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第4章 抜歯の刑
第27話 口内の浄化
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ブチ……ッ。ガレージの床に、最後に残った歯が歯茎ごと無残に引きちぎられる音が鳴り響く。
結局、全ての歯を抜歯するのに二時間近くかかってしまった。当然、全ての歯をペンチで抜き切る事は出来なかったので、歯茎の一部ごと切り取ったり、砕いたり、削り取ったり……様々な手段を用いて茜の口内から歯の全てを排除し、茜から『噛む』という機能の全てを僕の手で奪ったのだ。
「ふう、大方は片付いたか……」
額の汗を拭いながら、僕は床に赤く染まったペンチを置き一息つく。
とりあえず、大方の作業は片付いた。
茜の口内からは白い歯が一掃され、その狭い空間には腫れ上がった歯茎の朱肉と、出血による紅色が一色のみ広がっていた。
「っひ……い……はっ……」
全ての作業が終わったとき、茜の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
途中から喉も枯れ、悲鳴すら殆ど上げる事ができなかった茜だが、失神することも無く最後まで自身の歯が徐々に排除されていく様を目にしていたのだから、無理もない。
感じたことのない激痛の連続に、茜は自身の過ちを改めて悔いた事だろう。
「お疲れ様、茜。よく頑張ったね。おかげで口の中は随分と綺麗になったよ、良かったね」
僕は血と涎に塗れた開口器を引き抜き、二時間ぶりに茜の口に自由が取り戻される。
そして、僕は優しく茜の髪を撫でてやった。
「っが……はァ……ッ!」
開口器を引き抜かれたと同時に、茜は激しく咳き込む。
口元から深紅の血と涎が零れ、流れ出てそれは床を汚す。
「ゲホッ……っは……あ……あ」
「しばらくは舌の事もあって喋り辛いだろうけど……徐々に慣れるだろう。それに、これで僕もようやく安心できる。これで……もうあんな馬鹿な真似は出来ないのだからね」
床に無残に転がっている歯の残骸。朱色の歯茎の一部も生々しく散乱している。
そう、もう茜の下を噛み切るような悪い歯は、一本も残っていないのだ。茜の口内には、ただ歯茎を構成する肉の空間が広がるのみ。
「……う、う……あ……」
床に転がるそれらを目にした茜は、言葉すらまともに発することはできなかった。
ただ、言葉も知らぬ獣のように小さく呻くだけだ。
「これでまた、一歩だが僕の理想の美に近付けたね。確かに少しずつだが、着実に……ゆっくりでいい、僕と一緒に頑張ろう。今は辛いだろうが、やがては君も理解するはずだ。僕の言葉、行動の真理を」
少しずつ、僕の思い描く形に茜を作り替えていく。今回はそれが抜歯による僅かな変化、進化であった。
ただ、僕はどれだけの時間と手間をかけても……茜と添い遂げる。それが、僕にだけ与えられた使命であり、運命なのだから。
「まだ……続く……? え……? エ……」
茜は気が触れたように何度も何度も同じ言葉を繰り返す。
明日、明後日、明々後日……そのずっと先まで、続く。そんな現実を受け入れられず、茜は何度も口走る。
十年後、二十年後……茜がここから出られる保証は無い。それを、茜は理解することができなかった。
「ああ、続く。この先もずっとね。だが、心配しないでいい。僕は決して途中で投げ出したり、逃げ出すような事はしない。茜が、茜でいるうちは永遠に……君と共に生きよう」
僕は茜の唇に触れ、そしてそのまま唇同士を重ねる。
血の味が、とても濃厚だった。
「……あ、ァ……いや……い……」
だが、茜はそれを否定も肯定もせず、ただ気が触れた狂人の如く呻くのみだ。
流石に短期間で色々、やりすぎてしまったのか茜の脆弱な心は既に崩壊しかけていたのだ。
だが、まだ足りない。壊すだけでなく、新たに生み出さなければならない。
僕に服従し、支配された心を……茜に埋め込むのだ。
