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26話 宴のあと その4
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「クラウス家は前当主であるアーロン様が、相当な信頼を獲得しておられた。だからこそ、この大規模なパーティーを開催できたといっても過言ではあるまい」
「ダンテ兄さま……やはり、そうなんですね」
「うむ」
私とメリア王女の話に入って来たのは、ダンテ兄さまだ。フューリへの誤解が解けたところを見計らって入って来たように思える。
「私はアーロン様が国家を裏切って、自らを公爵と名乗る公国なんて作るとは考えられませんけど……」
「あの方はもちろんそうですわ。ただ……」
「ビクティム侯爵が危険だと?」
「そうですわね……」
ダンテ兄さまの言葉にメリア王女殿下は遠い目になっていた。ビクティム侯爵が連れて行かれた方向を自然と見ながら。
「ビクティム侯爵がこれを機に改心してくれると良いのですが……」
「あまりそういう感じではなかったですね、そういえば……最後、大人しかったのが逆に不気味というか。あれだけ暴言を吐いて、最後はアーロン様を殴り倒したのに」
「ビクティム侯爵が家系に連なる邪な者達と手を組んで、独立を考えるようになる……ことにならないことを祈ってますわ」
「そういうことでしたか、メリア王女の心配は……」
ビクティム侯爵単体であえばどうということはないけど、クラウス家の兄弟親戚の者達が危険だと……。現当主であるビクティム侯爵を利用して、独立を考えても不思議ではない。
「その確認のためにビクティム侯爵に近づいたんですね?」
「そういうことです。結果的に、レオーネさんには悲しい想いをさせることになってしまって……申し訳ありませんわ」
「い、いえ……あのまま進んでいたら、私はビクティム侯爵と結婚することになっていたので……」
「ああ、そういえばそうでしたわね」
「はい……」
今にして思うと、それだけは非常に困る事態だった。貴族という身である以上、恋愛による結婚は難しいこと、政略結婚もある程度は仕方ないことも承知はしているけれど。それでも、本性を知ったビクティム侯爵は……。
私の心の声と呼応するかのように、周囲の貴族達もビクティム侯爵を蔑み始めている。その言葉にだけは全力で同意したいところかしら。
「ふふふ、そう考えると私はレオーネさんの命の恩人かもしれませんわね」
「命の恩人……というのはわかりませんが、感謝はしています。色々と協力をしていただいたことも含めて」
「お互いの利益が適合しただけのことですわ。私もデルトーイ王国の人間……新しい国家が出来ることには賛成は出来ませんので」
「なるほど、確かに、公国などが出来てしまえば本当に面倒なことになりますからな」
「ええ、本当ですわ、ルヴィンス伯爵」
そんな話で盛り上がっていた頃、フューリがパーティー会場の入り口から戻って来た。護衛は最小限の人数になっている。
「フューリ」
「待たせたか、レオーネ?」
「いえ、そんなことは……それよりも、アーロン様とビクティム侯爵は?」
「ああ、問題ない。まず、アーロン殿だが骨は折れているがそこまで重傷ということもなかった。医務室で現在は休んでいる」
「そう、それは何よりだったわ」
私はほっと一安心する。アーロン様は私の代わりに殴られたようなものだし……それで、後遺症が残る怪我だったら私は何て言えばいいのか分からなかったから。
「それから、ビクティム侯爵は地下牢だ」
「そ、そうなの……」
直接、放り込んだ形かしら……まあ、あれだけ大胆に元侯爵で実の親を殴ったのであれば仕方ないけれど。
「最早、侯爵でなくなる日も近いがな」
「……」
爵位剥奪は確定なのかしら? いえ、実際は議会が決めることなので、王太子とはいえフューリに決定権はないと思うけど。ただ、ビクティム侯爵の立場は非常に悪くなりそうね……。
「レオーネ、よければ少し、外を歩かないか?」
「外を……?」
「ああ」
「わかったわ。すみません、ダンテ兄さま、メリア王女」
私はそれとなく二人に確認を取っていた。二人が拒むわけはないと思っているけれど、礼儀だしね。
「うむ、気を付けてな」
「パーティーではほとんど話せていなかったようですし、楽しんでいらしてね」
「ありがとうございます」
私はダンテ兄さまとメリア王女に礼をすると、そのままフューリと一緒に会場の外に出ることにした。これはもしかして……良い雰囲気になりそうな予感……?
