誰か兄たちの暴走を止めてください

灰猫あさ

文字の大きさ
1 / 3
第1章

ドン引きです

しおりを挟む

「アマリリス~…死なないでおくれ…どうか、どうか目を覚まして…。」

大の大人の男3人の泣き叫ぶ声がこだまする。アマリリスと呼ばれた私ことヘルリッヒ公爵家令嬢アマリリス・ヘルリッヒはげんなりとした表情でそんな男達を見ていた。
頭を打って気を失っていたらしい私はとっくに目を覚ましているのだが、取り乱している彼等はそれに気づく様子もなくおいおいと大きな声をあげて泣き叫んでいる。

「…3人とも、その辺にしておかないとアマリリスちゃんがドン引きしているわ。」

泣き叫ぶ男達の横で微笑ましいものでも見るかのようにニコニコと微笑む美しい女性、ヘルリッヒ公爵家夫人ネリネはクスクスと笑い声を漏らしながら3人を窘める。
お母様、絶対に楽しんでますよね。

母の声にハッと顔を上げた男達は一斉にガバッと私に抱きつき再び泣き出した。

「あぁ…私の可愛いアマリリス…。良かった…目を覚まさなかったらどうしようかと思ったよ…。」

そう言いながら情けない表情で髭面を私の頬にスリスリしてくる中年の男性が、何を隠そうヘルリッヒ公爵である。つまり私の父親だ。
こんなのが王家に継ぐ家柄であるヘルリッヒ家の当主でこの国の宰相だとかこの国は大丈夫なのかと心配になる。
いや、ホントにマジで。

「ごめんよ、ごめん…アマリリス…。天気が良いから庭を散歩しようなんて誘った僕が悪かったんだ…。」

整った顔立ちをくしゃくしゃにしながら自分を責めているのは、長兄のグリフィニア。
言わずもがなヘルリッヒ公爵家嫡男である。
白に近い銀髪に晴天の空のような青い瞳、細く見えるが程よく筋肉のある身体。所謂細マッチョイケメンである。
当主だけでなく時期当主まで残念とか本当に大丈夫か、ヘルリッヒ家…。

「いえ、兄上は悪くありません。…私が…私が…っ、綺麗な蝶が飛んでいるとアマリリスに教えたばっかりに…っ…。」

次兄よ、お前もか。お前も残念なのか。
グリフィニアの言葉を否定し、自分こそが悪いのだと訴えているのはヘルリッヒ公爵家次男のユーリクレス。
長兄と同じく整った顔立ちのユーリクレスは、グリフィニアよりも少し暗めの灰色がかった銀髪に深海のような青の瞳をしている。
長兄のように華奢ではないが、ムダな肉のない鍛えられた身体は高い身長も相まって男らしくカッコいい。
…あくまで“外見は”の話である。

兄2人が外見はイケメンなのに中身が残念なのは父親からの遺伝だろうか。
父も外見はそこそこ整っており、仕事の時はキリッとして厳格な雰囲気を放っている為、それに騙されている貴婦人達からは今も人気があるらしい。
ちなみに母は父の残念なところの方に惹かれて結婚したようである。良い歳した髭面のオッサンが取り乱している姿を可愛いと言ってのけるのだから、母はかなり変わった人だと思う。

「お父様もお兄様方も転んだくらいで大袈裟ですわ…。」

私はため息混じりに3人を宥める。
…お母様はニコニコ眺めてないで助けてください。

「「「大袈裟なんかじゃない!!」」」

うわぁ…3人綺麗にハモりやがった…。

「このまま二度と目を覚まさないんじゃないか…死んでしまうんじゃないかと考えたら、胸が張り裂けてしまいそうだった…」

父親の悲痛な叫びに2人の兄もうんうんと同調する。
気を失うくらいに頭を強打した割には別に怪我もなく元気だけど、あなた達のせいでだんだん頭が痛くなってきた気がするよ。うん。
誰か早くこの茶番を終わらせて欲しい。

「お取り込み中大変申し訳ございませんが…。」

このカオスな状況を見兼ねたらしい執事長のロベルトが、騒がしい男ども3人とそれを面白がっている母に声をかける。

「お嬢様は先ほどお目覚めになられたばかりですし、安静にされた方がよろしいかと存じます。旦那様方のご心配はよくわかりますが、あまり騒がしくなされてはお嬢様のお怪我にさわります。」

“私の怪我にさわる”という言葉が効いたらしく、静かになった男3人はロベルトに促されて退室して行った。
別に特に怪我はしてないけど…、ロベルト、グッジョブ!

「騒がしくしてごめんなさいね、アマリリスちゃん。」

謝るなら3人を止めて欲しかったです、お母様。というか、本気で謝ってないよね。
めっちゃ楽しんでる顔だよね、それ。
変らずニコニコしたまま、3人の後に続いて母も退出した。

あぁ…つっかれたぁ…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

処理中です...