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第430話 考える事を止めてはならない、エキシビションマッチ配信
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『料理業務型アルファ・ゴーレムサポートシステム搭載型ゴーレム・モード"仕事率"』――通称、ワットちゃん。
洋食店を担当する、この肉料理大会のエキシビションマッチでレガリスと共に戦う事となった、洋食店経営型ゴーレム。
彼女の売りは、分裂。
ゲンエインジウムを使う事によって、身体をいくつもに分裂する事によって、1人で多くの作業を行う事が出来る。1人で10人分以上、いやススリアによる【スピリッツ】の追加調整によって100人分以上の作業を1人で出来るようになった。
そんな彼女が、レガリスというサポート役が居るとは言え、たった2人で料理を作ろうとしたらどうなるか? その答えは――――
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
~~ワット店 レガリス~~
はっ、速い! 速すぎます!
試合開始の直後、ワット店長は即座に調理を開始し始めた。
ジャガイモを切り始めたワット店長が、あまりにも速すぎる。
食べやすい大きさに切っているだけのはずなのに、その速度がまるで千切りかと思うくらい、とにかく素早いのだ。
「(それに、炒めるためのフライパンの準備も、ケチャップライスも、色々と準備を始めている!)」
玉ねぎを切りながら、妾は必死にアレンジレシピを考えるが、作業について行くことに精一杯である。妾は無心で考えながら、玉ねぎを手ごろな大きさに切り揃えるという領域に達していないのだから。
イルカの魚人族のように、2つの脳を持つならともかく、ユウレイツノテッポウエビの魚人族である妾は他者を率いる事に関しては突出した能力を持っているけれども、そのような曲芸が出来る段階にはなっていないのだから。
「――っ! 仕方ないわ! ワット店長! 玉ねぎの刻みもお願いします! そして、炒める前で待機! その間にプランを練ります!」
料理スキルに関して"信頼している"といってもらったワット店長を、早速使うような形になったのは心苦しい。しかしながら、このままではアレンジ以前の問題であるため、ワット店長に玉ねぎを刻むのをお願いする。
ワット店長は早速頷いたと思うと、妾が切っていた玉ねぎをサッと取って、ジャガイモと一緒に食べやすい大きさに切り始めた。
「(ワット店長の調理スピードからして、考えられる時間は10秒もないわ。その間に、アレンジを考えないと!)」
まず最初に頭の中に浮かんだのは、玉ねぎとジャガイモの食感を幾つか不揃いにすることで、食感にアクセントを加える事。火の通りやすさから考えたら不揃いにすることはあまり良くないんだけれども、食べるお客様の事を考えたら最後まで美味しく食べて貰うために、敢えてそういう遊び心を入れるのはアリかも知れない。
しかしながら、既に玉ねぎとジャガイモはワット店長の手によって食べやすい大きさに切り揃えられている。いまさら、大きさを不揃いにするのは、コーヒーに溶かした砂糖を取り出すくらい、不可能な事でしょう。
それだったら、チーズを使おう。妾はそう思って、今切っている玉ねぎとジャガイモと相性が良い、ホワイトサモーンチーズを入れた。これはとある養殖人が作ったという、魚から作ったという世にも珍しいチーズである。珍しさだけではなく、玉ねぎやジャガイモなど根菜と相性が非常に良い。
妾は、オムレツの中にホワイトサモーンチーズを入れる事を提案した。
案を1つ考えた後、妾は他の案も考える。
その後にチキンライスの改良案を少し考える。トマトジュースを加えて、濃厚にするという案を採用する。
オムレツをふんわりとした食感にするために、溶く前の卵に膨らし粉を入れるという案も採用する。
「(チーズを入れる事、チキンライスを改良する事、ふんわりとした食感にするために膨らし粉を入れる。この3つはとりあえず採用したから、メモでササっと伝えつつ、妾も作業に戻りましょう)」
妾は今出た3つの案を、玉ねぎとジャガイモを切り終えて、フライパンを温め始めていたワット店長に告げる。ワット店長は納得して、ホワイトサモーンチーズを入れる準備を始めていた。
妾もまた、チキンライスを改良するために、トマトジュースを加えて、味を濃厚にし始めた。
「(今の案3つだけでも、普通ならずいぶん良い料理として、妾は納得できる)」
なんなら、お客様にお出ししても良い代物だと、自信を持って言える。
しかしながら、相手がジュールとアオギという強敵が作るオムライスとの対決となると、話は別だ。
今の妾の評価としては、このオムレツの出来は100点。しかしながら、相手に勝つための努力をして、これを120点――そう、今よりももっと良いモノにしなければ、妾は審査員様にお出しできない。
「(考えろ、考えろっ!)」
このトルティージャは、ブリーフィングから聞く限り、かなりシンプルなモノ。
チーズやチキンライスの改良をした事で、味に深みは出たけれども、逆に言えばこれ以上味を追加すると全体のバランスが崩れてしまう。せっかくの、シンプルながら美味しいトルティージャオムライスの売りを台無しにしてしまう。
「(だとしたら、出来る事は――)」
洋食店を担当する、この肉料理大会のエキシビションマッチでレガリスと共に戦う事となった、洋食店経営型ゴーレム。
彼女の売りは、分裂。
ゲンエインジウムを使う事によって、身体をいくつもに分裂する事によって、1人で多くの作業を行う事が出来る。1人で10人分以上、いやススリアによる【スピリッツ】の追加調整によって100人分以上の作業を1人で出来るようになった。
そんな彼女が、レガリスというサポート役が居るとは言え、たった2人で料理を作ろうとしたらどうなるか? その答えは――――
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
~~ワット店 レガリス~~
はっ、速い! 速すぎます!
