処女壊体-the making of a saint-

柘榴

文字の大きさ
45 / 125
第7章 耽溺の刑

第45話 覆らない運命

しおりを挟む
「なんで……なんで……こんな……」

 全身を巡る痛覚と不快感に喘ぎ、床を這いながら葵は僕を睨み付ける。
 何故、平凡な女学生だったはずの自分が監禁され、身体中を穴だらけにされ血を抜かれ、挙げ句の果てには覚醒剤に侵され、薬物中毒に陥っているのか。   
  平凡に生活していた筈なのに、どこから歯車が狂ったのか。それを僕に目で訴えかける。

「君が茜の実妹だからさ。茜に近い皮膚、血、骨格、脳を持つ君の身体であらゆる実験をする事に意味がある、それだけの事さ」
 それに対し、僕は冷酷に答える。それが、それだけが葵の存在理由なのだから。
 葵を茜に見立て、その肉体を用いてあらゆる可能性を模索する。その肉体が塵になるまで模索し、研究をする。そして、それらを茜の進化へと還元する……進化に犠牲は必要なのだ。
 それは葵の運命であり、葵の義務でもある。
「君が覚醒剤の禁断症状に悩まされ、悍ましい幻覚と幻聴に苛まれ、肉体的・精神的の両面で疲弊し、死を望んだとしても……君の身体と生命を身勝手に破棄する事は僕が許さない。絶対に」
 茜と同じ様に、葵が勝手に死ぬ事は僕が許さない。僕の宿願が成就するその日まで……それが十年後、二十年後になろうとしてもその日まで付き合ってもらう。
 
 茜の妹として、実験動物として。

「でも、高城さん……お姉ちゃんと約束してた……もう、私には手を出さないって……っ」
 葵は泣き叫ぶ子供の様に僕に抗議する。約束を破った僕が悪いと言わんばかりに。
 だが、それは間違いだ。そもそも僕は約束を破ってなどいないのだから。
「ああ、確かに茜と約束した。だから、僕からは何もしていない。君を無理矢理に拘束したり、理不尽に暴行した訳でも無い。そうだろう?」
 僕の反論に、葵は言葉に詰まる。僕の言葉に、偽りは確かに無かったからだ。僕が葵を言葉で脅した訳でも、暴力で支配した訳でも無いという事は事実であり、真実である。
「でも……変な薬を、打って……私を、こんな……身体に、した……おかしく、した……ぁ……っ」
「それは元を辿れば君と君のお姉さんが望んだ事だろう? 君の血と膿だらけの身体中から苦痛を取り除いてくれ、と。僕はそれに従ったまでさ。僕なりの治療法で……ね。治療法にまで口を挟まれた覚えは無いんだが、それは僕の勘違いだったかな?」
 葵は再び言葉を詰まらせ、代わりに僕を睨み付ける。僕が確かに彼女の苦痛を一瞬だが取り除き、快楽を与えた事も確かな事実であったからだ。

 ただ、その僕なりの治療法というものが……覚醒剤の快楽で苦痛を強引に塗り潰すというものだった、というだけの事だ。
「僕は確かに君に快楽を与え、苦痛を取り除いた。君の要望に従い、僕なりのやり方で実行した。それに何の問題がある?」
「ふ、ざけ……ないで……っ、こんな……こんな身体に、しておいて……ぇ」
 葵は唇を噛み締めながら涙を流す。残酷な現実を思い知ると共に、僕への憎悪を抱きながら。

 僕の言い分は単なる詭弁であり、屁理屈。それに対し、葵が納得などできる筈が無かった。
 ただ、それで構わない。最初から葵の理解や同意を得ようとなど考えていない。相互理解など最初から求めていない。実験動物の同意など最初から必要無い。
 
 茜も葵も、僕の筋書き通り僕との世界の中で生き続ける事しかできない。そして、この運命が覆る事など未来永劫、無い。

「……出て……出てッ、部屋からも……私に、近付かないで……ッ、薬も、いらない……っ」
 半狂乱状態の葵は、僕にそう怒鳴りつけ、注射器と覚醒剤の粉末を床に叩きつける。
 部屋から出て行け、薬も必要無い。葵は僕に対し、泣き叫びながら命じた。
 
 茜との約束が有効である以上、僕は葵の命令に背いてまで何かを強要したり、強引に手出しする事はできない。

 僕は葵の口の中へと布の塊を押し込んで口を塞ぎ、舌を噛み切る事による自殺の防止だけを施すと、部屋を出る。
 茜の様に全ての歯を抜歯してあげれば良いのだが、葵に拒否されればそれも出来ない。

「分かった。少し経ったらまた様子を見に来るから、何かあればその時にでも遠慮無く言ってくれ。君の命令なら、僕は従うしか無いからね」
 
 返答は無かった。僕はそれだけを言い残し、監禁部屋を去った。
 
 だが、既に分かっていた。すぐに葵は僕に助けを求める。それを知っていたから、僕は素直に葵の命令に従った。従う振りをしていた。

 何故なら、強要では無く、葵の本心からの本物の言葉を聞きたかったのだ。憎き僕に対して必死に、無様に助けを求め、醜く媚びながらも縋ろうとするその言葉を……。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...