「ダンテ兄さま……やはり、そうなんですね」
「うむ」
私とメリア王女の話に入って来たのは、ダンテ兄さまだ。フューリへの誤解が解けたところを見計らって入って来たように思える。
「私はアーロン様が国家を裏切って、自らを公爵と名乗る公国なんて作るとは考えられませんけど……」
「あの方はもちろんそうですわ。ただ……」
「ビクティム侯爵が危険だと?」
「そうですわね……」
ダンテ兄さまの言葉にメリア王女殿下は遠い目になっていた。ビクティム侯爵が連れて行かれた方向を自然と見ながら。
「ビクティム侯爵がこれを機に改心してくれると良いのですが……」
「あまりそういう感じではなかったですね、そういえば……最後、大人しかったのが逆に不気味というか。あれだけ暴言を吐いて、最後はアーロン様を殴り倒したのに」
「ビクティム侯爵が家系に連なる邪な者達と手を組んで、独立を考えるようになる……ことにならないことを祈ってますわ」
「そういうことでしたか、メリア王女の心配は……」
ビクティム侯爵単体であえばどうということはないけど、クラウス家の兄弟親戚の者達が危険だと……。現当主であるビクティム侯爵を利用して、独立を考えても不思議ではない。
「その確認のためにビクティム侯爵に近づいたんですね?」
「そういうことです。結果的に、レオーネさんには悲しい想いをさせることになってしまって……申し訳ありませんわ」
「い、いえ……あのまま進んでいたら、私はビクティム侯爵と結婚することになっていたので……」
「ああ、そういえばそうでしたわね」
「はい……」
今にして思うと、それだけは非常に困る事態だった。貴族という身である以上、恋愛による結婚は難しいこと、政略結婚もある程度は仕方ないことも承知はしているけれど。それでも、本性を知ったビクティム侯爵は……。
私の心の声と呼応するかのように、周囲の貴族達もビクティム侯爵を蔑み始めている。その言葉にだけは全力で同意したいところかしら。
「ふふふ、そう考えると私はレオーネさんの命の恩人かもしれませんわね」
「命の恩人……というのはわかりませんが、感謝はしています。色々と協力をしていただいたことも含めて」
「お互いの利益が適合しただけのことですわ。私もデルトーイ王国の人間……新しい国家が出来ることには賛成は出来ませんので」
「なるほど、確かに、公国などが出来てしまえば本当に面倒なことになりますからな」
「ええ、本当ですわ、ルヴィンス伯爵」
そんな話で盛り上がっていた頃、フューリがパーティー会場の入り口から戻って来た。護衛は最小限の人数になっている。
「フューリ」
「待たせたか、レオーネ?」
「いえ、そんなことは……それよりも、アーロン様とビクティム侯爵は?」
「ああ、問題ない。まず、アーロン殿だが骨は折れているがそこまで重傷ということもなかった。医務室で現在は休んでいる」
「そう、それは何よりだったわ」
私はほっと一安心する。アーロン様は私の代わりに殴られたようなものだし……それで、後遺症が残る怪我だったら私は何て言えばいいのか分からなかったから。
「それから、ビクティム侯爵は地下牢だ」
「そ、そうなの……」
直接、放り込んだ形かしら……まあ、あれだけ大胆に元侯爵で実の親を殴ったのであれば仕方ないけれど。
「最早、侯爵でなくなる日も近いがな」
「……」
爵位剥奪は確定なのかしら? いえ、実際は議会が決めることなので、王太子とはいえフューリに決定権はないと思うけど。ただ、ビクティム侯爵の立場は非常に悪くなりそうね……。
「レオーネ、よければ少し、外を歩かないか?」
「外を……?」
「ああ」
「わかったわ。すみません、ダンテ兄さま、メリア王女」
私はそれとなく二人に確認を取っていた。二人が拒むわけはないと思っているけれど、礼儀だしね。
「うむ、気を付けてな」
「パーティーではほとんど話せていなかったようですし、楽しんでいらしてね」
「ありがとうございます」
私はダンテ兄さまとメリア王女に礼をすると、そのままフューリと一緒に会場の外に出ることにした。これはもしかして……良い雰囲気になりそうな予感……?
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