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Main Story〜アルファな彼とオメガな僕。〜
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しおりを挟む足音もなく静かに部屋の扉が開かれる。入ってきたのはやっぱり崇陽だった。ベッドの上で悶ている僕に近づいてくると顔を覗き込んでくる。
その時にフワッと漂う香りにお風呂上がりだという事を知る。
「大丈夫…ではなさそうだな…」
そう言って困ったような雰囲気を醸し出しつつ、僕の腰を労るように撫でてくる。
「ぜんしんがキシんでる…いたい…」
「………すまん」
泣き言を言う僕にすまなさそうな顔をして頭を撫でてきた。その顔に多少の疲れは見て取れるものの、そういう事をする前に比べたらかなりスッキリしているように見えた。
「なんか…たかあき…げんきになった?」
「……それはそうだろ。ずっと禁欲して仕事をしていたからな。目の前に蒼…お前が居るのに手を出せない辛さときたら…もう、二度とそういう思いは味わいたくないな…それにー…いや、何でもない…」
しみじみとした声音でそう言った崇陽に思わず笑ってしまった。笑うと身体に響くからあまり笑えなかったけど…
全身が筋肉痛になったような感覚で今まで分からなかったけれど…首も凄く痛い事に気づく。
そして、何だか言い淀んだ崇陽の様子に疑問符が浮かぶ…
「たかあき…」
「な、何だ…」
僕の呼び掛けにギクリといったように動いた崇陽…らしくない事に少し目が泳いでいる。
「くびもいたい…」
「あ~、その…あ、アレだ。止まらなかったんだ。いや、違うか…いや、違わないのか?」
「なに?」
珍しく歯切れの悪い崇陽に不信感を覚える。僕の不穏な空気を感じ取ったのか…観念したように口を開いた。
「本当にすまない!実は覚えてないんだ。気づいたらお前の首から出血しているし…凄くドロドロだったし…俺に至っては凄くスッキリしていたし…それはもういろいろと…そんな俺と違って蒼は泣きながら意識を失っていたし…」
と言う崇陽の表情は今まで見たことないくらいに弱りきっていた。怒られた子どもはこういう顔をするのだろうか…と冷静な自分が心の内で語りかける。
それに、僕自身、怒っているわけではない。痛みはあるけれど…
崇陽自身、覚えていないくらい理性が飛んでいた事になる。それ程までにヨカったという事なのだろうか…
「えっと…ごめん。たかあき…ぼくもそんなにおぼえてない…」
いや、全く覚えていないわけではないけれど…上に跨るように乗っかっていたのは覚えてる。その後、崇陽が僕のナカに出すまでならだけど…
「どこまで覚えてる?」という崇陽の質問に恥ずかしくもあったが素直に答えた。
その後、少しだけホッとしたような雰囲気になった。
「そうか…俺もそこまでは完璧に覚えてる。」
そう言って身体を離そうとした崇陽に思わず手が伸びる。その反動で痛みが走ったけど…
崇陽は少しだけ驚いたような表情を浮かべたが直ぐに元の表情に戻った。
「大丈夫だ。俺はどこにも行かない。ソコの冷蔵庫から水を取り出すだけだ。」
喉が渇いているだろう?と言って僕を見た。確かに喉は渇いている。
この部屋から出ない。傍に居てくれると聞いた事によりホッとした僕はそっと崇陽を掴んでいた手を離した。
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