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6章:8歳になったらしい

54話:第三王子の違和感

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零維王子のその言葉に分かりやすく白マントの男が動揺した。

「いや、しかし、それは、加護・契約を持ちしている者達にとってはあまりいい事だとは思えません。たとえ、王様の許しを得たからと言って見せしめにする訳にはっ!」

その言葉を聞いた瞬間零維王子の表情が不機嫌そうに歪む。

「なんで?この僕が言ってるんだよ?下民なお前らが僕に口答えするなよ!!」

その言葉に会場にいた者たちが驚いた顔をした。

私もその一人だ。

それもそうだ。

第三王子の零維様は甘えん坊で我儘ではあったけれど、自分の権力を使ったり王様の権力で誰かを脅かしたりなどしない。

ましてや平民を下民扱いなどしないとても好かれやすい王子だ・・・・・・とお父様は言っていた。

だから、今回第三王子がこんなことを発言するなんてことは異常なのだ。

第三王子と初めて会う湖乃美ちゃんは眉をひそめて嫌そうな顔をしている。

今の王子を見ればそんな顔をするのも当然だよね。

・・・・・・あれ?そう言えばなんでお父様は紅葉が皆に見られるって知ってたんだろう?

ふと、そんな疑問が頭の中に浮かんだ。

いや、でも、あの口振りからだと王族の方に見られるってことを知ってたのか。

でも、白マントの男の動揺ぶりを見ると男は見られるということを知らなかった。

お父様は昨日、王様に会ってて知ったんだよね。

きっと。

じゃあ、情報が行き届いていなかったのかな?

でも、ここは城だし情報源は王様だし。

情報が行き届かないってことはないと思う。

じゃあ、なんで?

いろんな疑問が頭の中を埋めつくしていると肩をトントンっと誰かに叩かれた。

私は後ろをむく。

「!!!紅葉!」

後ろを向くと私と同じ背丈の白いふわふわ髪を耳下横でひとつに結んだ紅葉がいた。

「か、可愛い!!可愛いよ紅葉!」

あまりの可愛さにぎゅっと紅葉に抱きつく。

結んだところ見たことなかったから嬉しいなー!

すっごく可愛い!!ルビー見たいなキラキラした瞳も映えていて良き。

「な、な、何言っているのよ馬鹿!そ、そんな褒めたって・・・褒めたって何も出ないんだからね!!!」

ばっ!と私を引き離してふいっと真っ赤な顔を横に向けてしまう紅葉。

うふふふふふふふふふ~!ツンデレは可愛いですなー!!

ニヤニヤと紅葉を見ていると後ろから視線を感じる。

後ろを振り向くとむくれ顔の湖乃美ちゃんと驚いた顔をした雪都様がいた。

「え、え~となんでそんなにむくれて驚いているんデスカ?」

私がそう聞くと湖乃美ちゃんはむくれた顔をさらにむくれさせて言った。

「ずるいですぅぅぅぅ!!!私も璃杏ちゃんに抱きつかれたいのにいい!!」

と、謎の言葉を発していた。

「え、えっと、璃杏様。その方は?」

困った顔をして言う雪都様。

あ、そうだね!まずは紹介からだよね!!

「えっと・・・「璃杏ちゃん。私が言うわ。」・・・わかった!」

紹介しようと思ったら紅葉がそう言ってくれたので素直に役目を譲る。

「初めまして。私は光の精霊の紅葉ですわ。よろしくお願い致しますわね。」

ニコッとお上品に微笑む紅葉。

「はい。よろしくお願いします。紅葉様。」

紅葉に負けず劣らずこれまたお上品に微笑み返事をする雪都様。

「それと、湖乃美ちゃん・・・だったかしら?ひとつ聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」

そう言って湖乃美ちゃんの方を向く紅葉。

「は、はい!なんですか?」

むくれ顔から一変緊張した面持ちで紅葉を見る湖乃美ちゃん。

「もしかして、見えてる?闇魔法。」

そう、言った。

その言葉に湖乃美ちゃんはビクッと身体を震わす。

「大丈夫よ。私にも見えているから。」

そう言って優しく湖乃美ちゃんの頭を撫でる紅葉。

少し息を吐き湖乃美ちゃんは、はい。見えますと答えた。

かく言う私は話についていけていなかった。

闇魔法が見える?まず、魔法って見えるの!?

「どういうことなんでしょうね?魔法って見えるもんなんですかね?」

私は雪都様にそう話しかけた。

「僕にも分かりません。でも、光魔法は闇魔法を感知できるとか教わりましたので、そういったこと話しているのかと。」

「へ、へーそうなんですね。」

私は遠い目をして答えた。

あっれー?そんなこと習ったっけ?

記憶を色々と探る。

魔法学の先生が言ってたような言ってなかったような?

必死に思い出そうと頭を回転させていると紅葉に呼ばれた。

「璃杏ちゃん。貴女なら感知できるんじゃない?を。第三王子に意識を集中させて。」

そう言って意味ありげに微笑んだ紅葉。

誰のものか?

疑問に思いながらも私は第三王子に視線を向ける。

・・・・・・なんか、すごく粘ついて気持ちわるい感じがする。

そう言えばこの感じ前もどこかで。

思い出そうと必死に記憶を探る。

「ああ!もういいだろ!?なんなんだよ!お前ら!!そんなに言うなら無理矢理でも見せてやる!!おい!!月鍵璃杏こっちに来い!!」

そう、零維王子が叫びながら私の名を叫んだ。

ずっと白マントの男と口論してたみたいだが、堪忍袋の緒が切れたらしい。

あんなに怒っている王子に反論したなら殺されかねないかもしれない。

私は王子の元へ歩く。

階段を上がり王子の前までたどり着き口を開く。

「零維様。私は何をすればいいのでしょうか?」

私はそういい微笑む。

私の微笑みを見て少しビクついたけれどニヤッと怪しげに笑った王子。

私は眉を顰める。

さっきからずっとこの零維王子は零維王子らしいことを何一つとしてやっていない。

顔・声・背丈・口調などは一切変わっていない。

でも、表情や言葉が王子らしくないのだ。

「もちろん。君の契約精霊を見るためだよ!決まってるじゃん!!さあ、早く水晶に手を翳してよ!ね!!化け物で忌み子さん!!」

それはそれは楽しそうに笑いながら言う零維王子。

その言葉に思わず体を固くする。

もちろん、その言葉を聞いて固まった者は璃杏だけではない。

紅葉は怒りに充ちた顔で王子を睨む。

湖乃美は驚いた顔で璃杏を見る。

雪都は辛そう悔しそうに璃杏を見つめる。

私は息を少し吐く。

「では、今からあの水晶にてをかざせばいいんですね。」

「そうだよ!」

楽しそうに笑う王子。

私は水晶に近づこうと一歩踏み出す。

けど、ふと王子から強く感じた黒く粘ついた気持ちわるい感じに思い当たる節があり王子の方を振り向く。

確かめられずにはいられなかった。

何故か、すごく嫌な予感がしたのだ。

このまま、何も言わずに水晶に近づいてはいけないとそう思った。

「あの・・・貴方、零維王子じゃなくて・・・・・・扇木和羽ですよね?」

私は王子に向かってそう言った。

その言葉は意外にも会場に響いたらしくシーンと会場は静まり誰かがえっと驚きの声を上げていた。
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