異世界巻き込まれ転移譚~無能の烙印押されましたが、勇者の力持ってます~

影茸

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1.ギルド編

第14話 最終試練

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 二週間の湿地での身体作り。
 そしてその後の座学と技の練習。
 その合計一ヶ月の鍛錬。

 その結果今の僕はこの世界でものトップレベルの能力を身につけるに至っていた。

 「じゃあ始めますか?」

 「何処から攻撃してきてもいいぞ」

 そして今、僕は一つの節目を迎えようとしていた。
 それは僕が必死に鍛えてきた成果の集大成をシュライトさんに示す模擬戦。
 条件は剣は木剣を使い、相手は殺さないこととそして僕は能力を使わないこと。

 「では、僕の攻撃から始めさせて頂きますね」

 そしてその条件元では、前々での僕なら逆立ちしたってシュライトさんに勝てないはずだった。 
 何せ僕は能力を使った状態で一度シュライトさんに圧倒されているのだ。
 その相手に対して能力なしなど普通に考えれば無謀以外の何者でもない。

 だけど今の僕の心にあったのはシュライトさんへの恐怖ではなかった。
 もちろん緊張はしている。
 今から戦うのはあのシュライトさんなのだ。
 その化け物といってもおかしくない相手と戦わなければならないこの状況をなんとも思わないわけがない。

 ーーー だけどその感情よりも、それ以上に今の僕がシュライトさんに何処まで通用するか、その方が遥かに僕の心を動かす。

 そしてその昂りをぶつけるかのように僕は力強く剣を握りしめ……

 「うぉぉおお!」

 「はぁぁぁあ!」

 模擬戦が始まった。







 ◇◆◇






 試合は僕が攻撃をシュライトさんに仕掛けてから始まった。
 それはつまり僕の方が少しシュライトさんよりも先手を取ったということに他ならず……

 「っ!」

 ……だが、シュライトさんの動きの速さ、それはそのハンデをあっさりと打ち消してしまう。
 そして同じ場所、即ち相手の状態へと振り下ろされたその剣は丁度僕とシュライトさんの間でぶつかった。
 身体に魔力を通したことによって、僕の能力には敵わないものの、身体能力を今までの比にならない程引き上げる魔力強化と呼ばれる技術。
 それによって岩をも砕く威力を有した木剣のぶつかり合いは周囲の空気を震わせる。
 その結果木剣には、普通ならいくら丈夫であれ折れてしまうの負荷が掛かる。
 しかし、魔力を武器に通す魔力付与の技術が木剣にその衝撃に耐えうるほどの強度を与える。
 そしてその結果、僕とシュライトさんの木剣は一瞬膠着状態になって……

 「たぁ!」

 「くっ!」

 そして次の瞬間僕の木剣はシュライトさんの剣に押し負けた。
 押し負けた流れに逆らうことはなく後ろへと転がりシュライトさんから距離を取りながら僕は唇を噛み締めていた。
 たしかにあの巨体を持つシュライトさんに力で勝つのは難しいことのように見えるかもしれない。
 だがな実は素のシュライトさんの筋力はあまり高くはない。
 魔力強化の技術が高いシュライトさんは確かに戦闘時には超人的な筋力を有す。
 けれどもそれは同じ程度の魔力強化を使える僕なら対抗できることを示しているはずだった。
 実際一週間前ならば僕はこんな風にシュライトさんに力負けすることはなかった。

 「身体が重い……」

 なのに今回、こんなにも僕が惨めに力負けした理由。
 それは一週間前から身体を襲っている原因不明の調子の悪さだった。
 突然朝身体の体重が倍にでもなったかのような錯覚に陥ってしまった程の不調子。
 その体調の悪さは最高級のポーションやマナポーションを飲んでも治ることはなかった。
 そこから必死に頑張ることである程度動けるようにはなったものの、だがそれでも一週間前に比べるとあまりにも動きが悪い。
 それはこの模擬戦を何よりも楽しみにしてきた僕にとって、耐え難い不幸で……

 「まだまだ!」

 「っ!」

 ーーー だけど僕はその程度でシュライトさんに負ける気など無かった。

 後ろに距離を取られた、そう思った瞬間に突っ込んできた僕に流石のシュライトさんも目を見開く。
 その反応に僕は満足感を覚え、口に獰猛な笑みを浮かべる。
 一週間、こんなに期間があれば誰だっていくら調子が悪かろうが対策は立てられる。
 卑怯と言われようが、なんとしてもシュライトに今日勝ってやる。

 そしてさらに勝負は熱を帯びて行く……
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