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第1章
ドン引きです
しおりを挟む「アマリリス~…死なないでおくれ…どうか、どうか目を覚まして…。」
大の大人の男3人の泣き叫ぶ声がこだまする。アマリリスと呼ばれた私ことヘルリッヒ公爵家令嬢アマリリス・ヘルリッヒはげんなりとした表情でそんな男達を見ていた。
頭を打って気を失っていたらしい私はとっくに目を覚ましているのだが、取り乱している彼等はそれに気づく様子もなくおいおいと大きな声をあげて泣き叫んでいる。
「…3人とも、その辺にしておかないとアマリリスちゃんがドン引きしているわ。」
泣き叫ぶ男達の横で微笑ましいものでも見るかのようにニコニコと微笑む美しい女性、ヘルリッヒ公爵家夫人ネリネはクスクスと笑い声を漏らしながら3人を窘める。
お母様、絶対に楽しんでますよね。
母の声にハッと顔を上げた男達は一斉にガバッと私に抱きつき再び泣き出した。
「あぁ…私の可愛いアマリリス…。良かった…目を覚まさなかったらどうしようかと思ったよ…。」
そう言いながら情けない表情で髭面を私の頬にスリスリしてくる中年の男性が、何を隠そうヘルリッヒ公爵である。つまり私の父親だ。
こんなのが王家に継ぐ家柄であるヘルリッヒ家の当主でこの国の宰相だとかこの国は大丈夫なのかと心配になる。
いや、ホントにマジで。
「ごめんよ、ごめん…アマリリス…。天気が良いから庭を散歩しようなんて誘った僕が悪かったんだ…。」
整った顔立ちをくしゃくしゃにしながら自分を責めているのは、長兄のグリフィニア。
言わずもがなヘルリッヒ公爵家嫡男である。
白に近い銀髪に晴天の空のような青い瞳、細く見えるが程よく筋肉のある身体。所謂細マッチョイケメンである。
当主だけでなく時期当主まで残念とか本当に大丈夫か、ヘルリッヒ家…。
「いえ、兄上は悪くありません。…私が…私が…っ、綺麗な蝶が飛んでいるとアマリリスに教えたばっかりに…っ…。」
次兄よ、お前もか。お前も残念なのか。
グリフィニアの言葉を否定し、自分こそが悪いのだと訴えているのはヘルリッヒ公爵家次男のユーリクレス。
長兄と同じく整った顔立ちのユーリクレスは、グリフィニアよりも少し暗めの灰色がかった銀髪に深海のような青の瞳をしている。
長兄のように華奢ではないが、ムダな肉のない鍛えられた身体は高い身長も相まって男らしくカッコいい。
…あくまで“外見は”の話である。
兄2人が外見はイケメンなのに中身が残念なのは父親からの遺伝だろうか。
父も外見はそこそこ整っており、仕事の時はキリッとして厳格な雰囲気を放っている為、それに騙されている貴婦人達からは今も人気があるらしい。
ちなみに母は父の残念なところの方に惹かれて結婚したようである。良い歳した髭面のオッサンが取り乱している姿を可愛いと言ってのけるのだから、母はかなり変わった人だと思う。
「お父様もお兄様方も転んだくらいで大袈裟ですわ…。」
私はため息混じりに3人を宥める。
…お母様はニコニコ眺めてないで助けてください。
「「「大袈裟なんかじゃない!!」」」
うわぁ…3人綺麗にハモりやがった…。
「このまま二度と目を覚まさないんじゃないか…死んでしまうんじゃないかと考えたら、胸が張り裂けてしまいそうだった…」
父親の悲痛な叫びに2人の兄もうんうんと同調する。
気を失うくらいに頭を強打した割には別に怪我もなく元気だけど、あなた達のせいでだんだん頭が痛くなってきた気がするよ。うん。
誰か早くこの茶番を終わらせて欲しい。
「お取り込み中大変申し訳ございませんが…。」
このカオスな状況を見兼ねたらしい執事長のロベルトが、騒がしい男ども3人とそれを面白がっている母に声をかける。
「お嬢様は先ほどお目覚めになられたばかりですし、安静にされた方がよろしいかと存じます。旦那様方のご心配はよくわかりますが、あまり騒がしくなされてはお嬢様のお怪我にさわります。」
“私の怪我にさわる”という言葉が効いたらしく、静かになった男3人はロベルトに促されて退室して行った。
別に特に怪我はしてないけど…、ロベルト、グッジョブ!
「騒がしくしてごめんなさいね、アマリリスちゃん。」
謝るなら3人を止めて欲しかったです、お母様。というか、本気で謝ってないよね。
めっちゃ楽しんでる顔だよね、それ。
変らずニコニコしたまま、3人の後に続いて母も退出した。
あぁ…つっかれたぁ…。
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