侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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27話 フューリとの時間

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「レオーネ、パーティーの方はどうだった?」

「そうね……本当に色々なことがあったけど、なんだか楽しかったわ」

「そうか、それなら良かった」


 パーティー会場を抜け、私とフューリ王太子殿下は宮殿の周りにある庭園を歩いていた。所々に見える噴水が私達を照らしている。

「楽しかったのはあるけれど、メリア王女様とあんなに仲が良かったのは想定外だったわ。事前の話では、彼女が何をするのか、呼ばれるかどうかすらも不透明を演じていたでしょ?」

「あ、それは申し訳ないと思っている。あまり、レオーネに余計な心配をかけたくなかったからね」

「私の為に動てくれるのは、とてもありがたいのだけれど……」


 私は敢えてフューリからは視線を逸らして話していた。心では仕方ないことだとは分かっているし、メリア王女と会話をして、フューリへの誤解は完全に解けたはずなんだけれど。私はそれでも、少しだけいじわるな態度を取っていた。

 仕方ないじゃない……乙女心は複雑なんだから。


「レオーネ、聞きたいことがあるんだが……」

「なにかしら、フューリ?」


 私はわざと冷たい態度で彼に質問していた。本当はもう、フューリのことを許しているし、全然怒ってはいないけど。


「その態度は……ヤキモチを妬いている、と考えてもいいのかな?」

「……だったら、どうだと言うの?」

「そうだな……ヤキモチなんだとしたら、失礼かもしれないがとても嬉しいかな。個人的にはね」

「えっ?」


 フューリの意外な発言につい素に戻って振り返ってしまった。そこには……もう驚くほどに優しく、二枚目な彼の顔がある。そして、そのまま私を抱き寄せてくれた。


「余計な心配をかけたことは、心から謝るよレオーネ。私に出来ることであれば、なんでも言ってくれ。そんなことで、君を不安にさせた罪が取り除かれるなんて、甘い考えは持っていないけどね」


 ううう……フューリは自分の魅力というものを知っているんだろうか? 初恋の相手……決して届かないと思っていた王太子殿下。そんな彼に抱き寄せられ、そんな甘いセリフを言われただけで、私は幸せの絶頂にいた。正直、これ以上の望みなんて思いつかないけれど、せっかくなんで言ってみることにする。


「接吻をしてくれたら、許してあげるかも……」

「おいおい、大胆だな。一応は、私の護衛が周囲を警戒してるんだが?」


 いついかなる時でも、王太子殿下が一人で行動することはない。宮殿内でも一人で過ごせるのは私室くらいだろう。噂によると、彼の私室の入り口はもちろん、各窓の下にも護衛が付いているとかなんとか。


「それでもよ。こう言えば、フューリはどういう行動に出てくれるのかしら?」

「まいったな……レオーネにはお手上げだよ」

「誉め言葉として受け取っておくわ」

「まあ、実際に誉め言葉だけどね」


 私は雰囲気を感じ取って目を瞑った。それを見計らい、フューリの柔らかい唇が私の唇に重なって行く。護衛たちがどの方向を見ていたのか分からないけれど、私達は確かに接吻をしたのだ。王太子殿下と伯爵令嬢の密会……これは今後、どういう経緯を辿っていくのか、この時の私は想像できていなかった。
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