔父上。ジェシカに対して行う予定の、高額な慰謝料請求についてだが……」
「ん? ああ、やはりその件でこの屋敷に集まっていたのか」
「ええ、そういうことになります。ただし、叔父上の願いは間違いなく届かないでしょうね」
「何……?」
自信満々のラクロアと眉間にしわを寄せるブラックル様。二人の表情はまさに対極と呼んで差し支えのないものになっていた。
「それは……」
「ウォルト大公殿下、私としましてもとても残念に思います」
「カイマール大臣……そうか、ジェシカの家系には大臣参謀の其方が居たのだったな……」
ブラックル様は今更になって気付いたようだ。高額な慰謝料を請求するのだから、事前に相手の家族構成くらいは調べていないと話にならないと思うけれど。私とラクロアの関係も含めて。その辺りを知らなかったということは、バームという執事も大したことないわね。
「ラクロア……! まさか、お前がこんなところに居るとはな……」
何を考えているのか、ラクロアのことを急に呼び捨てにするブラックル様。頭が混乱しているのかもしれない。
「呼び捨てですか、叔父上」
「当たり前だ、私は大公なのだからな。王子という立場は貴族令嬢と同じで、家督にならなければ、圧倒的な権力の行使は出来ないはずだ。お前はまだまだヒヨッ子なのだよ」
「まあ、それについては否定はしません。私もまだまだですからね」
焦っているブラックル様と冷静沈着なラクロア……これではどちらが大人か分かったものではないわね。
「ウォルト大公殿下、ラクロア王子殿下に対して失礼かと思われますが……あなたはもう、王族ではないのですよ?」
「カイマール大臣も下位の貴族の分際でよく私に意見が出来るな。大臣という役職に胡坐をかいているのではないかな?」
「な、なんですと?」
大公殿下よりは地位としては下がるけれど、大臣の一人である伯父様に対しても、ブラックル様は非常に強気だった。
「私がラクロアに対して敬語など使う必要はない……そうだな? バームよ」
しかも、敬語云々に関して執事のバームに質問しているし……この人は自分の意見がないのだろうか。
「その辺りは貴族間でも、意見の別れているところだと思われます」
「うむ、そうだったのか……まあ、良しとするか」
流石のバームもハッキリとしたことは言わずに、言葉を濁していた。逃げたわね……。
それにしても……驚くほどに滅茶苦茶な発言をブラックル様は行っている。こんなことを言って大丈夫なのかしら、と思えるくらいだ。
「カイマール殿、私についての態度は別に構わないさ。確かに叔父上は父上の弟になるからな。私に対して敬語を使うというのは抵抗があるのだろう」
「ラクロア王子殿下……しかし」
「構わないさ」
「ははは、当然じゃないか」
言葉遣いについて、ラクロアは普通に許しているようだった。大人な対応……それと比べて、ブラックル様は子供にしか見えない。私は一時期、この人と婚約していたのよね……なんだか、とても恥ずかしくなってきた。
「それよりも、叔父上。ジェシカに対して行う予定の、高額な慰謝料請求についてだが……」
「ん? ああ、やはりその件でこの屋敷に集まっていたのか」
「ええ、そういうことになります。ただし、叔父上の願いは間違いなく届かないでしょうね」
「何……?」
自信満々のラクロアと眉間にしわを寄せるブラックル様。二人の表情はまさに対極と呼んで差し支えのないものになっていた。
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