14 / 60
1.ギルド編
第13話 鍛錬II
しおりを挟む
地獄の二週間、それを超えた後僕に待っていたのは魔獣を相手に生きて行く為の勉強だった。
「ようやく、休める……」
そしてその時僕は心のそこから安堵していた。
決して勉強が入ったからといっても全ての鍛錬が無くなるわけではない。
けれどもある程度鍛錬が少なくなるのは確実で、さらに勉強をしている間は身体を休めることもできるのだ。
しかも僕は日本でもそこまで勉強が苦手ではなく、正直異世界の勉強など何も気に病むことはない……
「さぁ、まずはこれを三日で覚えよう。もちろん丸暗記じゃなく、ちゃんと理解できる状態で!」
「えっ?」
……という僕の甘い見通しはシュライトさんに差し出された国語辞典並みに厚い魔獣の図鑑を差し出された時、砕けることになった。
一瞬僕は、何が起きたのか分からず言葉を失う。
「出来なかったら湿地からやり直すか!」
「くそったれぇ!」
……けれども次のシュライトさんの言葉に何処かの戦闘民族の王子のように叫んで死ぬ気で勉強に取り組むことになった。
そしてその日から僕とシュライトさんの勉強時間だけで僕が死にかけるという、明らかに異常な授業が始まった……
◇◆◇
そしてそんな地獄のような勉強時間があっても鍛錬が無くなることはなかった。
何故かやたら可愛らしいシュライトさんの丸文字に授業でトラウマを持ちかけた僕の今の鍛錬は技を覚えることだった。
今までは身体を鍛える修行だったらしく、土台を作るために僕はあれだけの地獄を過ごしてきたらしい。
……シュライトさん曰く、あれで本来なら10年かかるはずの一流の戦士の身体が作れたと笑っていた。
せめて短縮しても一年程度にして欲しかったとどれだけ僕が思ったことか……
とにかくそんなこんなで土台ではシュライトさんのお墨付きをもらった僕の身体能力は驚異的に飛躍していた。
それも最早能力を使わない状態での。
「出来た?」
そしてそこまで成長していた僕はあっさりとシュライトさんに教えてもらった技を習得することに成功した。
それは魔力と呼ばれる、所謂魔法の素を使い攻撃を強化する技。
難易度が高く、それが使えるかどうかが一流とそれ以外の人間を阻む壁となると言われる技。
そしてそれを僕はあっさりと成功させて目の前の岩に深々と傷をつけていた。
「えっ……よしっ!」
一瞬あまりにもあっさりと成功したその技に僕は戸惑い、そしてようやく自分が成功したことを悟って飛び跳ねる。
よく考えてみれば、湿地で逃げ回るうちになんか似たようなものを使っていた気がするが、今いきなり使えるようになった方がかっこいいのでそのことは忘れよう。
「ほぅ。流石だな翔。これでお前は一流の実力を持った」
そしてその僕を見た、シュライトさんはそう笑いながら告げる。
シュライトさんに褒められる、そんなことは滅多になくて僕の頬が思わず緩む。
「ありがとうございます!」
そして技を使えるようになったということは、この時間は休憩時間になるのかとそう想像しながら頭を下げた僕にシュライトさんは満足そうに頷いた。
「まぁ、まだ使えるだけで極められていないから全然駄目だがな」
「えっ?」
しかし、その僕の喜びは長く続くことはなかった。
突然重り、そう懐かしの湿地でつけていた相棒を腕につけられ僕の頭は真っ白になる。
「今度はこれで頑張れ」
「えっ?」
しかし、その僕に対するシュライトさんの返答は輝かんばかりの笑みだった。
僕は流石に我慢ができなくなって口を開く。
そして一流の実力、それを持っているならば僕はもう何も望むことはないと、そうシュライトさんに言おうとして……
「でも、使えているなら……」
……最後まで言い切ることはできなかった。
「まぁ、嫌というならまたし……」
「うぉぉおお!やる気が湧いてきた!」
必死に技を重りをつけた状態で岩に放つ僕、その目と鼻からは大粒の汗が溢れていた……
