婚約破棄するのは良いんですけど、瞬間記憶の能力で貴方を助けていたことをお忘れですか?

ルイス

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2話 メリーナの幼馴染 その1

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「はあ……なんだか、意気消沈って感じかしら……」


 私は書斎に籠りながら読書に励んでいた。瞬間記憶があるので過去の書物は全て覚えているけれど、新しい本を読んで情報をアップデートしていくのは重要な作業だから。

 ただし、婚約破棄のダメージは想像以上に大きく、外へ出る元気は今のところなかった。

「今度の舞踏会参加につきまして、メリーナ様は如何なされるのですか?」

「出ないわけにはいかないわね。それが私の責務なんだし」

「メリーナ様……」


 いくら婚約破棄で意気消沈していても、開催される舞踏会には出席する必要がある。そうでなければ、セラスタ伯爵家の名に傷が付いてしまう可能性があるからだ。私はとにかく次の舞踏会までに気持ちを戻す必要に迫られていた。

 今の気分のまま出席したとしても、顔つきが大変なことになりそうだからだ。


「はあ……どうしてこんなことになったのかしら」

「メリーナ様は何も悪くないと思います。今回の件は明らかにアンバス様に非があるでしょう」

「ありがとう、ネル。そう言って貰って嬉しいわ」

「とんでもないことでございます、メリーナ様」


 彼女は私より4歳上の21歳。そのため、私にとっては姉さんのような存在だった。私には兄さまが居るけれど、今は他国に用事で出掛けているからね。そんなこともあってか、彼女には何でも相談してしまうのだった。


「メリーナ、入っても大丈夫か?」

「お父様? はい、大丈夫ですが……」

「失礼するぞ、メリーナ」


 その時、お父様が私の部屋を訪れた。一体、何の御用かしら?

「これは旦那様」

「ネルも一緒だったか」

「お父様、如何なさいましたでしょうか?」


 お父様は何やら真剣な表情になっている。もしかすると、婚約破棄の件で進展があったのかしら?


「もしかして婚約破棄の件でしょうか?」

「いや、それとは直接は関係ないのだが……お前の幼馴染である、クレイブ・バーンフェルト様がお越しになっているぞ」

「えっ……クレイブがですか?」


 お父様のその言葉には私も驚いてしまった。ネルも驚いているようだ。バーンフェルト公爵家と言えば、かなりの名家になる。クレイブはそこの長男だったのだけれど、とある理由があって早くに継いだ形となっていた。別に両親が亡くなったとかそういう話ではないのだけれど……。

 クレイブが公爵になって以降は会えていなかったけれど、まさかこんなタイミングで屋敷を訪れてくれるなんて。

 流石に会わないわけにはいかないけれど、私は彼にどんな顔をすれば良いのだろうか……?
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