処女壊体-the making of a saint-

柘榴

文字の大きさ
34 / 125
第5章 瀉血の刑

第34話 地獄での再会

しおりを挟む
 ガレージに向かうと、手術台の上には変わらず放心状態の茜が縛り付けられたまま虚空を見つめていた。

 僕に首輪を巻き付けられ屍の様にここまで引きずられてきた葵……今は頭から頭巾を被せているので葵とは認識できていないだろうが、他人の気配に対しても眼球が少しこちらに向いた程度で、それ以上の反応は示さなかった。

「やぁ、茜。少しは気分が良くなったかな?」
 抜歯後から考えれば、少しは精神的に落ち着きを取り戻したようだった。しかし、僕の言葉にも目線をこちらに向けるだけで、それ以上の反応は無い。
「まぁ……良い。これを注ぎ込めば更に君は美しく、純潔になれる」
 そして、僕は注射器の中身を満たす茜の実妹……葵の血を茜に輸血する為、首元の辺りに注射針を刺し込む。本来なら正規の交換輸血と呼ばれる手法で茜の血と葵の血を入れ替えるのだが、それを安全に行うための設備はここには存在しない。
 今回はその代案として、茜自身の身体を傷付け、その傷口から茜の血を抜くと同時に葵の血を交換輸血する。手荒な手法だが、茜の肉体を内側から浄化するためには止むを得ない。
 僕は手に持ったメスを茜の首元の辺りに宛て、皮膚と肉を切り裂き……汚れた血を排する。
 白い肌からは絶え間なく赤黒い血が溢れ出て、茜の身体から穢れが排されていくようだ。

「茜、待たせたね。ようやく綺麗な血が手に入ったんだ、すぐに飲ませてあげるからね」
 それと同時に、注射器の中の葵の清潔な血を注ぎ込む。汚濁の血を抜き、清潔な血を注ぐ。そんな高貴な瞬間に立ち会い、僕がそれを実行していると考えると……自分自身を誇りに思う。

「……ァ」
 清潔な血が身体に注がれ、その血が身体を循環し始めると茜は小さく喘いだ。
 それと同時に、首元の傷口から更に赤黒い血が溢れ出る。
「ほら、濁った血がどんどん溢れてくる。そして、それと同時に綺麗な血が君の中を満たしていく……気持ちが良いだろう」
「……ぅ」
 茜はまるで痴呆、気が触れてしまった廃人のような反応で自身の血液の浄化を実感していた。
「……ふん、本当に気が触れてしまったのか。それとも、無反応を貫く事によってせめて僕を喜ばせないように意地を張っているのか……まぁ、どちらでも良い」
 その反応は真実なのか、演技なのか……正直、どちらでも良い。本当に茜の心を破壊し尽くしたのなら、また新たな心を植え付けていけば良い。
 仮に演技なのだとしたら……その演技をどこまで保てるのか、それもまた見物でもある。

「だが……この血の持ち主を見ても……そのままでいられるかい、茜?」
 そのどちらが真相なのかを確かめるのは容易い。茜が予想もしない様な変則的な衝撃を与えれば……本性を露にするだろう。
 僕は首輪に繋がれ、屍の様に床に伏していた葵の頭巾を剥がし、その顔を茜に見せつける。
 首輪を強く引っ張り、茜にもよく見るように顔を近づけてやる。

「……お、ね……ぇ……ちゃ……?」
 憔悴しきった顔で、葵が茜に声を掛ける。それは助けを求めるようにも、再会を喜ぶようにも聞こえた。
「……あ、ァ……お」
 それに対し、茜の表情は驚嘆に染まった。
 そして、痛々しく裂けた赤黒い唇を小さく蠢かせ、葵の名を口にした。

 目の前で、多量の血を抜かれ憔悴しきった実妹の姿を目にした瞬間、茜の表情に感情が蘇ったのを僕はこの目で確かめた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...