処女壊体-the making of a saint-

柘榴

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第11章 逃避の刑

第94話 歪んだ日常

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 自宅へ戻る頃には既に日は高く昇っていた。夜通し運転をしていたものだから、太陽の光を受けて少し足元がフラつく。

「流石に……夜通しの運転は厳しいか」
 僅かに目眩や吐き気等の体調不良はあったが、そんな事はどうでも良い。
 葵と茜、二人にとって新たな絶望を与える事が出来たという喜びの方が遥かに大きい。
 単なる肉体の痛み、苦しみでは無い……この世界から否定され、足蹴にされる恐怖と絶望を……姉妹はこれから体感する事となる。

 そして、後悔する事だろう。
 あの時……死を選ぶべきであったと。

「やるべき事は終わった。茜、寂しい思いをさせて済まなかった……今、戻るからね」
 僕は車内のディスプレイに表示されている茜の姿を目視し、画面に優しく触れる。
 ガレージ内にある複数のカメラが、茜の姿を寸分の狂いも無く表示してくれているのだ。
 殆ど動きも無く、椅子に座しているだけではあるが、僅かな指の動き、瞼の動きであっても僕は茜の愛しい姿を見逃さない。

「ティエラも最低限の言いつけは守っているようだし、一先ずは安心だ」
 留守中、茜の身の回りの世話をこなすティエラの姿も僕は確認していた。
 衛生面の管理……入浴、排泄等の身の回りの世話を、ティエラは文句を垂れながらも手際良く行っていた。
 こういった部分を見ると、ティエラにも僅かながら人の心があり、年相応の少女であるという事を思い知らされる。

「彼女にも、戻ったら礼を言わないとね……」
 ディスプレイに映る二人の少女を見つめ、僕は呟く。
 留守を頼んでおきながらティエラを疑っていた訳では無いが、やはり自身と茜が一時であっても同じ空間に存在出来ないというのはこれ以上に無い位に居心地が悪く、耐え難かった。
 だから、せめて茜の姿をいつでも目視出来る仕組みが必要だったというだけの事だ。

 だが、所詮は映像越しだ。この数時間……茜とは分離された空間、世界に切り離されていた事により……僕の心はやはり枯れ果て、飢えていた。

 茜と同じ空気を吸い、同じモノを見て、同じ匂いを感じ、同じ空間に存在する……僕にとっての必然であり、日常であった。それが一時であっても失われてしまうのは……僕にとっては耐え難い苦痛だ。

 駐車を終え、僕はようやく玄関の前にまで辿り着く。
 今はただ、眠りたい。
 茜の無機質な人形の膝上で……冷たく眠りたい。それか僕の最も優先すべき欲求であった。
 
 そして、僕は感触を確かめる様に自宅の玄関へと足を踏み入れた。
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