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1話 虐めの加害者
しおりを挟む「こ、婚約破棄でございますか!? 一体、どうして……バレット様!」
「お姉さま、そんなことも分からないのですの?」
「マーガレット……」
私の婚約者であるバレット・スミス侯爵。その隣に立っているのは、私の妹であり伯爵令嬢のマーガレット・フォルスだ。立ち位置だけを見ていると、マーガレットがバレット様の婚約者に見えるけど、それは間違いである。
「マーガレットから聞いているぞ、フリージアよ。私は非常に悲しい……お前が昔から、マーガレットのことを虐めているとな」
「虐め……?」
「その通りなんです、バレット様! 姉は私を虐めておりまして……!」
そう言いながら、マーガレットはバレット様に抱き着いていた。あり得ない……何が起きているというの?
私がマーガレットを虐めたことなんて、一度たりともない。それどころかマーガレットの我が儘にやられていたのは私の方だ。これは一体、どういうこと?
「バレット様……私がマーガレットを虐めていた事実なんてありません」
「フリージア、それではマーガレットが嘘を吐いているというのか? それは姉としてどうかと思うがな」
「そんな……」
「まあっ! 姉さま! 本当に酷いですわっ!」
大袈裟なアクションをしながら、マーガレットはバレット様にくっついている。バレット様もその状況を楽しんでいるようだ。まさか、この二人は……。
「まさか、バレット様……マーガレットと浮気をしているのですか? その口実として、私が彼女を虐めているという風にして、婚約破棄をしようとしているのでは……?」
「なっ、何を言っているのだ! お前は……!」
「何を言っているのですか、姉さま! 酷過ぎますわ!」
バレット様とマーガレットは明らかに慌てている……図星だったようね。私との婚約破棄の理由を必死で考えて、虐めという答えに行きついた感じかしら。
「とにかく、お前とは婚約破棄だフリージア。妹を虐めるよう最低な人間とは一緒になれないのでな」
「そ、そんな……! バレット様、お考え直しください!」
いくらなんでも、婚約破棄の理由が酷過ぎる……単なる浮気での婚約破棄のはずなのに、私が完全に加害者にされているし。
「いまさら遅いのだよ、フリージア! 私が浮気をしているなどと、勝手なことを言ってくれたな! お前が妹のマーガレットに酷い虐めをしていた事実は、他の貴族にも伝わるようにしてやる! ありがたく思うのだな!」
「あはははは、姉さま! バレット様と私を疑った、当然の罰ですわね!」
バレット様の私室に鳴り響くのは、彼ら二人の大笑いだった。私は何も言い返せない……何を言っても意味がないどころか、より酷い反撃をされそうだったから。
私はこの日、バレット・スミス侯爵との婚約を破棄されただけでなく、妹のマーガレットを虐めていた張本人だという汚名を着せられてしまった……。
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