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8話 舞踏会 その2
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「大丈夫か、フリージア嬢? 落ち着いて臨めば何も問題はないと思うぞ? リラックスが重要さ」
「あ、はい……承知いたしました」
現在の私にとって、舞踏会は完全に敵地でしかない。フェリックス様が一緒でなかったら、絶対に足を運ぶことは出来なかっただろう。それ程に恐怖の場所なのだ。
バレット・スミス侯爵によってそう作り変えられてしまっているから。想像で語る部分も多いけれど、マーガレットへの虐めは確実に広まっているはずだ。
「……」
「……」
明らかに私を見ている視線を感じる。フェリックス様が隣に居るせいか、特に話題にはしていない感じだれど、歓迎している風でもない。まあ、貴族は他人の噂話が大好きだしね……私も含めて。
完全にホームではなくアウェイということか……。
「よし、フリージア嬢。彼から落としてみるか」
「えっ? 彼とは……?」
「いいから、ついて来てくれ」
「か、畏まりました……」
私は黙ってフェリックス様について行った。前方に居た相手は……。
「お久しぶりですね、ルジアク・ボトム伯爵」
「これはフェリックス・ドストレイ公爵ではないですか……! お久しぶりですね!」
「ええ、お久しぶりです。こうして会えて、嬉しいですよ」
「私もです、フェリックス様」
ボトム伯爵と話しているフェリックス様……その光景は非常に微笑ましいのだけれど、私に視線が向いた時、彼の顔色が変わった。
「あなたは……フリージア・フォルス伯爵令嬢、ですね?」
「は、はい……左様でございます、ボトム伯爵」
ボトム伯爵の視線はまったく私を歓迎していなかった。まあ、妹のマーガレットを虐めている噂を聞いていれば、そういう態度になることも仕方ないのかもしれないけれど……ハッキリ言って気分は良くない。
「フェリックス様……なぜ、フリージア嬢と一緒に居るのですか?」
「それはどういう意味ですか?」
「いえ……フェリックス様であれば、お分かりでしょう? 彼女の噂はかなり有名ですので……」
「まさか、ボトム伯爵は彼女が妹を虐めているという噂を信じているのですか?」
「えっ……? いや、しかし……!」
「根拠も何もない噂だけを信じるのはどうかと思いますよ? あなたも伯爵という地位を得ているのでしたら、信憑性が100%になるまでは、全てを疑って掛かるべきだ」
直球だった……フェリックス様の言い分は正論だけれど。まさか、ここまでの直球を放り投げて来るなんて思いもしなかった。
「噂を信じるな、と? あの噂は真実ではないのですか?
「確定的に証拠を出すことは出来ませんが……フリージアの人間性と、バレット殿、マーガレット嬢の婚約の仕方を考えれば、限りなく嘘に近いでしょうね。少なくとも、私はそう信じています」
「ふぇ、フェリックス様……」
彼の言葉はボトム伯爵だけでなく、その周りに居る貴族にも聞こえているようだった。何名か聞き耳を立てている人が居るし。フェリックス様が公爵だから、というのもあるのだろうけれど、説得力を感じさせるのでしょうね。
なんだか分からないけれど、フェリックス様の隣に居るだけで、私の噂は消失していきそうなそんな予感さえしていた……。
「あ、はい……承知いたしました」
現在の私にとって、舞踏会は完全に敵地でしかない。フェリックス様が一緒でなかったら、絶対に足を運ぶことは出来なかっただろう。それ程に恐怖の場所なのだ。
バレット・スミス侯爵によってそう作り変えられてしまっているから。想像で語る部分も多いけれど、マーガレットへの虐めは確実に広まっているはずだ。
「……」
「……」
明らかに私を見ている視線を感じる。フェリックス様が隣に居るせいか、特に話題にはしていない感じだれど、歓迎している風でもない。まあ、貴族は他人の噂話が大好きだしね……私も含めて。
完全にホームではなくアウェイということか……。
「よし、フリージア嬢。彼から落としてみるか」
「えっ? 彼とは……?」
「いいから、ついて来てくれ」
「か、畏まりました……」
私は黙ってフェリックス様について行った。前方に居た相手は……。
「お久しぶりですね、ルジアク・ボトム伯爵」
「これはフェリックス・ドストレイ公爵ではないですか……! お久しぶりですね!」
「ええ、お久しぶりです。こうして会えて、嬉しいですよ」
「私もです、フェリックス様」
ボトム伯爵と話しているフェリックス様……その光景は非常に微笑ましいのだけれど、私に視線が向いた時、彼の顔色が変わった。
「あなたは……フリージア・フォルス伯爵令嬢、ですね?」
「は、はい……左様でございます、ボトム伯爵」
ボトム伯爵の視線はまったく私を歓迎していなかった。まあ、妹のマーガレットを虐めている噂を聞いていれば、そういう態度になることも仕方ないのかもしれないけれど……ハッキリ言って気分は良くない。
「フェリックス様……なぜ、フリージア嬢と一緒に居るのですか?」
「それはどういう意味ですか?」
「いえ……フェリックス様であれば、お分かりでしょう? 彼女の噂はかなり有名ですので……」
「まさか、ボトム伯爵は彼女が妹を虐めているという噂を信じているのですか?」
「えっ……? いや、しかし……!」
「根拠も何もない噂だけを信じるのはどうかと思いますよ? あなたも伯爵という地位を得ているのでしたら、信憑性が100%になるまでは、全てを疑って掛かるべきだ」
直球だった……フェリックス様の言い分は正論だけれど。まさか、ここまでの直球を放り投げて来るなんて思いもしなかった。
「噂を信じるな、と? あの噂は真実ではないのですか?
「確定的に証拠を出すことは出来ませんが……フリージアの人間性と、バレット殿、マーガレット嬢の婚約の仕方を考えれば、限りなく嘘に近いでしょうね。少なくとも、私はそう信じています」
「ふぇ、フェリックス様……」
彼の言葉はボトム伯爵だけでなく、その周りに居る貴族にも聞こえているようだった。何名か聞き耳を立てている人が居るし。フェリックス様が公爵だから、というのもあるのだろうけれど、説得力を感じさせるのでしょうね。
なんだか分からないけれど、フェリックス様の隣に居るだけで、私の噂は消失していきそうなそんな予感さえしていた……。
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現実で考えるとおかしくはなると思いますよ
例えば、クラスで虐めがあったとして被害者がその虐めの証拠を出さないといけないというのは
加害者にとって有利過ぎますから
クラス虐めの場合は加害者が権力強くてその後の復讐とかもありますし
その辺って難しいですよね
周りの人間の証言とかになるんでしょうけど
自分達の浮気を誤魔化したい為に私が虐めているという噂を流したっていう噂を流してやれば良いw
妹とすぐ婚約したなら、どうしてもその家と婚姻を結ぶ必要がない限りおかしい話だしw
確かに……妹とすぐに婚約するなら、浮気と見られるかもしれませんしね