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3話 再会 その1
しおりを挟む「なんだか久しぶりね……ここに来るのも……」
「左様でございますね、フリージア様」
私は専属メイドのラクアを連れて、思い出の地でもあるワンダースワル湖に来ていた。この湖は透明度だ高いことで有名であり、現在はフォルス伯爵家の領地になっている。
「ここに来ると……なんだか、気分が晴れて来るわ……本当に良い自然ね」
「おっしゃる通りかと存じます。フリージア様にとって、この場所は思い出の地でございましょう」
「ま、まあ……そうなんだけれど……」
初恋の人であるフェリックス・ドストレイ公爵と初めて会ったのがこの場所になる。当時はお互いに子供だったし、フェリックス様も公爵という立場ではなかったけれど。そう考えると、本当に懐かしいわね……ワンダースワル湖がドストレイ公爵家から、フォルス伯爵家の領地に変わったのも、その頃だったはずだし。
領地が他の貴族に渡されることなんて、非常に珍しいことだ……ワンダースワル湖周辺の地域が私達の領地になった経緯も、詳しくは知らされていない。そういう意味でも、フェリックス様との出会いは、私にとって大きな出来事だったと思える。
年齢は私が19歳で、フェリックス様は21歳になるはずだ……。最近は出会うことがないけれど、もしかして避けられているのだろうか? なんて思っていた時期もあったっけ。実際には、フェリックス様のお父上が事故に遭ってしまった為に、その後の当主活動が難しくなり、彼が若くして当主になった影響が大きいのだろうと思うけれど。
21歳で公爵という立場になったフェリックス様はとても苦労されているのだと思う。私の身分では想像することしか出来ないけれど……。
バレット・スミス侯爵と婚約してからも、心の隅では彼のことを気に掛けていた。恋愛……というよりは、幼馴染を心配するという意味合いでだけれど。フェリックス様は大丈夫なのだろうか? 時間が出来ている今は、より強く思ってしまう。
「本当にこの湖は綺麗ね……ワンダースワル湖に来て良かったわ。心が癒されるようで」
「それは良かったですね、フリージア様。私も嬉しく思います」
「ありがとう、ラクア。心配を掛けてしまったわね」
「いえ、とんでもないことでございます」
専属メイドであるラクアに気を遣わせるのは、貴族令嬢として失格ではないか。彼女だけでなく、使用人達にも心配を掛けない為にも、早く立ち直らないとね。私はそう決心していた。
そんなことを考えながら、湖のほとりを歩いていたのだけれど……同じく歩いていた人物とぶつかりそうになってしまった。
「あ、申し訳ございません……!」
「いえ、こちらこそ……あれ?」
「えっ……?」
ぶつかりそうになった人物……お互いに視線が交錯した。その瞳には見覚えがあったのだ。
「まさか……フェリックス様!?」
「君は……フリージア嬢か!?」
お互いに非常に驚いた声をあげていた。まさか、こんなタイミングでフェリックス様と再会することになるなんて……誰が予想しただろうか? 私はとても信じられなかった。
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