僕の地獄は未だ終わらない……
「ようやく、休める……」
そしてその時僕は心のそこから安堵していた。
決して勉強が入ったからといっても全ての鍛錬が無くなるわけではない。
けれどもある程度鍛錬が少なくなるのは確実で、さらに勉強をしている間は身体を休めることもできるのだ。
しかも僕は日本でもそこまで勉強が苦手ではなく、正直異世界の勉強など何も気に病むことはない……
「さぁ、まずはこれを三日で覚えよう。もちろん丸暗記じゃなく、ちゃんと理解できる状態で!」
「えっ?」
……という僕の甘い見通しはシュライトさんに差し出された国語辞典並みに厚い魔獣の図鑑を差し出された時、砕けることになった。
一瞬僕は、何が起きたのか分からず言葉を失う。
「出来なかったら湿地からやり直すか!」
「くそったれぇ!」
……けれども次のシュライトさんの言葉に何処かの戦闘民族の王子のように叫んで死ぬ気で勉強に取り組むことになった。
そしてその日から僕とシュライトさんの勉強時間だけで僕が死にかけるという、明らかに異常な授業が始まった……
◇◆◇
そしてそんな地獄のような勉強時間があっても鍛錬が無くなることはなかった。
何故かやたら可愛らしいシュライトさんの丸文字に授業でトラウマを持ちかけた僕の今の鍛錬は技を覚えることだった。
今までは身体を鍛える修行だったらしく、土台を作るために僕はあれだけの地獄を過ごしてきたらしい。
……シュライトさん曰く、あれで本来なら10年かかるはずの一流の戦士の身体が作れたと笑っていた。
せめて短縮しても一年程度にして欲しかったとどれだけ僕が思ったことか……
とにかくそんなこんなで土台ではシュライトさんのお墨付きをもらった僕の身体能力は驚異的に飛躍していた。
それも最早能力を使わない状態での。
「出来た?」
そしてそこまで成長していた僕はあっさりとシュライトさんに教えてもらった技を習得することに成功した。
それは魔力と呼ばれる、所謂魔法の素を使い攻撃を強化する技。
難易度が高く、それが使えるかどうかが一流とそれ以外の人間を阻む壁となると言われる技。
そしてそれを僕はあっさりと成功させて目の前の岩に深々と傷をつけていた。
「えっ……よしっ!」
一瞬あまりにもあっさりと成功したその技に僕は戸惑い、そしてようやく自分が成功したことを悟って飛び跳ねる。
よく考えてみれば、湿地で逃げ回るうちになんか似たようなものを使っていた気がするが、今いきなり使えるようになった方がかっこいいのでそのことは忘れよう。
「ほぅ。流石だな翔。これでお前は一流の実力を持った」
そしてその僕を見た、シュライトさんはそう笑いながら告げる。
シュライトさんに褒められる、そんなことは滅多になくて僕の頬が思わず緩む。
「ありがとうございます!」
そして技を使えるようになったということは、この時間は休憩時間になるのかとそう想像しながら頭を下げた僕にシュライトさんは満足そうに頷いた。
「まぁ、まだ使えるだけで極められていないから全然駄目だがな」
「えっ?」
しかし、その僕の喜びは長く続くことはなかった。
突然重り、そう懐かしの湿地でつけていた相棒を腕につけられ僕の頭は真っ白になる。
「今度はこれで頑張れ」
「えっ?」
しかし、その僕に対するシュライトさんの返答は輝かんばかりの笑みだった。
僕は流石に我慢ができなくなって口を開く。
そして一流の実力、それを持っているならば僕はもう何も望むことはないと、そうシュライトさんに言おうとして……
「でも、使えているなら……」
……最後まで言い切ることはできなかった。
「まぁ、嫌というならまたし……」
「うぉぉおお!やる気が湧いてきた!」
必死に技を重りをつけた状態で岩に放つ僕、その目と鼻からは大粒の汗が溢れていた……
僕の地獄は未だ終わらない……
12
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる