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6章:8歳になったらしい

58話:精霊界へご招待

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「───。────。」

誰かの声が聞こえる。

どこか懐かしいようなそんな声。

「ん~・・・あと・・・・・・1時間。」

なんだか、すごく心地よくてもう少し寝たい気分になりそんなことを呟く。

「!?長っ!!ちょっと起きなさいよ!!璃杏ちゃん!!!1時間も寝ないで!!」

慌てたような声が近くで聞こえる。

そういえば、ベッドにいるのかと思ったけど背中の部分が固くてお尻も少し痛い。

じゃあ私が今いるのって・・・・・・・・・はっ!!!

朦朧とする意識の中で思い出したのは紅葉に呼ばれてここに来たことだった。

そうだった!それで紅葉がまだ居なくて風が気持ちよくて目を瞑っていたら・・・・・・ね、寝てたあぁぁぁぁあ!!!

完全に記憶を思い出し私の目も意識もはっきり鮮明になる。

そして、完全に開いた目の先にいたのは・・・呆れた目をした紅葉がいた。

そうだった!紅葉を待ってたんだ!ということは私は・・・私は!!紅葉を逆に待たせちゃったってことかあああ~!!!

待ってた人を逆に待たせるなんてええぇぇ!!

「ご、ごめん!!紅葉!待たしちゃって!それと、起こしてくれてありがとう。」

私は座っていた木から立ち上がり紅葉に待たせたことを謝り起こしてくれたことにお礼を言った。

「そんなこと気にしないでいいわよ。私も待たせちゃったしお互い様よ。」

優しく微笑む紅葉。

紅葉に感謝しつつ、ひとつだけ私の中で疑問が生まれた。

紅葉はしっかりしているから光の魔法のレッスンの時だって、いつも私より早くて私が紅葉より先に来たことなんて無かった。

だから、なんで今日は遅れたんだろう?

私がその疑問を口にする前に紅葉が言った。

「今日遅れちゃったのはね、準備してたからなのよ。」

少し困った顔をしながら言う紅葉。

準備・・・準備?何の準備だろう?

紅葉が言ってるんだから精霊界の中で何かの準備があったんだろうけど、なにか大事な用事かな?

それだったら、私に話すことも今日じゃなくても良かったんじゃ。

「えっと、紅葉。大事な用事があるんだったら話はまた別の日でもいいよ?」

そう思って紅葉に伝えると紅葉は驚いた表情をした。

「え!?あ、そういえば書いてなかったわね。実はね、璃杏ちゃんのために準備をしてたのよ。」

???私のため?どういうことだろう?

「今日話したいことはね。1000年前に精霊界で起きた事件のことよ。」

紅葉は少し暗い顔をして言った。

・・・・・・1000年前に精霊界で起きた・・・事件・・・。

「!!って!もしかして、それって結恵さんと契約してた美結さんのこと?」

1000年前に起きた事件。

それは、結恵さんの日記に書かれていた。

実は今も結恵さんの日記を時々見ているので大体の話は頭に入っている。

少しでも役に立てればと思って。

本人に聞ければいいんだけど、一回聞いたときに辛そうな顔をしながら話してくれたから有難かったけど辛い思いをしながら話して欲しくなかったからそれ以来聞けないでいる。

でも、その人の容姿はわかった。

漆黒の髪に水色の瞳をした男の人で上位の闇の魔法を使えるということがわかった。

それだけ分かっただけでも進歩だけどそれ以上のことは分かっていない。

調べられることは闇魔法のことだった。

それに、まさか、紅葉が話してくれるだなんて思っていなかった。

「ええ。結恵ちゃんから聞いたのよ。璃杏ちゃんが自分の為に手伝ってくれてるって。」

嬉しそうに話す紅葉。

「でも、心配そうに話してたから私から話して璃杏ちゃんが無理に行動しようとするなら話したくなかったのよ。・・・まあ、でも、話す前にできる限りのことをしている時点で話した方が良かったのかもしれないわね。って事で璃杏ちゃんを精霊界へ招くことにしたの。」

少し視線を逸らしながら話したあとニコッと笑いながら手を叩く紅葉。

その行動はとても可愛いけど・・・なんだろう、なんか、軽くない?

いや、聞けるのはいいけど、嬉しいけど!!

なんか、なんかなあ~?

「あのー・・・えっと、あ、ありがとうございます。」

少々モヤモヤするも教えてくれるのでお礼を言う。

そこでふと結恵さんの日記に書かれていたことを思い出した。

───精霊界は魔力が強ければ強いほど居心地が良くなってしまう───

みたいなことが書いてあったような?

「あのー、紅葉さーん。私が精霊界に行っても大丈夫なの?」

なんとなく不安になり片手を挙げ紅葉に質問する。

「それなら大丈夫よ!実は璃杏ちゃんのために長く入れる場所を作ったの!!だから、平気よ!!さあ、行きましょ!!」

どこか意気揚々としている紅葉は私の手を引き森の奥へ走る。

♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟

走り続けること約6分。

「ぜえー・・・・・・ぜえー・・・はあ、はあ・・・し、死ぬ・・・・・・うえぇぇ~血の味がするよ~。・・・はああああああ・・・・・ふぅ。」

私は膝に手を付き死にかけていた。

お父様から逃げることはあってもこんな・・こんな!!長い距離走ったことないよぉぉぉぉ!!!

「全く、体力ないわね。情けないわよ。」

息切れひとつしていない声が上から聞こえる。

くそーなんで同じ距離と時間走ってて息切れひとつしてないのさあ~!!

恨めしそうに紅葉を見上げる。

「・・・・・・はあ、なんでこう人間って体力に限界なんてあるのよ。」

くっそおー!そんなの知らないよおおお!!

「私だって知りたいやい!!」

ガバッと顔を上げ紅葉の肩を叩く。

「わー。気持ちいいわねー。」

むむむむむうぅぅ!!

なんかイラッとしたのでもっと強く叩く。

「ほらほらー諦めなさーい。それより・・・はい!こっちを見て。」

私の両腕を掴み肩から離して私の肩を逆に掴みくるっと横に向ける。

「!!!!・・・・・・すごい。」

横にあったのは茶色の大きなトンネル型の綺麗な模様が描かれた扉があった。

それに、どこか不思議な雰囲気が漂っていた。

でも、その雰囲気は怖いものではなくてどこか心地よく感じるものだった。

「ふふ。じゃあ、入りましょうか。」

紅葉は私の手を引き扉を開けた。

そして、紅葉と私は扉の中へ入って行った。
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