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5話 読書の時間
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「ウィリアム……ちょっと良いかしら? 気になっていることがあるんだけれど……」
「どうかしたのか、ファラ?」
「ええ、私とウィリアムは、こうして同じ部屋で過ごすことが多くなってきたでしょう?」
「そうだな、もう何回目になるんだっけ」
私とミゼル様の婚約解消が成立してから数えても、10回くらいにはなる。あの日から1カ月しか経過していないのに、この回数は多いと言えるだろう。
「10回くらいになるわね。だから、私とウィリアムの間で変な噂が立っているんだけど……」
「変な噂? 幼馴染なんだし、同じ部屋で読書をするくらい普通だと思うけど。使用人だって出入りはしているんだし」
「確かにそうなんだけれど……」
個人的には特に気になる噂ではない。むしろ、嬉しい噂と言えるかもしれないからだ。つまり……年頃の男女が同じ部屋に入れば必ず流れる噂、というわけで。
「なんとなく予想は付いたよ。俺とファラの関係が怪しまれているってところか」
「ご名答、流石はウィリアムね」
「いや、これは流石に分かるよ。しかし、そんな噂が流れているか。貴族というのは、わりかし暇な連中が多いのかもしれないな」
「そうかもしれないわね」
私とウィリアムはこれでも、忙しい日程の中を選んで会っている。別に暇人だから読書の時間を楽しんでいるのではない。特にウィリアムは私に付き合ってくれているわけだ。付き合い始めたのではないか? とか、そういった噂が流れても、お互いに変な気分になることはなかった。
昔もそんな風に言われたことはあるからね。もう、慣れてしまっている。
「ねえ、ウィリアム」
「なんだい、ファラ?」
「私はミゼル様と婚約解消になっているから、問題はないけれど……貴方は大丈夫なの?」
「ん? どういうことだ?」
ウィリアムが誰かと付き合っているという噂は聞いていないけれど、念のために確認しておく必要があった。誰か、お目当ての方が居るだけでも、私の読書の時間に付き合わせているのは失礼になってしまうし。
「ほら、その……お目当てのお方が居たりしないの? 将来、結婚を誓った相手とか」
「そうだな……公爵令息という立場で20歳も目前だが、今のところ運命の相手は居ないかな」
「まったく、居ないわけ? それは流石にまずいんじゃ……」
彼ももう19歳だ。公爵令息という立場なら、そろそろ、次期当主になることも考えて婚約者候補くらいは作っておかないとマズイはず。私はそっちの方が心配になってしまった。
「まあ、俺も悲しい経験をしたからね。失恋、というやつかな」
「そ、そうなんだ……ごめんなさい、思い出したくないことだったわよね」
「いや、大丈夫だよ。その悲しみはもしかしたら、報われるかもしれないからね」
「そうなの?」
「まあね」
特にウィリアムは悲しんでいる様子はない。でも、失恋の経験はあるんだ……まあ、そうよね。彼も恋の1つや2つしていてもおかしくないし。と、そんな時だった……私の部屋がノックされたのは。
「あれ、誰かしら? どうぞ、開いています」
「失礼するぞ、ファラよ」
「ファラ、失礼するわね」
「お父様、お母様……!?」
まさか、ウィリアムが居るタイミングで二人が入ってくるとは思っていなかった。今までは、恐れ多いということで入って来なかったのに。二人はなにかニヤニヤと笑っているような……それに、揉み手をしているわね。どういうつもりかしら?
「どうかしたのか、ファラ?」
「ええ、私とウィリアムは、こうして同じ部屋で過ごすことが多くなってきたでしょう?」
「そうだな、もう何回目になるんだっけ」
私とミゼル様の婚約解消が成立してから数えても、10回くらいにはなる。あの日から1カ月しか経過していないのに、この回数は多いと言えるだろう。
「10回くらいになるわね。だから、私とウィリアムの間で変な噂が立っているんだけど……」
「変な噂? 幼馴染なんだし、同じ部屋で読書をするくらい普通だと思うけど。使用人だって出入りはしているんだし」
「確かにそうなんだけれど……」
個人的には特に気になる噂ではない。むしろ、嬉しい噂と言えるかもしれないからだ。つまり……年頃の男女が同じ部屋に入れば必ず流れる噂、というわけで。
「なんとなく予想は付いたよ。俺とファラの関係が怪しまれているってところか」
「ご名答、流石はウィリアムね」
「いや、これは流石に分かるよ。しかし、そんな噂が流れているか。貴族というのは、わりかし暇な連中が多いのかもしれないな」
「そうかもしれないわね」
私とウィリアムはこれでも、忙しい日程の中を選んで会っている。別に暇人だから読書の時間を楽しんでいるのではない。特にウィリアムは私に付き合ってくれているわけだ。付き合い始めたのではないか? とか、そういった噂が流れても、お互いに変な気分になることはなかった。
昔もそんな風に言われたことはあるからね。もう、慣れてしまっている。
「ねえ、ウィリアム」
「なんだい、ファラ?」
「私はミゼル様と婚約解消になっているから、問題はないけれど……貴方は大丈夫なの?」
「ん? どういうことだ?」
ウィリアムが誰かと付き合っているという噂は聞いていないけれど、念のために確認しておく必要があった。誰か、お目当ての方が居るだけでも、私の読書の時間に付き合わせているのは失礼になってしまうし。
「ほら、その……お目当てのお方が居たりしないの? 将来、結婚を誓った相手とか」
「そうだな……公爵令息という立場で20歳も目前だが、今のところ運命の相手は居ないかな」
「まったく、居ないわけ? それは流石にまずいんじゃ……」
彼ももう19歳だ。公爵令息という立場なら、そろそろ、次期当主になることも考えて婚約者候補くらいは作っておかないとマズイはず。私はそっちの方が心配になってしまった。
「まあ、俺も悲しい経験をしたからね。失恋、というやつかな」
「そ、そうなんだ……ごめんなさい、思い出したくないことだったわよね」
「いや、大丈夫だよ。その悲しみはもしかしたら、報われるかもしれないからね」
「そうなの?」
「まあね」
特にウィリアムは悲しんでいる様子はない。でも、失恋の経験はあるんだ……まあ、そうよね。彼も恋の1つや2つしていてもおかしくないし。と、そんな時だった……私の部屋がノックされたのは。
「あれ、誰かしら? どうぞ、開いています」
「失礼するぞ、ファラよ」
「ファラ、失礼するわね」
「お父様、お母様……!?」
まさか、ウィリアムが居るタイミングで二人が入ってくるとは思っていなかった。今までは、恐れ多いということで入って来なかったのに。二人はなにかニヤニヤと笑っているような……それに、揉み手をしているわね。どういうつもりかしら?
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