「身も心も……全て、造り替えるんだ。僕が、この手で」
そして、僕はやがて出逢うことだろう。
全く新しい、一点の穢れもない茜と。
結局、全ての歯を抜歯するのに二時間近くかかってしまった。当然、全ての歯をペンチで抜き切る事は出来なかったので、歯茎の一部ごと切り取ったり、砕いたり、削り取ったり……様々な手段を用いて茜の口内から歯の全てを排除し、茜から『噛む』という機能の全てを僕の手で奪ったのだ。
「ふう、大方は片付いたか……」
額の汗を拭いながら、僕は床に赤く染まったペンチを置き一息つく。
とりあえず、大方の作業は片付いた。
茜の口内からは白い歯が一掃され、その狭い空間には腫れ上がった歯茎の朱肉と、出血による紅色が一色のみ広がっていた。
「っひ……い……はっ……」
全ての作業が終わったとき、茜の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。
途中から喉も枯れ、悲鳴すら殆ど上げる事ができなかった茜だが、失神することも無く最後まで自身の歯が徐々に排除されていく様を目にしていたのだから、無理もない。
感じたことのない激痛の連続に、茜は自身の過ちを改めて悔いた事だろう。
「お疲れ様、茜。よく頑張ったね。おかげで口の中は随分と綺麗になったよ、良かったね」
僕は血と涎に塗れた開口器を引き抜き、二時間ぶりに茜の口に自由が取り戻される。
そして、僕は優しく茜の髪を撫でてやった。
「っが……はァ……ッ!」
開口器を引き抜かれたと同時に、茜は激しく咳き込む。
口元から深紅の血と涎が零れ、流れ出てそれは床を汚す。
「ゲホッ……っは……あ……あ」
「しばらくは舌の事もあって喋り辛いだろうけど……徐々に慣れるだろう。それに、これで僕もようやく安心できる。これで……もうあんな馬鹿な真似は出来ないのだからね」
床に無残に転がっている歯の残骸。朱色の歯茎の一部も生々しく散乱している。
そう、もう茜の下を噛み切るような悪い歯は、一本も残っていないのだ。茜の口内には、ただ歯茎を構成する肉の空間が広がるのみ。
「……う、う……あ……」
床に転がるそれらを目にした茜は、言葉すらまともに発することはできなかった。
ただ、言葉も知らぬ獣のように小さく呻くだけだ。
「これでまた、一歩だが僕の理想の美に近付けたね。確かに少しずつだが、着実に……ゆっくりでいい、僕と一緒に頑張ろう。今は辛いだろうが、やがては君も理解するはずだ。僕の言葉、行動の真理を」
少しずつ、僕の思い描く形に茜を作り替えていく。今回はそれが抜歯による僅かな変化、進化であった。
ただ、僕はどれだけの時間と手間をかけても……茜と添い遂げる。それが、僕にだけ与えられた使命であり、運命なのだから。
「まだ……続く……? え……? エ……」
茜は気が触れたように何度も何度も同じ言葉を繰り返す。
明日、明後日、明々後日……そのずっと先まで、続く。そんな現実を受け入れられず、茜は何度も口走る。
十年後、二十年後……茜がここから出られる保証は無い。それを、茜は理解することができなかった。
「ああ、続く。この先もずっとね。だが、心配しないでいい。僕は決して途中で投げ出したり、逃げ出すような事はしない。茜が、茜でいるうちは永遠に……君と共に生きよう」
僕は茜の唇に触れ、そしてそのまま唇同士を重ねる。
血の味が、とても濃厚だった。
「……あ、ァ……いや……い……」
だが、茜はそれを否定も肯定もせず、ただ気が触れた狂人の如く呻くのみだ。
流石に短期間で色々、やりすぎてしまったのか茜の脆弱な心は既に崩壊しかけていたのだ。
だが、まだ足りない。壊すだけでなく、新たに生み出さなければならない。
僕に服従し、支配された心を……茜に埋め込むのだ。
「身も心も……全て、造り替えるんだ。僕が、この手で」
そして、僕はやがて出逢うことだろう。
全く新しい、一点の穢れもない茜と。
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