試合開始の直後、ワット店長は即座に調理を開始し始めた。
ジャガイモを切り始めたワット店長が、あまりにも速すぎる。
食べやすい大きさに切っているだけのはずなのに、その速度がまるで千切りかと思うくらい、とにかく素早いのだ。
「(それに、炒めるためのフライパンの準備も、ケチャップライスも、色々と準備を始めている!)」
玉ねぎを切りながら、妾は必死にアレンジレシピを考えるが、作業について行くことに精一杯である。妾は無心で考えながら、玉ねぎを手ごろな大きさに切り揃えるという領域に達していないのだから。
イルカの魚人族のように、2つの脳を持つならともかく、ユウレイツノテッポウエビの魚人族である妾は他者を率いる事に関しては突出した能力を持っているけれども、そのような曲芸が出来る段階にはなっていないのだから。
「――っ! 仕方ないわ! ワット店長! 玉ねぎの刻みもお願いします! そして、炒める前で待機! その間にプランを練ります!」
料理スキルに関して"信頼している"といってもらったワット店長を、早速使うような形になったのは心苦しい。しかしながら、このままではアレンジ以前の問題であるため、ワット店長に玉ねぎを刻むのをお願いする。
ワット店長は早速頷いたと思うと、妾が切っていた玉ねぎをサッと取って、ジャガイモと一緒に食べやすい大きさに切り始めた。
「(ワット店長の調理スピードからして、考えられる時間は10秒もないわ。その間に、アレンジを考えないと!)」
まず最初に頭の中に浮かんだのは、玉ねぎとジャガイモの食感を幾つか不揃いにすることで、食感にアクセントを加える事。火の通りやすさから考えたら不揃いにすることはあまり良くないんだけれども、食べるお客様の事を考えたら最後まで美味しく食べて貰うために、敢えてそういう遊び心を入れるのはアリかも知れない。
しかしながら、既に玉ねぎとジャガイモはワット店長の手によって食べやすい大きさに切り揃えられている。いまさら、大きさを不揃いにするのは、コーヒーに溶かした砂糖を取り出すくらい、不可能な事でしょう。
それだったら、チーズを使おう。妾はそう思って、今切っている玉ねぎとジャガイモと相性が良い、ホワイトサモーンチーズを入れた。これはとある養殖人が作ったという、魚から作ったという世にも珍しいチーズである。珍しさだけではなく、玉ねぎやジャガイモなど根菜と相性が非常に良い。
妾は、オムレツの中にホワイトサモーンチーズを入れる事を提案した。
案を1つ考えた後、妾は他の案も考える。
その後にチキンライスの改良案を少し考える。トマトジュースを加えて、濃厚にするという案を採用する。
オムレツをふんわりとした食感にするために、溶く前の卵に膨らし粉を入れるという案も採用する。
「(チーズを入れる事、チキンライスを改良する事、ふんわりとした食感にするために膨らし粉を入れる。この3つはとりあえず採用したから、メモでササっと伝えつつ、妾も作業に戻りましょう)」
妾は今出た3つの案を、玉ねぎとジャガイモを切り終えて、フライパンを温め始めていたワット店長に告げる。ワット店長は納得して、ホワイトサモーンチーズを入れる準備を始めていた。
妾もまた、チキンライスを改良するために、トマトジュースを加えて、味を濃厚にし始めた。
「(今の案3つだけでも、普通ならずいぶん良い料理として、妾は納得できる)」
なんなら、お客様にお出ししても良い代物だと、自信を持って言える。
しかしながら、相手がジュールとアオギという強敵が作るオムライスとの対決となると、話は別だ。
今の妾の評価としては、このオムレツの出来は100点。しかしながら、相手に勝つための努力をして、これを120点――そう、今よりももっと良いモノにしなければ、妾は審査員様にお出しできない。
「(考えろ、考えろっ!)」
このトルティージャは、ブリーフィングから聞く限り、かなりシンプルなモノ。
チーズやチキンライスの改良をした事で、味に深みは出たけれども、逆に言えばこれ以上味を追加すると全体のバランスが崩れてしまう。せっかくの、シンプルながら美味しいトルティージャオムライスの売りを台無しにしてしまう。
「(だとしたら、出来る事は――)」
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