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2話 心を癒す
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「まあ! そんなことが……フリージア!」
「フリージア……事実なのだな?」
「はい。お父様、お母様……事実でございます……」
私は屋敷に戻り、婚約破棄の事実を両親に告げた。二人とも、とても心配してくれているようだ。でも、意味がないことも分かってる……なぜなら、あのマーガレットがこの状況を想定していないはずがないからだ。
同時にバレット・スミス侯爵もそんなことを予想出来ないとは思っていなかった。
「お父様……私はマーガレットを虐めたことなんて、一度もありませんよね!?」
「そうだな……確かにその通りだ」
お父様は頷いてくれている。しかし、その表情はとても暗かった。
「だが、済まない……私ではどうしようも出来ないのだ」
「お父様……! で、でも……!」
「スミス侯爵はおそらく、自分の懇意にしている貴族に情報を流しているでしょうね……そうなってしまっては、私達ではどうしようも出来ないのは事実だわ」
「お母様まで……それでは、バレット様とマーガレットの婚約を承諾するしかないのですか!?」
そんな理不尽なことがあって良いのだろうか? いくら相手が侯爵様とはいえ……私達の家系も伯爵家に属するのだから、決して低い階級ではないはずなのに。
「済まない、フリージア。お前の怒りはもっともだと思うが……どうしようもないのだ」
「フリージア……本当にごめんなさい……」
「お父様、お母様……」
お父様もお母様も抵抗する気は最初からないようだった。確かに二人の立場を考えれば仕方ないのかもしれない。
フォルス伯爵家の存続を考えるのが最優先だろうし……結果的には、マーガレットがバレット様の婚約者になるのだから、それで良しと考えているのだろう。家の存続を最優先にするならば、スミス侯爵家と争うのは得策ではない……その気持ちは分からないではないけれど。
「お父様……私は部屋に戻ります……」
「あ、ああ……そうだな。しばらくはゆっくりすると良い」
「はい、そうさせていただきます……」
バレット様は私の悪い噂を流しているはず……しばらくは、舞踏会などへの出席も考えた方が良いかもしれないわね。私の気持ちはますます暗くなっていった……。
--------------------------
「フリージア様、お気持ちはお察しいたします……本当に大変でございましたね」
「ありがとう。慰めてくれるのは貴方くらいよ、ラクア」
私の専属メイドであるラクアが私を気遣ってくれていた。彼女の言葉は幾らかの安らぎに繋がっていると思う。
「しばらくは舞踏会にも出席できそうにないわ……引きこもりの生活が続くかもしれないわね」
「フリージア様、失礼ながら申し上げます。引きこもりの生活というのは、より心が廃れてしまうと思うのです……よろしければ、思い出の地に足を運ぶなどしては如何でございますか?」
「思い出の地……?」
「はい、左様でございます」
思い出の地、か……私の場合は何処になるのだろう? やっぱり、ワンダースワル湖かしら。あそこは私の初恋の相手と初めて出会った場所でもあるし。今の荒んだ心を癒すには丁度良い場所かもしれないわね。
「フリージア……事実なのだな?」
「はい。お父様、お母様……事実でございます……」
私は屋敷に戻り、婚約破棄の事実を両親に告げた。二人とも、とても心配してくれているようだ。でも、意味がないことも分かってる……なぜなら、あのマーガレットがこの状況を想定していないはずがないからだ。
同時にバレット・スミス侯爵もそんなことを予想出来ないとは思っていなかった。
「お父様……私はマーガレットを虐めたことなんて、一度もありませんよね!?」
「そうだな……確かにその通りだ」
お父様は頷いてくれている。しかし、その表情はとても暗かった。
「だが、済まない……私ではどうしようも出来ないのだ」
「お父様……! で、でも……!」
「スミス侯爵はおそらく、自分の懇意にしている貴族に情報を流しているでしょうね……そうなってしまっては、私達ではどうしようも出来ないのは事実だわ」
「お母様まで……それでは、バレット様とマーガレットの婚約を承諾するしかないのですか!?」
そんな理不尽なことがあって良いのだろうか? いくら相手が侯爵様とはいえ……私達の家系も伯爵家に属するのだから、決して低い階級ではないはずなのに。
「済まない、フリージア。お前の怒りはもっともだと思うが……どうしようもないのだ」
「フリージア……本当にごめんなさい……」
「お父様、お母様……」
お父様もお母様も抵抗する気は最初からないようだった。確かに二人の立場を考えれば仕方ないのかもしれない。
フォルス伯爵家の存続を考えるのが最優先だろうし……結果的には、マーガレットがバレット様の婚約者になるのだから、それで良しと考えているのだろう。家の存続を最優先にするならば、スミス侯爵家と争うのは得策ではない……その気持ちは分からないではないけれど。
「お父様……私は部屋に戻ります……」
「あ、ああ……そうだな。しばらくはゆっくりすると良い」
「はい、そうさせていただきます……」
バレット様は私の悪い噂を流しているはず……しばらくは、舞踏会などへの出席も考えた方が良いかもしれないわね。私の気持ちはますます暗くなっていった……。
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「フリージア様、お気持ちはお察しいたします……本当に大変でございましたね」
「ありがとう。慰めてくれるのは貴方くらいよ、ラクア」
私の専属メイドであるラクアが私を気遣ってくれていた。彼女の言葉は幾らかの安らぎに繋がっていると思う。
「しばらくは舞踏会にも出席できそうにないわ……引きこもりの生活が続くかもしれないわね」
「フリージア様、失礼ながら申し上げます。引きこもりの生活というのは、より心が廃れてしまうと思うのです……よろしければ、思い出の地に足を運ぶなどしては如何でございますか?」
「思い出の地……?」
「はい、左様でございます」
思い出の地、か……私の場合は何処になるのだろう? やっぱり、ワンダースワル湖かしら。あそこは私の初恋の相手と初めて出会った場所でもあるし。今の荒んだ心を癒すには丁度良い場所かもしれないわね。
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